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わかおの日記72

整骨院に行った。もう肩の痛みもなく、投球フォームもだいぶよくなったので、ついに投球許可がでた。先生には最初から最後まで褒め殺しされたので、ぼくも調子に乗って「140キロめざして頑張ろうと思います」と言ったら、「50メートル走何秒?」と訊かれた。正直に「めちゃくちゃ遅いです」と答えたら、「じゃあ難しいかもね」と言われた。今までの褒め殺しはなんだったのか。球速と短距離走のタイムには正の相関があるらしいが、ぼくは断じてそんな近似曲線に収まるような男ではない。やってやろうじゃないの、吠え面かかせてやるわよと思った。

そういえば行きのバスで、おばあさんに席を譲ったことを思い出した。ぼくは他人に席を譲るのが嫌いである。これは決してぼくが、老人なんだから乗り物の中ぐらい立って足腰を鍛えろよというような思想の持ち主だからではない。たんに知らない人と話すのが嫌いだからである。たとえ良いことをするとしても、知らない人に話しかけるということには、常に拒否される恐怖がつきまとう。

そのような理由から、今日もぼくは昼前のバスの座席に座りながら目の前に老人や子供連れ、妊婦などが来ないように祈っていたのだが、そううまくはいかないものである。途中でぼくの前に、元気だったころの祖母に似た、ぽってりと太ったおばあさんが現れた。やれやれ。いつものぼくならば、寝たふりをしてやりすごすところだが、寝たふりをするタイミングを逃してしまったので、絶体絶命である。前門の虎後門の狼とはこのこと。ぼくはしかたなく「あっ、あのー、どうぞ」と言って、彼女に席を譲った。譲ったあとも、なんだか見られているような気がして挙動不審になってしまった。ああなんと生きづらい人生だろう。

ネットフリックスで断続的にだが、「大豆田とわ子と三人の元夫」を全部見た。放送されていたときは、エンディングテーマが週替わりでしかも毎週豪華なラッパーが担当するというので、エンディングだけみていたが、全編見るとまた違った味わいがあった。エンディングテーマの歌詞のこの部分がドラマと連動しているんだなあというようなことがわかってとても面白かった。

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