0612会席献立

サービス業/献立と当て字の話

2006年2月19日 (日)

立春ののち、十五日ほどすると、二十四節気のひとつ「雨水」となります。

陽暦でいうと、だいたい今日明日あたりがそれにあたるのかな…。

「雨水」の意は、雪や氷が融けて水になる頃、ということですが、それでもまだまだ寒さは残りますねぇ…。

それにしても今年は寒かった!

在所の北隣と西隣の県には、それぞれ「わかさぎ釣り」で有名な湖があるのですが、釣り好きの後輩がよく出かけます。

今年は例年に無く氷が厚く、長く楽しめると喜んでいました。
「わかさぎ」は「公魚」と書きますが、この時期は「氷下魚」と書くことも…。

日本料理の献立は、いわゆる「当て字」を使うことが多いのですが、これなどは

季節を感じさせる「当て字」の一つだと思います。

よく目にする当て字としては、他にこんなものがあります。
         
「寿司」→「鮨」
「順才」→「蓴菜」
「豆富」→「豆腐」
「福子」→「フッコ」
「天豆」→「そら豆」
「寿留女」→「スルメ」
「柳葉魚」→「ししゃも」
「香魚」→「鮎」などなど…

そういえば私が女将になったばかりの頃、悩んだのがこの「当て字」でした。

会席料理の毎月の献立は、料理長から受け取ったら私が清書し、印刷し、内容をスタッフにわかるよう、解説しなければならなかったからです。

そもそも、料理長が書き下ろしてくれる献立は手書きです。

筆文字を崩して書かれ、あまりにも達筆な献立は、まず文字の判読・解読から始めなければなりませんでした。

ところが、判読した文字がはたして「当て字」なのか、単純に「間違い」なのかがはっきりしません。

さらに献立の中身たるや、私が今まで聞いたことも無かった食材があり、料理法があり、約束事がありで、いったいどう書けば正解なのか、自分ではまったくわかりませんでした。

先代の料理長には昔かたぎの気難しさがあり、
「仕事は聞くな!盗め!」
という方針でしたから、今よりもっとヘタれの当時の私では、とても直接聞くことは出来ませんでした―。

(今なら聞けますよ、ええ♪ しかも堂々と「コレ、何ですかっ?!」って)

仕方なく、料理長が所属している「会」(同じ流派の料理人が集まっている研究会)の会誌を盗み見たり、立板(副料理長)にも聞けずに、脇板(3番手)や盛り方(下から2番目)にこっそり聞いたりして、必死に覚えました。

でも、それで良かったんでしょうねぇ。
だって必死で覚えたことは、不思議と忘れませんもの。

どちらかというと「忘れてたまるかっ!!」ですけれど…。

お陰さまで今では、代替わりした料理長に
「字がおかしかったら、直しといてくださいよ」
と言われるようになりました。

それでも、まだまだ勉強することが一杯です。

結局料理長には、清書する前にもう一度見ていただいているんですよ…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?