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物語

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#掌編小説

【ショートショート】ポーズ指定される会議

【ショートショート】ポーズ指定される会議

 私の会社で行われる会議には少し変わったルールがある。会議室に入る前にくじを引き、そこで指定されたポーズで会議に参加しなければいけないのだ。
 だから例えば先週の会議での部長は両手を胸の前で握ってお祈りのポーズをしていた。「うちの部署は今が正念場だ。気合いをいれて業務をしていこう」と社員に渇を入れようとしたはいいものの、目をつぶってお祈りポーズで言われたものだから説得力ってものが微塵もなかった。

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【掌編小説】嫌なやつ調理法

【掌編小説】嫌なやつ調理法

ストレス発散クッキング

嫌なやつのさっぱりいため

(シェフ)
こんにちは。今日は、日頃わたしたちの周りに存在する嫌なやつと、それによって引き起こされる憂鬱な気分を一緒にさっぱりいためていきます。
蓄積された憎悪と鬱憤を全力投球で食材にぶつけるのがポイントです。

(アシスタント)
よろしくお願いします!

(シェフ)
まず、嫌なやつを一体用意します。嫌なやつの数を絞った方が憎悪をよりに強力にぶ

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【掌編小説】晴れのち島流し

【掌編小説】晴れのち島流し

 青い海、寄せては返す波、南国を感じさせるヤシの緑、カモメの間の抜けた鳴き声、この優雅な絶海の孤島にただひとり、たたずむ青年がいる。
その青年は、さんさんと照りつける日差しの中、水平線を孤独に眺めて何を思っているのだろうか。多分、思ったより紫外線って痛いなとか1円にもならない感想を述べていることであろう。何せその青年は身につけていた全ての衣服を剥がれているのだから。そして何を隠そう、何も隠していな

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【掌編小説】正月のしあわせ

【掌編小説】正月のしあわせ

 いつも通り携帯をみる。時刻は一月一日八時半。みずのとうさぎ年の幕開けだ。布団から体を出さないように部屋のカーテンをあける。窓の奥には冬の透き通った空と輝く朝日が見える。まぶしく光る朝日はボクの横で眠る母さんと姉ちゃんのことも照らしていたが、二人は一向に起きる気配がない。

 ボクは今年の年越しも寝てすごした。たしか、昨日、寅年最後の日に、寝たのは夜の二十一時頃だったきがする。大晦日のテレビを見て

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