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インドの論語『ティルックラル』

1『ティルックラル』の紹介

 皆さんこんにちは。
 今回は、今現在、自分が研究中のインドの論語『ティルックラル』について、ご紹介いたします。

1.1 『ティルックラル』とは?

 『ティルックラル』(திருக்குறள்)とは、「ティルヴァッルヴァル」(திருவள்ளுவர்)先生が、「法(アラム)」、「財(ポルル)」、「愛(カーマム)」の主題にした、1330行の二行と3篇133章の構成となっている詩的な箴言集です。

インドで最も典型的な『ティルックラル』の表紙

 この箴言集は、古くから現在に至るまで、インド(特に南インド・取り分けタミル地方)の間で愛好されては、膾炙かいしゃされて、社会に教育や文化、そして哲学や思想に絶大な影響を与え続けている書物であり、正に、我が東洋の『論語』に擬えて、「インドの『論語』」と呼ぶのに相応しい書物でしょう。
 この箴言集は、碩学大儒であったティルヴァッルヴァル先生によって著述された書物であり、その内容は多様にして含蓄や蘊蓄うんちくが深く、それでいて、政治や教育に軍事等だけではなく、身近な社会生活や私生活等でも十二分に活用や応用できるものとなっており、また我が『論語』よりも優れているところの一つが、論語と同様に社会哲学・倫理学の書物であるものの、社会各個人の恋愛や家庭道徳に動物倫理等に関しても深く言及しているところです。
 ただし、絶対採食主義しか語らなかったり、「娘」に関することが一切言及されていなかったり、妻を重圧し過ぎるような言葉や思想等、欠点も多々ありました。
 そして論語と同様に、超自然の存在について言及しながらも、あくまでも現実的で、人間の自主的かつ主体的、知的で学的な奮励努力こそに人生の原動力や創造性があり、人々の迷信や盲信に妄信等に付け込んだ言葉や思想はほぼ全く存在しなかったです。また、論語と同様に、読者が音読・理解・記憶し易いように、高度な修辞学を駆使して言葉を精選しては、組み合わせて、配置しました。そのため、音読や理解の際に、心地良いリズム感のある微妙で美麗な音調があります。それを翻訳で他の言語に移すことはほぼ不可能です。(これは論語も同様であり、その為に、『論語』が西洋の哲学者達、例えばヘーゲル先生に過小評価される等のようなことがあってしまいました。)以下が、原文を音読した場合のものであり、言葉の意味が不明でも、その心地良いリズム感のある微妙で美麗な音調を知ることが出来ましょう。

 ところで、書物が誕生した背景であるその著者に歴史や文化等をも知ることで、その内容をより深く理解することが出来るものですが、『論語』とは異なり、『ティルックラル』はこれ程までに高名で傑出した書物でありながらも、その成立時期は不明であり、しかも、著者である「ティルヴァッルヴァル」先生も、孔子とは異なり、伝説を除いて、伝記も無く、後世にティルヴァッルヴァル先生の弟子と名乗る者もおらず、その上、この著者の実名が「ティルヴァッルヴァル」であるかどうかも、確証は無く、その為に、ティルヴァッルヴァル先生の生い立ちも人物像も正体も、そして実名ですらも一切不明です。
 更に、『ティルックラル』というのも、題名ではなく、日本語に訳す(意味は諸説ありますがここでは一般的な説を取って)と、『聖なる(ティルッ)二行連句(クラル)』となります。
 故に、この箴言集は、別名『無名の著者による無名の書物』とも呼ばれております。

1.2 『ティルックラル』の参考文献

 以下が、入手が容易な『ティルックラル』の日本語訳と英語訳の参考文献です。また、各個人の学習用や研究用の為に無料で公開・配布されているPDF版のものもあります。

 『ティルックラル』は、論語と同様に、その精選された数々の言葉と短くて深い内容となっている本文により、翻訳並びに解釈が多様に出来るようになっており、そこれによって、数多くの深い味わいや趣きがあることでしょう。

2 拙作の紹介と『ティルックラル』の感想

 それでは、拙作を紹介しつつ、『ティルックラル』の感想(拙作の本文)を述べていきます。

2.1 拙作『社会善 思想並びに良心の自由の個人的かつ主体的な実践』

 今現在、こよなく愛する我が祖国ベトナムの近現代史の批判並びに猛省をしつつ、『論語』と『ティルックラル』の思想を組み合わせた、以下の拙作『社会善 思想並びに良心の自由の個人的かつ主体的な実践』を執筆中です。

表紙・扉・目次

解題・序文

概要

 さて、ここで拙作の、『論語』と『ティルックラル』の思想の融合がどのようなものであるかを、その概要は、以下の通り、拙作の上巻の『三心勤勉』の序文に著述されております。

 以上の通り、拙作の表紙にも記述しているように、『論語』の「三畏」(天命・大人・聖人之言/温而厲・威而不猛・恭而安)と「法」「財」「愛」を組み合わせたものとなっております。

 以上のように、思想並びに良心の自由を、以上の三心を以て勤勉になることで、個人的かつ主体的に実践していくことを目指した哲学書となっております。

3 結語

 自然法則並びに哲理を忘却し続ける現代社会・物質並びに情報が激しく氾濫し続ける現代社会・精神並びに愛情の喪失がますます加速し続ける現代社会。そのような現代社会は、今の日本社会も当てはまるのではないでしょうか?
 思うに、『ティルックラル』は、そのような現代社会の人々に、自然法則並びに哲理を思い出させては、物質並びに情報を適切に分析並びに取捨選択することを助力して、精神並びに愛情を再び善く育む一つの哲学書です。
 皆さんに、心を尽くして、購入や味読をお奨め致します。
 また、拙作『社会善』の完成・出版を以て、『ティルックラル』の思想並びに「ティルヴァッルヴァル」先生の遺徳を批判的・発展的・独創的に継承して参ります。そしてもちろん、私自身も、実践して、祖国ベトナム・第二の祖国日本に貢献する愛国者となります。

அறம்பொருள் இன்பம் உயிரச்சம் நான்கின்
திறந்தெரிந்து தேறப் படும்.
How treats he virtue, wealth and pleasure? How, when life's at stake, Comports himself? This four-fold test of man will full assurance make.
法、財、愛[の各々に対する態度]、生命[を失うこと]に対する恐れ、これら四つの特質をよく調べ、[人材は]決定される。

『ティルックラル』501

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