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[週刊 未亡人生活] 第8号! <魔術的思考>わたしがマジカルシンキング期にはまっていたときの話。

ごきげんよう、ある未亡人です。

いよいよですね。
モンブランの季節がやってまいりました!

この秋は、
たくさんのモンブランや栗スイーツたちに出会うことが目標です🌰

出会い次第、こちらのマガジンでも紹介していきますね🌰🌰

それでは、今週もはじめていきたいとおもいます🌰🌰🌰


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はい。先週の話のつづきでございます。

<マジカルシンキング>という言葉をご存じでしょうか。

こんな本があります。

原題は " The Year of Magical Thinking "(魔術的思考の年)です。
(こっちのほうがいいとおもうんだけどな)

このエッセイを書いたのは、アメリカの脚本家ジェーン・ディディオンです。
彼女はわたしと同じように、夫を突然死で亡くしました。

この本には、ジェーンさんが、
旦那さんが亡くなったとアタマでは判っているのに、
「死んでなどいない」と思おうとする、揺れ動く心情が綴られています。

わたしは「マジカルシンキング」という言葉にとても惹かれました。
直訳すると「魔術的思考」です。
どうやらアメリカでは、
人の死後、そのような時期が遺族に訪れるとされているようです。

日本人である自分にも、
そうだとしかいいようのない心情の時期がありました。

わたしがしきりに霊媒師を紹介され、会いに行っていた時期がまさに、

マジカルシンキング期

でしたね。

それはちょうど、死後の手続きなど、
やることが山積みで動き回っていた<過活動期>の後に訪れました。

死後、半年から一年くらいの間のことです。

というわけで、

わたしのグリーフワークのなかには、
マジカルシンキング期というものがありました。


ほんとにね。
アタマではわかってるんですよ。
亡くなったんだって。
夫はもういないんだって。

でも、もう彼とは直接話せないんですよ。
怒ることだってできないんです。
それが理不尽だと感じられて、怒りがどんどんわいてきちゃうんです。

その頃、飼っていた動物がいて、
目つきが夫に似ているなどと感じてしまい、
しきりに話しかけたこともありました。
夫の魂が動物に憑依しているとでもおもったんでしょうかね。

季節はずれの蝶々にメッセージをかんじようとしたこともありました。

そのように「不思議」へと向かう空気に取り巻かれていながら、
実際、そこに向かう原動力は「怒り」でした。

それは不思議の皮をまとった故人への怒りだったのです。


🦋

この時期、5人以上の霊媒師、サイキックと呼ばれるかたがたを訪ねました。

今週、その導入として書くのは、
いまでもテレビでちょくちょくお見かけする女性を訪ねたときの話です。

当時は、友人がその女性のマネージメントをしていました。
30代なかばの占い師で、霊感が強いというのが売りのかたです。
テレビ出演していることもあって、2年先まで予約がとれないとのことでしたが、
友人の導きにより、特別なセッション枠で会えることになりました。

その女性には、霊感ぶりを試す意味で、
夫の死を見つけたのが愛人であることを言いませんでした。

さらに、会ったときには、ふだん着ている洋服は避け、
性格とは逆の服装をし、しゃべりかたもすっかり変えました。

相談内容は、
夫の上司から葬儀パワハラを受けて苦しんでいるという事実のみ、
訴えました。


以下、当時のメモをそのまま引用します。

「上司のかた(Xさん)と話し合って下さい、と旦那さんは言ってます」
女性はそうわたしに伝えてきた。

どうやらその先生は夫の魂を<ここではないどこか>に呼び出してくれているらしい。しかし、残念なことに、先生が言うことはあまり当たってはいなかった。

それでも高いお金(1時間2万円)を払ったのだから、わたしはこの状況に乗っかってみることにした。

とりあえず、夫と話しているという設定の彼女に向かって、
「こんな状況をわたしにのこしていくなんてひどい!」
と罵ってみたのだ。

すると、はじめのうちは女性を通して、
わたし:「・・・と、伝えて下さい」
女性:「・・・と、旦那さんは言ってます」
などというトランシーバー的なやりとりだったのが、わたしが直接罵倒し始めたがために、なぜか夫にのりうつられたという設定の女性とわたしとで「直接会話する」というテイのスタイルへと変化していった。

それは・・・ひとを相手にしていながらも、まるで空に向かってひとりでぶつぶつ文句を言っているのと同じことだった。

正直、あまりの茶番っぷりに、我ながら途中で笑いがこみあげてしまった。
そして、夫を宿しているという設定の女性は黙ってしまった。

「いま、旦那さんは横を向いて、すっかり黙ってしまわれました。もうなにも喋りません」
我に返って、女性が言った。

そして、わたしへの説教がはじまった。

「いいですか。旦那さんにちゃんと話をきいてもらうためには、まずは成仏してもらう必要があります。成仏してもらうためには、供養が必要です。つまり、あなたが旦那さまに怒りを感じ、そのように罵っているうちは、永久に話を聞いてもらえないということです」
「なるほど……」

こころ穏やかに供養することは、いまの自分に必要なことかもしれないと思った。人間的な生活の理にかなってもいるとさえ思った。
<マジカルシンキング>に酔いたかっただけかもしれないが。

「ひとつ、申し上げていいですか」
女性はぐっと目を見開き、完全にご自分本来の調子に戻った。
「どうやら旦那さんが、あなたの悪口を会社とか周囲のみなさんに言っていたようです」
「いやー、夫はそういったことをする者ではないのですが……」
「いえ、私には見えます。旦那さんが生前にしていた話のせいで、あなたがいま、とてもひどい評価を受けているのです。それは……ちゃんとした言葉じゃなくても、態度とか、表情とか……。とにかく、生前に旦那さんのしたすべてのことがあなたに悪く影響しています」
「なるほど……」
もはや、「なるほど」というあいづちしか打てなくなった。

不思議なことに、このときのわたしは、友だちから言われた以上に、素直に深く納得していた。

夫が上司に、わたしの悪口を吹き込んでいたのなら、そのほうがずっと気が楽だ。夫の両親や妹がわたしに対して憎しみをぶつけてくることも、わたしの落ち度などではなく、すべて夫の陰口のせいなのだから。

女性は目をつむり、話しはじめた。
話にはきいていた。女性はセッションの場に居ながらにしてご自分の生き霊を依頼者の住居まで飛ばし、様子を見に行けちゃうらしい。というわけで、憑依と説教のあとは、わたしの家のようすが詳細に見えているという設定に付き合うことになった。

そういえば「掃除をしといたほうがいいよ」と紹介者から言われていたが、なにもしていなかった。

「ああ、あなた。そのベッドで寝ていると、死にます」
女性は言った。
「ベッドも旦那さんの携帯も、早めに処分したほうがいいですよ」
「なるほど……」

さらに前世も見ていただけるとのことだったので、きいてみた。

「前世では、あなたが旦那さんの愛人で、旦那さんのお母さんが本妻でした。そのため、あなたは会う前から旦那さんのお母さんからはげしく嫌われていたのです」

なるほど。

ちなみに夫はイタリアの超有名画家で、わたしはその助手として絵の具の調合を手伝っていたのだそう。

とっさに『真珠の耳飾りの少女』という名の映画を思い出した。そうか。わたしはフェルメールの愛人役のヒロイン、スカーレット・ヨハンソンのポジションだったのか。(注:フェルメールはオランダの人)

さっそく、担当編集者にこのときの経験を報告した。すると彼女は、
「わかります。自分も、霊媒師を訪ねたとき、前世では江戸時代の大きな酒屋で、夫に浮気される側ではなく、自分のほうが男で、前世で妻だった夫のことを浮気して苦しめる側だったって言われました。でも、そう言われたら、とりあえずなるほどっておもいますよね。気が楽になるっていうか」
と言うのだった。

彼女はその後、霊媒師が告げた前世のおかげで、こころやすらかに離婚へと向かって行った。

ちなみに、わたしはいまも同じベッドで寝ています。
理由は、捨てるのが面倒だから、という一択です。
たしかに、いつかは死ぬんでしょうね。このベッドで寝ていると。

この女性に会ったときのことをおもいだすと、笑みがこぼれます。
いい思い出なんでしょうね。

半分ではおかしいとおもいながらも、
もう半分ではくそ真面目に会話をしていました。
女性という、霊界のトランシーバーを介して。

半分どこかにいっていたマジカルシンキングの時期は、
自分にとって必要なグリーフワークでした。

(つづく)

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今年もまた、
パティスリー・アサコイワヤナギのモンブランをいただく機会に恵まれました。

こちらのお店には2種類のモンブランがあり、
今回いただきましたのはその名も<峠モンブラン>です。

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(画像をお店のHPからお借りしました)

なんと端正なお姿!
横から見ると、畝がついているのですね。
生クリームの中にこっそり重鎮がたたずんでおられます。
ギュウヒさんです。

ギュウヒ、好きだわ〜。
基本的に、
ひとつのスイーツのなかに複数の食感をもとめたい派なんです。

もちもち、ふわふわのやつらが、
なめらか、しゃりしゃり、つぶつぶのものたちと出会う。

よりによって、わたしなどの口にはいり、それらが一気にほどけまくる。

驚きで口中を満たせよ。


いつもの日常のなかで味わうことや、
画一化された咀嚼をゆるさない! 

意気込みをかんじるスイーツが好きです。


そんな出会いの瞬間。
みじかい秋の出会いに感謝しながら味わっています🌰

モンブラン食べといてなんなんですが、
栗のスイーツといえば、栗きんとん。
岐阜中津川に本店があるすやの栗きんとんがオールタイムベストワンです。

以前は、
予約しても、
その年の栗さまのご都合により、
いつ届くかがまったく判らないという、
ただひたすらにプライオリティ「栗」という方式でしたが、
いつしか東京の百貨店でも買えるようになり、
ネットでもお願いすることができるようにもなって、
じゃっかん、ありがたみが減ったような心地がしております。

しかしながら、栗を解体し、
なんらかの加工によって中身のみをまた再集結させ、
わざわざ栗の形に再現するという手間と執着っぷりが、
毎年の栗きんとん愛へとわたしを向かわせるわけですよ。

なんなんだろうな。
モンブラン食べてるとき、栗きんとんのこと、思い出すのって。
栗泥棒? 浮気栗? 栗の搾取?

かんがえているうちにゲシュタルト栗崩壊してきました・・・。

自分でしぼって形作れる和菓子屋が近所にあったけれど、
ああ、栗だね・・という感想しか出てきませんでした。
おそばの形が栗本体の意味を超え、味を置いてきぼりにしてしまった。

ただ、栗を味わいたいのよ。

シンプルな欲望を確認した次第です。
栗きんとんの形って、欲望の翼なんだね!

そういえば、漆教室に、
栗の中身を抜き、皮に漆を塗って、栗の姿を再現しているかたがいます。
「質感じたいのファン」なのだそうです。
どんだけ栗好きなんだよ・・・

🌰 🌰   🌰



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