若草薫

怠け者な現役大学生/東北大学/エッセイ/掌編小説

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【掌編小説】晴れのち島流し

 青い海、寄せては返す波、南国を感じさせるヤシの緑、カモメの間の抜けた鳴き声、この優雅な絶海の孤島にただひとり、たたずむ青年がいる。 その青年は、さんさんと照りつける日差しの中、水平線を孤独に眺めて何を思っているのだろうか。多分、思ったより紫外線って痛いなとか1円にもならない感想を述べていることであろう。何せその青年は身につけていた全ての衣服を剥がれているのだから。そして何を隠そう、何も隠していないその全裸の男は私である。    いきなり素っ裸の男が現れて、読者の皆さんは戦

    • 【ショートショート】生き写しバトル

      『ゾウ、サイ、キリンのうち血圧が一番高いのはどれ…』 ピンポンッ 軽快な早押しボタンの音が会場内に響き渡る。 ーーやった。押し勝った! 『キリン!』 ピンポンピンポン!正解を告げる効果音がけたたましく鳴り響く。 『最終問題で見事正解し、優勝したのは3141番さんです!おめでとうございます!』 司会者が正解した私を褒め称える。やっと勝てたのだ。1万人は軽く超える参加者のなかから私が、3141番が優勝したのだ。 これでご主人と一日中話せる!家についた私はそのことで頭がいっぱ

      • 【ショートショート】ポーズ指定される会議

         私の会社で行われる会議には少し変わったルールがある。会議室に入る前にくじを引き、そこで指定されたポーズで会議に参加しなければいけないのだ。  だから例えば先週の会議での部長は両手を胸の前で握ってお祈りのポーズをしていた。「うちの部署は今が正念場だ。気合いをいれて業務をしていこう」と社員に渇を入れようとしたはいいものの、目をつぶってお祈りポーズで言われたものだから説得力ってものが微塵もなかった。    このポーズ指定会議が導入された経緯というのは、会議中の緊張感をなくそうと

        • 【掌編小説】嫌なやつ調理法

          ストレス発散クッキング 嫌なやつのさっぱりいため (シェフ) こんにちは。今日は、日頃わたしたちの周りに存在する嫌なやつと、それによって引き起こされる憂鬱な気分を一緒にさっぱりいためていきます。 蓄積された憎悪と鬱憤を全力投球で食材にぶつけるのがポイントです。 (アシスタント) よろしくお願いします! (シェフ) まず、嫌なやつを一体用意します。嫌なやつの数を絞った方が憎悪をよりに強力にぶつけることができるため、ここは復讐心をぐっとこらえ、とびっきりの嫌なやつをひとり

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        【掌編小説】晴れのち島流し

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          【掌編小説】正月のしあわせ

           いつも通り携帯をみる。時刻は一月一日八時半。みずのとうさぎ年の幕開けだ。布団から体を出さないように部屋のカーテンをあける。窓の奥には冬の透き通った空と輝く朝日が見える。まぶしく光る朝日はボクの横で眠る母さんと姉ちゃんのことも照らしていたが、二人は一向に起きる気配がない。  ボクは今年の年越しも寝てすごした。たしか、昨日、寅年最後の日に、寝たのは夜の二十一時頃だったきがする。大晦日のテレビを見ていた母さんと姉ちゃんの「どうして今寝ちゃうの?」「ここからおもしろくなるのに」と

          【掌編小説】正月のしあわせ

          いざ、再試験

          単位を落としました。 文字数で言うと実に10文字にも満たない一文であるが、大学生にとってこれほどまでに絶望する一文は無いであろう。何を隠そう、今の私がとてつもなく絶望しているからだ。 時は初夏、7月の下旬にさかのぼる。心身共に健康な毎日を過ごしていた私は、来る8月上旬に行われる試験に向けて現実逃避を試みていた。試験期間というのは往々にしていろんなことがやりたくなる物である。普段は気にならないジャンルの本を読んでみたり、筋トレに興味がわいてきたり不思議な物である。 現実逃

          いざ、再試験