【シリーズ3】なぜワーママや主婦は”起業・独立”に憧れるの?キラキラ起業家になったA先輩を覗き見して考えたこと
なぜワーママや専業主婦は起業やフリーランスに憧れるのかを考えるシリーズ③です。前回は、会社を退職したA先輩が起業し、どのようにビジネス形態を変えて成功を収めたのか、その過程をお話ししました。
今回は、A先輩がワーママ・専業主婦をターゲットにしてネットワークビジネスを展開する話です。
ワーママや専業主婦の内に秘めた不満をつつくA先輩
A先輩をウォッチし続けていた私ですが、ライフスタイルがあまりにも異次元すぎたため、徐々に関心を失っていきました。しかし約1年後、再びA先輩を思い出すことに。そのきっかけは、専業主婦としての生活に不満を感じ、再就職もうまくいかずに悩んでいた時期のことでした。
思い返せば、最初にA先輩を思い出したのは入社3年目の頃、会社にモヤモヤしていた時期でした。どうやらA先輩には、キャリアに迷いが生じるたびに脳裏に浮かぶ特別な何かがあるようです…。
Facebookを覗いてみると、A先輩は「輝き開業プロデューサー」を辞め、旅行会員権を商品としたネットワークビジネスを始めていました。
A先輩は主に、ワーママや専業主婦を新規販売員に加入させ、自分の組織を拡大し、旅行会員権を使いながら、イタリアやギリシャなど、普通の会社員や専業主婦では到底行けない国に長期間滞在していました。
どうやって新規の販売員を増やしていたのか?実は、リッ〇カールトンなどの高級ホテルのスイートルームでのパーティーが肝なのです。
そのパーティーでは必ずワークショップを盛り込んでいました。「女性だから、ママだからと自分の欲望をごまかしていない?」と参加者に問いかけ、考えてもらいます。そして「もう我慢はおしまい!独立して、自由な時間と場所で、あなたも夢のような働き方を始めましょう!」と、キラキラした言葉でアプローチするのです。
人は誰でも世間体や「べき」という考えをもっています。例えば「私の能力だったらこの程度の働き方で我慢すべき」「ママだから自分のことより子育てを優先すべき」など。A先輩はワーママや専業主婦の「べき」の内面に眠る欲望を上手く引き出し、自分の本音に気付かせるのです。そして「私もA先輩のように自由な生き方を手に入れたい!」と思わせていました。
私はその状況をかなり懐疑的に見ていましたが、それでも羨ましさを感じることもありました。当時の私は、結婚を機に不本意ながら派遣社員として働き、人間関係にも悩んでいました。収入も前職の半分以下。妻の役割に悩んだり、八方ふさがりに感じていた時期です。だから、旅行には興味がなかったものの、もしA先輩のように自由に過ごしながらお金を得られたら…と、ふと考えてしまったのです。
A先輩経由で新規販売員なると「プリンセスサークル」という仲間の一員になります。プリンセスサークルのパーティーではドレスコードがあります。「白いドレスを着る」「赤いリボンを身につける」といったものです。ワーママや専業主婦がドレスアップする機会なんて滅多にない。これにはテンションが上がるはず。
日常ではありえないオシャレをして、高級な空間に集まり、シャンパンを飲む。そんな異空間で、会社員や専業主婦から脱皮したら私も幸せになれると信じてネットワークビジネスの沼にはまっていくのです。
優等生だった元同僚を発見!なぜ彼女がネットワークビジネスに?
A先輩のグループはどんどん拡大し、パーティーには100名以上の人が集まることもありました。ある日、Facebookを覗くと、驚きの光景が目に飛び込んできました。高級ホテルのスイートルームでのパーティーを楽しむ女性たちの中に、元同僚の姿があったのです。彼女はプリンセスサークルに属し、どっぷりネットワークビジネスにハマっていました。
「なんで彼女が?」一瞬固まる私。なぜなら、彼女はネットワークビジネスに無縁のような優等生だったからです。
彼女は大手企業の営業職。社内でも評判が良く、新卒採用のホームページにも掲載されたことがあるような人です。だけどよく考えてみると、彼女ならと納得する気持ちも湧いてきました。
なんせ彼女は仕事に対して真面目で一生懸命なのです。長時間労働も厭わない頑張り屋さん。30代の彼女は、仕事に全力を注いでいるように見えました。会社は女性社員の管理職登用を積極的に進めていて、彼女も候補者の1人。その期待に応えるべく毎日遅くまで働き、休日も仕事に時間を割いていました。いつもニコニコしていて元気で、その姿から、会社に対して不満なんて持っていないように見えました。だけど心の奥底では、そんな働き方に嫌気がさしていたのかもしれません。
彼女はプリンセスサークルに入ってしばらくした頃、会社を退職しました。そして彼女のブログには、「会社員時代は疲れ果て、何か違う!と思ってた。今は、自由で自分らしく生活できていて、とっても幸せ♡これが本音の私がしたかったこと!」と書かれていました。
あれから数年、そのブログは閉鎖されています。
A先輩が描く夢のような生活は、実際には一部の成功者しか享受できないもの。ほとんどの人が理想にはたどり着けません。彼女も、その現実に直面した一人だったのでしょうね。今、彼女が何をしているのか、どのような生活を送っているのかは分かりません。
子育てに追われ、私は何のために生きているのだろう?と立ち止まっている専業主婦。男性と一緒にがむしゃらに働いてもヘトヘトになるだけで、満足のいくポジションや収入を得られず悩んでいるワーママ。そんな不安と不満を抱える毎日の中で、A先輩の「もう縛られるのはやめよう。自分だけのシンデレラストーリーを歩もう」という言葉は、非常に魅力的に映ったのだと思います。(次回につづく)
〈バックナンバー〉
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?