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島崎藤村「破戒」

 島崎藤村の代表作「破戒」を鑑賞する機会があった。藤村の生誕150年に当たる昨年、60年ぶりに新たに映画化されたものである。破戒は近代文学の黎明期の作品だと、学生の頃に教わった気がする。
 明治維新が起きると、人々は職業選択の自由を得た。身分を超えた恋愛も可能となった。しかし実社会において、差別や偏見はどうだったのか。藤村は文学の手法を用い、青年教師の生きる苦悩を余すところなく描いている。
 心に残った映画のシーンは、青年が恋人のお志保と出会う場面。部屋に置き忘れた「みだれ髪」を青年が見つけ、彼女に手渡すところにグッときた。明治三十四年に出版された「みだれ髪」は、与謝野晶子が心の機微を短歌で表現したもの。お志保にとって、憧れを抱いていたに違いない。
 20世紀の幕開けに産声を上げた、この二つの文学作品。映画を通じ、明治を生きる若者の微妙な心の動きを感じることができた。もう一度、小説「破戒」を読み返してみよう。


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