見出し画像

気仙沼地域の商店街・商業エリアには再生の可能性があると考える理由|地域視考

先日「地域視考を始めます」と書いたわけだが、その後に公開した記事は従来通りの店舗紹介記事で、肩透かしを食らった人がいたかもしれない。始めると言ったが、次に公開する記事が地域視考とは言っていない。そういう話だったわけである。

とはいえ、上記の記事が思った以上に反応を頂いたものだから、筆者としても若干の心苦しさがあったのは確かである。実のところ、「地域視考」の最初の記事は、上記の記事と合わせて公開する予定であり、準備は行っていた。時間の兼ね合いで公開までできていなかっただけである。

筆者としても、「地域視考」を始めると言った一方で、具体的にどのような記事を出すのかを明示できていないと感じていたことから、早期に出したいと思ってはいたわけである。といっても、「地域視考」も他の記事同様にフォーマットが決まっているわけでない。

地域活性化や地域再生に関する情報を踏まえて、実際に歩いて視た地域にその情報を組み合わせる”試行”をする形をイメージはしていたが、何もその形にこだわる必要はないと思っている。現実問題として、「地域視考」第一弾となる本記事は、そのフォーマットに則らない。

前置きはここまでにして、本題に入ろうと思う。今回は、「地域視考」第一弾として、気仙沼地域について見て考えた内容を書こうと思う。言ってしまえば筆者は外様の人間であるからして、住民からすれば異論や懐疑的に感じる話も多々あるかもしれない。あくまで筆者個人の考え程度に捉えて頂ければ幸いに感じる。
※広告の後に続きます

※上記3冊は広告です。興味がわいたら買って読んでみてください


歩いて視て考えた気仙沼地域の現在

本記事を書き進めるにあたり、最も重要となる定義を先に書きたいと思う。何かと言うと、気仙沼地域とはどこかという点である。恐らく気仙沼市民の中でも、気仙沼地域と聞いて思い浮かべる地域が異なると思われるため、本記事における定義を先に示しておく。

気仙沼市の行政区図※出典:気仙沼市社会福祉協議会公開図に筆者加筆

今回、気仙沼地域を定義する上で、気仙沼市が示している行政区を参考にしている。つまり、気仙沼地域は上記地図の①と定義する。気仙沼市全域の地図では分かりにくい人のために、若干拡大したものも示す。

気仙沼地域※出典:Googleマップ

若干寄りで見たとき、気仙沼地域は上記地図のピンク色の線で囲われたエリアを指す。1枚目の地図で見たとき、気仙沼地域はあまり広くないように思われたかもしれないが、2枚目の地図を見ると、土地勘のある人にとっては「かなり広い」と思えるのでなかろうか。実際、自動車で右上から左下まで走ると15分〜20分くらいはかかるだろうから、結構な距離である。

気仙沼地域の人口は決して少なくない

気仙沼市内の地域別人口は、以下の通りとなる。

気仙沼市の行政区図※出典:気仙沼市社会福祉協議会公開図に筆者加筆

①気仙沼地域:13,565人(7,022世帯)
②鹿折地域:4,804 (2,209世帯)
③松岩地域:7,897人(3,622世帯)
④新月地域:5,399人(2,465世帯)
⑤階上地域:3,850人(1,654世帯)
⑥大島地域:2,191人(1,018世帯)
⑦面瀬地域:5,791人(2,485世帯)
⑧中井地域:1,906人(763世帯)
⑨唐桑地域:2,369人(970世帯)
⑩小原木地域:1,066人(467世帯)
⑪小泉地域:1,335人(539世帯)
⑫津谷地域:4,188人(1,697世帯)
⑬大谷地域:3,291人(1,289世帯)

人口と世帯数※2023年12月31日時点

気仙沼地域の人口は、気仙沼市内で最も多いだけでなく、2番目に人口の多い松岩地域の2倍程度となっている。世帯数についても圧倒的な数を誇る。理由として考えられるのは、災害公営住宅等の大規模な団地が気仙沼地域に集中しており、他の地域は戸建てもしくは小規模なアパート・マンションが多い点である。

気仙沼市の人口は全体で57,652人、世帯数は26,200世帯であるため、単純計算として気仙沼地域だけで気仙沼市の人口の23.5%、世帯数の26.8%が、気仙沼地域に集まっていることになる。

多くの地方と呼ばれる地域の経済を活性化し難い理由として、人口(居住者)の分散が挙げられる点に鑑みれば、この状況は気仙沼市の今後にとって光明と言える。現在下位の人口となっている地域からの転居が進めば、状況はより一層改善されると言える。

気仙沼市は少子高齢化・人口減少による衰退が進んでいるものの改善の余地がある

ここからは、気仙沼地域の商店街に目を向けたい。恐らく住民の誰もが実感していると思われるが、気仙沼市は他の地方の自治体の例に漏れず、少子高齢化・人口減少の影響で衰退が進行している。

商店街の多くは休日であっても閑散としているし、多くの店舗はお世辞にも儲かっていると言える状況にない。明らかに人出不足により、経済が不活性化している。近隣の市町村に比べて観光客の流入は見込めているが、大きなインパクトが生じる程の規模になっていない。

気仙沼市の立地は悪くない

とはいえ、気仙沼市の立地は決して悪いわけでない。少なくとも北側の陸前高田市や大船渡市に比べれば、圧倒的に集客をしやすい立地である。何せ、西側には人口10万人規模の一関市が存在し、鉄路で結ばれている(自動車で移動した方が早いけれど)。一関市は、岩手県内では珍しく、新幹線駅とローカル線が一体化しており、停車本数も少なくない。

また、三陸道の開通により仙台市からのアクセスが格段に向上しており、こちらは高速バスを通じたアクセスが可能になっている。確かに公共交通機関のみで東京から訪れるには膨大な時間と費用を要するものの、自動車の運転を必要とせず、乗り換えも複雑化させずに来訪できる悪くない立地である。

陸前高田市や大船渡市は、アクセスの面で致命的な問題を抱えているため、はっきり言って観光を産業として望めるような立地ではない(大船渡市の場合はコンテンツの問題も多分にあるが)。一方で気仙沼市は、ギリギリ観光を産業として望める立地であると言える。

ありとあらゆる産業において、交通アクセスは何より重要である。意外に思われるかもしれないし誤解されている面もあると思われるが、仮想空間においてビジネスが行われるIT産業でさえ、現実の交通アクセスが非常に大きな重要性を持っている。この点において、及第点を取れる気仙沼市は、それだけで”何とかできる”ポテンシャルがある。気仙沼市の良い点は、それだけではない。

人口が多いだけではあまり意味がない

先ほど少しだけ触れたが、気仙沼市が持つ”何とかできる”ポテンシャルは、何と言っても意外と人口が集積している点である。東京23区を思い浮かべてもらうと分かるが、狭い地域に人が集まっていることは、地域経済を潤す上で何より重要である。

よく誤解されがちだが、人口が多いことそれ自体は地域経済を潤す要因としては強いと言えない。岩手県の一関市や奥州市を思い浮かべて欲しい。一関市や奥州市は確かに人口10万人を超える自治体であるが、あまり賑わっているイメージを持ちにくいはずである。

理由は単純で、人口密度が低いからだ。とくに一関市は数多くの自治体を併合して現在の規模になっているため、人口の少ない地域が非常に多い。結果的に10万人以上の人口を擁しながらも多くの地域が閑散とした状態になっている。いくら人口規模が大きかろうと、それではあまり意味がない。

奥州市も同様で、一関市以上の人口を擁しながら、水沢駅前商店街の閑散さは目を覆うほどのものになってしまっている。結局のところ、それにしたところで多くの住民が広大な市内の彼方此方に分散して居住しているがために、購買活動等も散逸してしまうからに外ならない。

一方で気仙沼市は、非常に運が良いことに、人口の2割以上が中心部に集まっている。まだ決して多いと言える状況でないにしても、諦めるにはまだ早い状況と言える。欲を言えば、この割合が4割、5割と増えていくと良い(といっても気仙沼地域は防災面に課題があるため、いたずらに集められないネックがある)。

人口が集まっていると言っても気仙沼地域は広い

気仙沼市は気仙沼地域に人口が集まっている分、大きなポテンシャルを持っている。確かに少子高齢化・人口減少は大きな問題であるが、人口密度がある程度保たれている限り、立て直せる余地がある。とはいえ、気仙沼地域にしたところで決して狭いわけでない。寧ろ広い。

気仙沼地域※出典:Googleマップ

気仙沼地域は広いからこそ、商店街・商業地が複数存在している。大きく分ければ、上記地図のA・A2・B・Cである。加えてすぐ近くにD・Eが存在する。ちなみに対応するエリアは以下の通りである。

A:八日町商店街エリア
A2:内湾エリア
B:仲町周辺エリア
C:条南商店街エリア
D:ショッピングエリア
E:イオン気仙沼店

確かに気仙沼地域には1.3万人程度の人口が存在しているが、気仙沼地域が広いだけに、購買活動はそれぞれ分散する形にならざるを得ない。購買活動が自動車による移動を前提としていることを思えば、何も近くに行かずとも一関市や仙台市に出る選択肢も生じる。それはそれとしても、居住地の近くで購買活動をしようと思ったとして、気仙沼地域内だけを見ても、これだけ分散する余地がある。

つまり、それぞれの商店街・商業エリアを利用する可能性のある近所に住んでいる人々の数を考えたとき、気仙沼地域だからといって1.3万人の経済圏が存在するとは考えられない。精々、地域内を4分割した単純計算3,200人程度の経済圏くらいに考えた方が良いだろう。
※4分割の内訳は、A・A2近辺、B近辺、C近辺、D近辺である。

翻って言えば、それぞれの商店街・商業エリアは3,200人程度の規模の経済圏の恩恵を得られる可能性があるという話である。多いと見るか少ないと見るかは個々人によると思うが、動く可能性のある金を考えると、見方は少し変わると考える。

3,200人規模の経済圏は、仮に1人が1ヶ月に5,000円程度を使うと考えたとき、この規模の経済圏では1,600万円/月、1億9,200万円/年の金が動くことを意味する。1万円使ってもらえれば、その倍である。尚、これに観光客が使う金による金額が加わる。そう言われると、思ったより多額の金が動く可能性があると感じられる人は少なくないのでなかろうか。

気仙沼地域の商店街・商業エリアを再生できる余地はあるが、そのために必要な要素が複数ある

ここから先は

2,605字

¥ 300

皆様のサポートのお陰で運営を続けられております。今後もぜひサポートをいただけますようお願い申し上げます。