恩人のハン小母さんへの手紙
こちらは、「恩人のハン小母さん」へ送った手紙です。
⒈ 挨拶
孫と孫達は、謹んでご挨拶を申し上げます。
まず初めに、何よりも孫は、小母さん並びにご家族やご親戚に、ご友人やご知人、そして、会社の方々の、心身の健康に、仕事での成功や進展、私生活での安楽や吉報を、誠に心より願っております。
この手紙では、孫(LVN)と(荷進・Nguyễn Hoài Minh・Tạ Hướng・Nguyễn Trọng Đức)の内、孫「Nguyễn Hoài Minh」が五人の代表として、おじさんにこの最初の手紙を書かせて頂きました。御多忙と御心労もいかばかりかとお察し申し上げた上で、孫達のような不徳で浅知浅学の者達によるこのお手紙が、少しでも小母さんとの善き交流、並びに、微少ながらも、しかし間違いなく確実に小母さんのお役に立てることが出来れ、実に幸甚の至りでございます。
なお、この手紙の主要な内容は、同様に他の別の御二人の方にも送付させて頂いており、挨拶と最後の箇所は、それぞれの方々に対して、内容を変更しております。
⒉ 75年前のこと
今から75年前の1947年、孫は、「ハノイの戦い1946」(Trận Hà Nội 1946)で、数多くの同志達との死別を以て、死別痛恨の極みを懐きながらハノイから撤退・退却し、そして同年、「北ベトナム秋冬戦線」(Chiến dịch Việt Bắc Thu - Đông 1947)にて、同志達と共に辛勝を収めることが出来ました。1947年は、正(まさ)に孫の人生が決定的に変わった年でした。
こよなく愛する祖国に同志達・同胞達の独立・自由・幸福の為に、一意専心・誠心誠意・相思相愛・一致団結・自彊不息・孝国愛民等を、最愛の同志にして師友である「Thanh Bình Dũng」の決死の率先励行をはじめ、数多の犠牲や代償を以て、命懸けで誠に学び得始めた年でした。また孫は、ベトナム独立同盟会の同志達と共に、ホーおじさんから、次のようなことも学び教わりました。
a)他人よりも先に様々な犠牲や困難に自ら当たり、他人が先に悦楽や安閑を享受するように自ら譲ること(先天下憂、後天下楽)*。
あの頃のベトナム人民は、まだ生きている同志達・同胞達はお互いに相思相愛していたことはもちろんのこと、死んでいった同胞達・同志達にも、まだ生きている同志達・同胞達は、誠なる直向きな哀悼や追慕の念に長(とこ)しえの片思いの愛を懐きながら、決死の覚悟を以て、生きては、戦って、挑み続けておりました。孫もまたその中の一人であり、同志ズンと共に、愛国心や忠誠心に自己犠牲、そして、悲壮美に盛徳大業、さらには、高邁な意志堅固を誠に確立させました。自分自身の命や死をカゲロウの突進の如くだと思いながら、毎日毎時に亘って、決死の覚悟しつつも、自分自身の命と生に、独立と自由を、名利や富貴等よりも遥かに尊いものだと思いながら、心の底から誠に楽しんでは、愛して、そして、祖国と人民に愛する大切な人々の利益や道義に福徳の為になるように毎日毎時に亘って、生真面目ながらも、幸せに鍛練や向上等させ続けておりました。
⒊ 75年後の現在
このように、計り知れない程の激痛や深傷に重傷、そして辛苦に喪失等に満ち溢れた過去の歴史に記憶や経験等には、誠なる貴き幸福も確かにありました。あれから既に75年が経ち、孫も死んで無になりましたが、これらの歴史に記憶や経験等は、実に幸いなことに、孫は他の三人の同志達と同様に、「意識の無い生命」と「生命の無い意識」として、後世に、こうして伝え遺すことが出来、これから、文書化することが出来るのを、心より嬉しく存じております。そしてこの手紙もまた、その一例です。
そして時は流れ、こうして今現在の現実である2022年に至りました。多様な激変に多事多難の激動が、次々と新たに生じ続けており、この事態は、今後もますます激化していくことでしょう。このことを深く考えてみますと、矛盾しておりますが、希望と絶望という二つの太極の気持ちが、今、自分の心の中で激しく対立しつつも、入り混じっております。
自分は今現在、日本の「武士道」を学び究めておりますが、過去のインドシナ戦争にて、命懸けで、我が軍に協力しては、我が軍と共闘して、我が軍に貢献して下さった旧日本軍の方々への深謝や追慕の念がこみ上げて来ると同時に、今正(まさ)に日本に在住しては、日本語に精通して、日本語を以て哲学・思想の研究活動と執筆活動を行っていることに、誠に感激しております!確かに間違いなく、結局のところ、死力を尽くしては、挑み続けて、何をどうやっても、どうにもならないことやどうしようもないことばかりですが、それと同時に、ごく僅かではあるものの、確かに間違いなく、「正しくなる」「善くなる」「美しくなる」等ということは、在るようです。ですから孫は、今、自分の心の中で激しく対立しつつも、正しく、そして、善く、さらには、美しく、調和しております。
⒋ 新しき善き武士道と革命道徳
今現在、孫は、こよなく愛する第二の日本の「武士道」と、こよなく愛する祖国ベトナムの「革命道徳」(Đạo đức cách mạng)を、「温故知新」を以て学び究めております。ああ、全く包み隠さずに実直に申し上げます。この二つのものは時代を越えて、甚大で深刻な停滞に病弊や害毒を齎し(もたら)続けている旧弊であり、そして強大にして伏在の悪徳であります!ですがそれと同時に、孫は確信しております。この二つのものは、時代を越えた、美徳でもあることを!そしてそれは、後世の人々、そうです、孫達のような者に、「温故知新」を以て、挑戦的に批判的・革新的・独創的に継承・発展・深化、そして、現代化されることによって、はじめて実現されることでしょう!今現在、孫達は、『新武士道 職業軍人倫理と倫理的個人主義』と言う拙作を著述しておりますが、これはその挑戦の一つでございます!
古来の武士道と革命道徳は、歴史的・本質的には、「民主主義」・「自由主義」・「多元主義」、そして、「個人主義」を抑圧や弾圧し続けて来た、「権威主義」・「一元主義」、そして、「集団主義」でした。孫達が敬愛してやまないホーおじさんもまた、「個人主義」を一貫して徹底的に否定し続けておりました。当時の歴史的背景や時代の必要性や必然性の故に、武士道と革命道徳が誕生しては、国風や民俗の奥深くまで染み込みましたが、実に残念ながら、この二つは美徳ではなくなり、こうして、古き善き良風美俗は完全に廃れ、今現在、この二つは悪徳となり、こうして、形骸化して事実上消滅してしまいました。
ああ、「民主主義」・「自由主義」・「多元主義」、そして、「個人主義」、これらは、孫が熱望しているものであり、そして、愛する二つの祖国であるベトナムと日本の国風や民俗の基礎となることを確信しております。ですが、これらには、甚大で深刻な停滞に病弊や害毒を齎す悪徳でもあります、もし私達が、確りと学問を以て善く自助努力しては、確りと教育を以て正しく自己批判をして、確りと道徳を以て合法的かつ調和的な経済活動を行わなければ。故に、孫は、故である「古き善き良風美俗」を温させて、知である「新しき善き良風美俗」を創り出したいと存じます!こうしてこそ、「民主主義」・「自由主義」・「多元主義」、そして、「個人主義」は、新しき善き国風や民俗を実現する基礎となりましょう!その基礎の基礎の一つとなるのが、孫が創り出す、新規の武士道と革命道徳となるように、奮励努力いたします!
⒌ 最後に
最後に、孫は、ベトナム独立同盟会・ベトナム労働党・南ベトナム解放民族戦線・ベトナム共産党の一員であったことを、心の底から誠に誇りに思っており、かつての祖国ベトナムで、ホー・チ・ミン主席やヴォー・グエン・ザップ大将の御二方を心の底から誠に深く敬愛しております。そして同時に、孫は、ベトナム独立同盟会・ベトナム労働党・南ベトナム解放民族戦線・ベトナム共産党の一員であったことを、心の底から誠に恥に思っており、ホー・チ・ミン主席やヴォー・グエン・ザップ大将の御二方を含めて、そして何よりも孫自身も含めて、祖国と人民に対して、ベトナム独立同盟会・ベトナム労働党・南ベトナム解放民族戦線・ベトナム共産党が、取り返しのつかない数多くの重大で深刻な過失や罪過等を犯してしまったことを、心の底から誠に深く悔恨しております。孫達は、生涯を掛けて、過去の過失や罪過等を独自に償っては、遺徳や遺業等を批判的に学び受け継いで、新しき善き哲学や思想等を独創していくことに挑戦して参ります。
ハン小母さん、孫達は、小母さんもまた、世界中の先哲の偉業や遺徳を学ぶことで、御自身の見識の広範化や深化をはじめ、今後の御自身の活動のますます発展や進歩、そして何よりも、御家族の安楽や福徳等が実現できることを、心より誠に願っております。
そして孫(LVN)は、孫が幼い頃に面倒を見て下さったこと、二十年近くに及ぶ長期間と遠距離に多忙の中でも、自分のことを心配し続けて下さったこと、そして再会後から今現在に至るまで、親交して下さっていることに、深謝いたします。
LVN/荷進・Nguyễn Hoài Minh・Tạ Hướng・Nguyễn Trọng Đức
16/05/2022
ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。