オスコール

バーチャル"ベター"デッダー、オスコールです。 こんなナリをしてお…

オスコール

バーチャル"ベター"デッダー、オスコールです。 こんなナリをしておりますが物書きの端くれ、色々書いて参りますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

最近の記事

『鬼丸大冒険~イナゴ妖精を追え!~』

《SIDE:オスコール》 「金がなくても食ってゆけるが、雪がなくては生きられない」  バーチャルインドからペルシャ方面へと向かうルートにあってその険しい地形、気候から『インド人殺し』の名で呼ばれるヒンズークッシュ山脈は、インドの侵攻を防ぐ防壁であると同時に、アフガンに生きる人々にとって命にも等しい雪解け水をもたらす恵みそのものでもあった――ただしそれは随分と昔の話。長引く干ばつに地球温暖化等々による水不足はただでさえデリケートな水事情に拍車をかけ、干上がった大地に生る植物

    • 『最期に報告書を一つ』

       九州地方はカナリーヤシを県木とする日本の中の南国、宮崎県。日照時間が長く、空からの旅行客を待ち構える宮崎ブーゲンビリア空港は(何だブーゲンビリアって)、夕刻になろうというのにまだまだ明るい。視界と体感とで時差を起こしている気分だ。  お土産は帰りでいいか、と足早にターミナルビルを後にし、隣接した宮崎空港駅から特急に乗り込む。仕事の下調べには余念のないタイプであるから、特急かローカル線のどちらかしか選択肢がないのは分かっていた。この地で『つばめ』は飛ばないし『こだま』も聞こ

      • 【ウマ娘】Fの疾走/キミに勝ちたい【風都探偵】

        《SIDE:橋立 翔マ》  ここでは何が起きてもおかしくはない。ほんのひと瞬きの間に人が老い、姿を消し、代わりに異形の化け物が現れる。巨大な怪物が闊歩し、空を滑空する。ビルが溶け、罪なき人々が凍る超常現象の坩堝。厄災を運び続ける不快な風はそれこそ『どこ吹く風』とのんきに風車を回し続ける、なんて忌むべき街。  私が『風都』を出たのは、そういう後ろ向きな理由からだ。それからはどこに行っても馴染めなかった。世間のはみ出し者というのは得てしてそういうものだ、まして故郷を憎んで飛び

        • 『エンジェルフェイカーと遺書』

          「『ハンニバル』で見たな。あと『ミッドサマー』」  その遺体は背中をぱっくりと割られ、おまけに肋骨を開いて羽のように広げている。血はすっかり乾いてしまっていて、黒ずんだ翼は普通の人が見ればまず吐くだろう。最初の目撃者もそうだった、おかげで草むらはゲロまみれ。 「『血のワシ』。肺までごっそり引きずり出す、ヴァイキング伝説に語られる処刑法だ」  わたしは淡々と現場を見分し、ふと被害者の顔を見つめる。かつて犯罪予兆のある人間だけを殺して回った自警団気取りの男、通称『名探偵殺し

        『鬼丸大冒険~イナゴ妖精を追え!~』

          ここまで『オスコールはつれづれがる』シリーズを読んでくれたあなたへ

          《SIDE:イェネル》  紅い液を見るのは嫌いではなかった。しょっちゅう自分の手首をかき切っていたから。  それでもいざ自らの肉を食べてみようと思った時、焼き加減はウェルダンを選んでいた。血の迸る生き生きとした肉と、口に運ぶ肉は別物と分かったのだ。『火』という人類の見出した現象は、それを通過することで生命を崇高な食物に変える。生肉にはありえない味つけ、香り、食感。野蛮な動物には出来ない芸当だ。 「ステーキのレアから滲み出てるのは血じゃあない、ミオグロビンっていう色素たん

          ここまで『オスコールはつれづれがる』シリーズを読んでくれたあなたへ

          『プラトライム ~バフォメットの眠る街~ 』

          出会い二年、距離は変わらず。上にも、横にも。 月を見上げるように天に、日を捲るくらい傍に。 気が浮き立つのは燦燦と、照る我が心の雲隠れ。 口数はより少なく、踏み込まず往く背を見送る。 思い病める時もあり、つながり已める時もあり。 重ねた石は重く、不抜な気味は一人孤独を独る。 その哀しみを、わたしは知らず笑うのでしょう。 その苦しみを、わたしは知らず生きるでしょう。 その喜びは、あなたから貰ったものというのに。 その愛みは、あなたが教えてくれたというのに。 百千の言葉を尽くせ

          『プラトライム ~バフォメットの眠る街~ 』

          『オスコールは限界化する2』

          推しのプライズが届いたオスコールさんの開封音声。タペストリーという単語が思い浮かばない程の狂乱ぶり。

          『オスコールは限界化する2』

          『オスコールは限界化する2』

          『テルシオペレⅢ - 煌骨 - 』

          ※本作は『テルシオペレ』、『テルシオペレⅡ - 白骸 - 』の続編となっております。この作品からでも充分お楽しみ頂けますので、単品で読み進めるも良し、前のエピソードとの繋がりにニヤリとするも良し、楽しみ方は自由でございます。 前作は下記URLよりどうぞ。 Ⅰ:https://note.com/virtual_oscorps/n/n0fca20b89a21 Ⅱ:https://note.com/virtual_oscorps/n/nc53c06f5ad15 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯

          『テルシオペレⅢ - 煌骨 - 』

          『オスコールはつれづれがる』その5「ユタ編」

          笑顔で作った たまごはあともう一歩 涙と怒りじゃ たまごはすぐ割れる 血を注いで 命削ってできた いとしい命のたまごは ぺっしゃんこ 温めすぎて ぺっしゃんこ     ―― 『いとしいたまご』より ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 《SIDE:???》 「やあ、僕だよ」 「突然だが質問だ。君達は『人ならざる者』なんて言い回しから、一体どんな化け物を想像する?」 「万民にとって共通のイメージが存在する『鬼』や『妖』、『悪魔』、その他伝説上の生き物を列挙すれば

          『オスコールはつれづれがる』その5「ユタ編」

          骨髄想録・その3「君は少し青すぎる空に疲れただけ」

          「おとぎ話なんかクソでしょ」     ―― 『BURN THE WITCH』より ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯  皆様こんばんは。バーチャル"ベター"デッダーでおなじみ、オスコールです。  ド久しぶりの更新と相成った『骨髄想録』三回目。今回は某ジャンプ作品に影響を受けまして、オサレなポエムを綴っていきます。  とはいえ何の脈絡も題材もなくポエるのもおかしな話。そこで過去に綴った小説をモチーフに、オサレポイントを意識しながらポエってみました。以前推しの企画

          骨髄想録・その3「君は少し青すぎる空に疲れただけ」

          『Neverending Desire Before Bedtime - 羽を広げた雛達へ - 』

          "There is a time for many words, and there is also a time for sleep."              ―― Homer ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯  手首に巻かれたネット包帯を外し、ガーゼを乱暴に剥がす。大小様々な切り傷は状態もまちまちで、うっすらと白い傷跡が残る程度にまで治ったものもあれば、切りたてほやほやで真っ赤に走る一文字も見受けられる。傷口からめくれた皮が固くなり、腫れあがった個所に当

          『Neverending Desire Before Bedtime - 羽を広げた雛達へ - 』

          『オスコールはつれづれがる』その4・裏「ラストワンダーΧ」

          ※本作は『オスコールはつれづれがる・その4「ソピアの鳥」』の続編となっております。下記URLよりお読み頂けますので、よろしければどうぞ。 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 美しい姿になろうと 醜い姿で居ようと 性格が変わる事はない どんなに外見が変わっても 僕は僕のままで在り続ける 変わりたくても 臆病な僕は 変われない ――『幾つもの媒体』より引用 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯  わたしはマテ茶を傾けた後、さて、と切り出した。君達の話をしよう、

          『オスコールはつれづれがる』その4・裏「ラストワンダーΧ」

          骨髄想録・その2「このさきずっと笑ってたいね」

          "A robot must protect its own existence as long as such protection does not conflict with the First or Second Law."          ―― Isaac Asimov ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯  皆様こんばんは。バーチャル"ベター"デッダーでおなじみ、オスコールです。  まさかまさかの『骨髄想録』二回目、想像よりも早く『進捗ダメです』な時が

          骨髄想録・その2「このさきずっと笑ってたいね」

          骨髄想録・その1「呪色のパステルを頭蓋に広げて」

          "Imagination means nothing without doing."          ―― Charlie Chaplin ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯  皆様こんばんは。バーチャル“ベター”デッダーでおなじみ、オスコールです。  二〇二一年も四月、いかがお過ごしでしょうか。今宵は毎週金曜日にお届けしている二分ラジオ『金曜夜の骨休め』の進捗が案の定芳しくなかったため、「せめて文章だけでも」と筆を取った次第でございます。たまにゃあこういうエ

          骨髄想録・その1「呪色のパステルを頭蓋に広げて」

          『ショコラ・テ・イングレスの隠し味』

          「人が恋に落ちるのは重力のせいではない」    ―― アルベルト・アインシュタイン ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 「これからバレンタインチョコを作ります!」  オス子は館のキッチンを占拠すると、腕一杯に抱えた材料と器具とを天板へ放った後、そう宣言した。一方わたしはと言えばくたびれたパイプ椅子に腰かけ、「ふぁーいと」と雑な声援を送る。そして手に持った小説を開き、栞を挟んでいたところから読み進める。  直立したまま動こうとしないオス子。痛いくらいに彼女の視線

          『ショコラ・テ・イングレスの隠し味』

          『オスコールはつれづれがる』その4「ソピアの鳥」

          前編「トライアド・ダーク」 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 「なるほどな。意識とは人類が進化の過程でひいた風邪だというわけだ。賭けは君の勝ちか」                    ―― 『屍者の帝国』 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ 「イェネル」  わたしはテーブルに右肘をつき(正確には肘を模ったマントだが)、手のひらで重ったるい頭蓋を支えつつ、そう独り言つ。左手にはリキュール――『不在』の名を冠しながら、

          『オスコールはつれづれがる』その4「ソピアの鳥」