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『フミオ劇場』まとめ

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昭和初期生まれ“めちゃくちゃ系父“のエピソードを小説風連載にしたものです。 家族が被った数々のネタを書き残しておこうと、昨年よりnoteで始めてみました。 80%実話で、20%…
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#小説

フミオ劇場 3話『初めてお見合い相手(妻・三枝子の回想)』

フミオ劇場 3話『初めてお見合い相手(妻・三枝子の回想)』

 【3話はフミオの妻となる三枝子目線です】

 親に言われるがまま、初めて見合いをしたら、1週間後には結婚が決まった。

 3ヶ月後にはフミオの嫁になった。

 三枝子の気持ちは重要視されなかった。

 身体が弱く入退院を繰り返す父に代わって、母が懸命に働き5人の子を育てた。三枝子は長女で弟と3人の妹がいる。

 母の願いはただひとつ、娘たちが成人したら順にお金持ちの家に嫁がせて、安心することだ

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フミオ劇場 8話『友達っちゅうもんはな』

フミオ劇場 8話『友達っちゅうもんはな』


「ここへ座れ」

 フミオが娘の樹里を呼んだ。


 畳に胡座をかいて腕を組んでいる。


「今からパパが大事な事いうからな。しっかり頭に入れろよ」


「なに?」


 樹里はチラッと壁の時計を見た。
 明日は中学の入学式だ。

 ハンカチとティッシュ
 メンソレータムリップ
髪を結ぶゴムも探さないといけない。

 忙しいのに大事な話て、何なのだ。

 何でも良いけど短く済ませ

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フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』

フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』



 フミオは教えたがり屋さんである。

 博識で口達者までは許すが
 この男の場合
 粗暴で放逸といった要素が加わるので

 いきなり
 FCT(フミオクレイジートレーニング)と
 呼ばれる案件が発生する。

 そんな言葉はないが。

 まずは、被害者(犬)シロ。

柴系雑種で、番犬用にフミオに飼われたが
 滅多に吠えない。

 日向ぼっこが大好きで
 シロの一生は
 餌を食べて寝るだけの

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フミオ劇場  12話 『先手必勝と女のタバコ』

フミオ劇場  12話 『先手必勝と女のタバコ』

 地元の活発な(荒れた)中学に入学した樹里は刺激的な毎日を疾走していた。

 新入生は先輩たちを真似て鞄をペタンコに、スカート丈を長く、オキシドールで髪を脱色した。

 樹里たちクラスの女子グループで
 ある日決起し
 新米男性教師を糾弾したら泣き出してしまい
 学校で大事になる。

「家庭訪問するからな!」

 職員室で味方に囲まれ
 生き返った新米は、女子たちへ告げた。


 母の三枝子は喫

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フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

 その物騒な風貌から、酒豪と勘違いされがちだが、フミオは下戸だった。よって晩酌しながらのテレビ鑑賞でなく

 ⚫︎お茶(玄米茶かほうじ茶)
 ⚫︎果物(桃党)
    子供は食べたら鼻血出ると独り占め
 ⚫︎お菓子(鴬ボール、羊羹)
 ⚫︎タバコ盆

 ピクニック型鑑賞である。

テレビは一家に一台の時代。家族揃って観るのが日常だ。

 そうなるってぇと、どうなるかってぇと
 フミオのうんち

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フミオ劇場  14話『和彦を殴る理由』

フミオ劇場  14話『和彦を殴る理由』

 高校生となったフミオの息子、和彦は〈飛び出せわれらさらばビバ青春〉をまるごと満喫していた。

 青春時代が夢なんて、あとからほのぼの思うものと森田先生は歌ったが、道に迷いながらもいつでもどこでもキラキラ出来る。

 予選落ちの常連バスケットボール部を部活に選んだのは、ユルッとした活動が理由。練習量が学校いち少ない。他の時間はすべて遊びに費やせる。

 それがこの冬に事態が一変した。

 ドラマの

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