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日本料理の食卓作法2-B~どんなものが出るのかな?~

2006年7月22日 (土)

5.煮物 別名:煮合せ、焚き合せ、蓋物、などなど…

「石川芋 生蛸煮 茄子」
「菊花豆腐 生湯葉 海老 百合根味噌 春菊」
「かぶ白煮 合鴨ロース おくら 順才」
「たぐり湯葉 鮎女魚 茗荷 おくら 木の芽」
「京芋海老月冠 大徳寺麩 印元 針柚子」
「京芋 鱈子 蕗 木の芽」

ここでご説明する「煮物」とは、関東でいうならば「煮しめ」「旨煮」「艶煮」「照煮」など、関西ならば「焚き合せ」というくくりのものです―。


料理屋の場合は、一般家庭のように一つの鍋で材料を煮合わせていくことはあまり無いので、それぞれの材料をそれぞれに調理して盛り合わせ、煮汁をかけたり、銀あんやべっ甲あん、利久あんをかけたりして供します。

料理屋の煮物はそのままの素材を煮ることもしますが、多くはちょっと手をかけて作るものですから、材料に細工をしたり(かぶに彫りこみをして、菊花かぶにする)、中に詰め物 をしたり(南瓜をくり抜いて、つくね地を射込む)したものを使うことがあります。

また、材料を煮るにしても、一度素揚げしてから煮てみたり、蒸してから煮てみたりと工夫をし、最後にかける煮汁やあんにも、海老のそぼろを入れたり、かぶや大根をすりおろしたみぞれあんにするなど、変化を楽しむことが多いですね。

温かいものは温かいうちに召し上がっていただきたいので、冷めにくいようにふた付きの器を用意し、しかもあらかじめ温めてから盛り付けますし、場合によっては、盛り付けてか らもう一度蒸し器などに入れて温め、それからお出しするというものもあります。

お椀と同じように、振り柚子をしたり、木の芽や針生姜をのせたりすることもありますから、ふたを取った時に立ちのぼる香りもぜひ味わってみてください。

逆に、夏場では冷たい煮物を出すこともあります。

その場合、献立には「冷やし鉢」や「煮物替り」と書かれていることがありますが、涼しげな ガラスの器に、冷たくした「のっぺい」をたっぷり盛り付けてみたり、揚げ茄子と湯葉と冬瓜をそれぞれに煮含めてよく冷やし、海老そぼろ入りの冷たい銀あんをかけたものを盛ってみたり、さっぱりとしていて、それでいて旨みが出ている一品は、お客様にも大変に喜ばれます。

煮物について、お客様からよく聞かれるのは「煮汁は飲んでいいの?」ということですが、もちろん飲んでいただいてOKです。

よほど大きいものでなければ器を持ち、口をつけて飲んでいただいて大丈夫ですよ。

料理人も力を入れて作る一品ですから、煮汁まできれいに飲んでくださると嬉しいものです―。

ちなみに、お茶をなさる方や関西の方は「煮物」というと「煮物椀」や「椀盛り」を連想する方が多いかと思いますが、これは季節の魚介、鴨や鶏、旬の野菜、乾物などをそれぞれに煮含めて椀に盛り、すまし汁をはるもので、ここでいう「煮物」とはまた別のものと考えていただきたいと思います。

また、煮含めるという作業をしないのに、煮物風に仕上げたものを「蓋物(ふたもの)」というくくりにすることがあります。


たとえば、鶏味噌を射込んだ烏賊新丈のまわりに湯葉を細く切って付け、そのまま蒸し上げます。

温めた器にべっ甲あんを敷き、その上に蒸した烏賊新丈を盛って青味を添え、溶き辛子を天にちょん!と乗せたものなどは、煮物ではありませんが煮物風にはなりますから、同じようなふた付きの器を使って「蓋物(ふたもの)」と呼んだりするわけですね。

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