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特別研究員コラム③:脳の仕組みから考えるアンラーニングに必要な「対話」 ~Vol.1~ 

  皆さん、こんにちは。私は、お盆前の天気予報で週末から週明けにかけて台風が来るとのことで、楽しみにしていた予定をキャンセルし、家に引きこもれるよう食料品を買い込んだ週末。そして週明け、朝起きて晴れ渡る空を見上げ、最近の天気予報はなぜあんなにも大げさなのかと若干腹を立てつつ、今頃到着する予定だった生まれ故郷鹿児島のどこまでも青く広い海に思いを馳せつつ、気持ちを切り替えて前に進むために、この記事を書いております。

・「切り替え」が必要になる時

 さて、「気持ち」や「考え方」の切り替えって、日ごろ仕事をする上で、とても重要なことがありますよね。例えば、新しいプロジェクトに配属されたときには、「考え方」を切り替えて、新しい仕事に必要なマインドやスキルを身につける必要があります。心理学において「気持ち」や「考え方」は、「感情」や「思考」という、どちらも脳の重要な機能として研究されてきました。これらは、身の回りの環境を的確に判断し、命の危険を回避しながら生き延びていくために人間に備わっている大切な機能です。そして、環境に変化があった場合、それに適応するため、今まで親しんできた「感情」や「思考」を切り替えなくてはなりません。こんな時、人間の脳内ではどんな現象が起こっているのでしょうか。

・人間の脳は記憶にない変化がお嫌い?

 人間の脳は多くの出来事を記憶しておくことができます。この記憶は、人間を長きに渡り、守り繁栄させてきた大切な機能である一方で、「不安」という感情を生み出す元にもなっています。人間は、記憶に照らして、今現状起きていることが、安全か、それとも危機的なのかを判断しています。過去に経験したという記憶があれば、今起きていることが安全なことなのか、それとも自分の命を危険にさらすことなのか、取り組むべきか、回避するべきか、脳は記憶に照らして判断することができます。しかし、過去に経験のない出来事に遭遇すると、それは不確実でとても曖昧なものと脳が捉らえ、安全なのか危険なのかすら適切に判断することができず、こういった状況下では、不安が高まりやすくなるとされています。さらに脳は、この不安を回避するため、過去の記憶から安全であると認識した行動を持続してしまう傾向があるとされています。ですから、例えば仕事環境に変化があったにもかかわらず、その変化にそぐわないような今までのやり方を変えることができない時、それは脳が変化を適切に捉えることができず、不安を感じている時、ということができるかもしれません。

・「感情」から「思考」へ

 不安という感情は一次感情とされ、人間の行動を制御する大きなインパクトを持つとされています。人間は不安にとらわれている時、先ほどお伝えしたように、なかなか新しい行動に切り替えることができません。では、この不安を乗り越え、変化に適応して行くためにはどうしたらよいのでしょうか。それは「感情」と同じく脳の大切な機能である「思考」を働かせることです。この思考は、不安や恐れといった感情を司る脳の部位とは違い、物事を適切に認知する脳の部位が司っています。私はなぜ今不安なんだろう、なぜ新しいやり方を受け入れることができないのだろう、私には何が求められているのだろう…このように自分自身が置かれている状況を客観的に認知していくことで、感情を司る脳の活動が鎮まり、思考を司る脳が優位になるとされています。

出典:日本経済新聞 2014年1月12日

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
慣れ親しんだ「考え方」の切り替え、「感情」から「思考」への切り替え、どちらもなかなか難しいですよね…
次回Vol.2では、その方法について考えてみたいと思います。
お楽しみに♪


「人はいくつになっても学び直せる」を自分で実証実験中

特別研究員プロフィール
黒木 貴美子  (クロキ キミコ) 
ビジョン・クラフティング研究所 特別研究員
某大学院にて臨床心理学勉強中
精神保健福祉士