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息子に紡ぐ物語

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1男1女の子供を持つ平凡なサラリーマンと、父で作家の「長谷部さかな」は、不思議なキッカケから毎日メールをやりとりすることに。岡山県の山奥にある見渡す限りの土地や山々はどのように手…
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2021年12月の記事一覧

■【より道‐37】隠された歴史_大陸浪人と大東亜共栄圏

■【より道‐37】隠された歴史_大陸浪人と大東亜共栄圏

たしかに、自分が学んできた敗戦教育のなかで、ときおり「アジア人を開放する戦争だった」とか「大アジア主義」「大東亜共栄圏」という言葉を聞いたことがある。しかし、聞き流されるというか「日本が悪い事をしたから原爆を落とされた。戦争は悲惨だ」ということを強烈にすり込まれてきたので真に受けて学んだことがない。

友人の山根さんは、九州地方を中心に活動している方なので、福岡で会うたびに隠された歴史「玄洋社」や

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【111日目】仮説

【111日目】仮説

ご隠居からのメール:【仮説】

ファミリーヒストリーを書くには仮説をいくつかたてる必要があるが、その仮説には読者をある程度納得させるだけの確かな根拠が必要だ。確かだと思われる事実だけはおさえておきたい。

1)與一さんはヤケクソをおこすような人ではなかった。

2)昭和18年の再婚が、素さんの意向だったとは思えない。伊丹さんが公孝・貞女の結婚式の仲人を引き受けたように、単なる親戚付き合いの義理をは

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【110日目】論語

【110日目】論語

ご隠居からのメール:【論語】

論語の素読は意味もわからずただ音読を繰り返すという昔風のあらっぽい勉強方法で、文章のリズム感が身体にしみつく。そのせいか、明治時代の日本人の言語能力は高かった。昭和になってからでも、たとえば司馬遼太郎は父親から漢文の素読を習ったという。要するに習慣の問題だろうな。オレ自身も戦後の民主教育で、論語の素読なんかやっていない。日本は戦争で負け、文学でも負けたのだ。

與一

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【109日目】蚤と爆弾

【109日目】蚤と爆弾

ご隠居からのメール:【蚤と爆弾】

うーん、息子のぼんくら頭はすり抜けたが、孫の鋭い内部監査は危険な香りをかぎつけたか。あのマンガしか読まない若者がよくぞここまでの分析力を身につけたものだと感嘆する。

吉村昭の小説『蚤と爆弾』を読んだことはあるが、まさか蒙疆防疫處と結びつくとは思わなかった。いや、結びつく可能性があるだけで、まだ匂いがするだけ、確たる証拠は出ていないよね。蒙疆防疫處が獣医の秘密部

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■【より道‐36】知られざる亡国_幻の満州国③

■【より道‐36】知られざる亡国_幻の満州国③

満州国に関わる人たちを調べていくと、どんどんハマっていってしまう。満州国を紹介している本があれば、どの本にも掲載されている人ばかりだが、なんというか、当時の日本人が持っていた思想や、戦争の黒い分というか、裏の部分を客観的にみると、どんな背景があったのか想像してしまう。

少なからずとも、現代の我々の社会や生活を支えてくれている企業や文化を残した影響力のある人たちも多いので、時代というものは、自分た

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【108日目】蒙疆防疫處

【108日目】蒙疆防疫處

ご隠居からのメール:【蒙疆防疫處】

「方谷塾入門」の発行日が、孫娘の誕生日と一緒だといって、喜んでいるとはかわいいね。今はまだ難しいだろうが、そのうち読んでくれるかもしれないと思うと、発行してよかったと思う。

蒙疆防疫處に関する市川収氏の論文をざっと読ませてもらった。関係者の中に長谷部という姓はあるが、與一という名はない。しかし、「昭和十四年十月二十四日に大同を出発し、同日夕刻「綏遠」に到着し

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【107日目】性弱説

【107日目】性弱説

ご隠居からのメール:【性弱説】

「ご先祖様が秘密にしていたことをあばきだしてはいけない」といういましめについては、「尼子の落人」の続編を書こうとして、有栖川公園内の中央図書館で『神郷町史』から伝蔵さんのことを知ったとき、考えさせられたことだ。

神郷町長をつとめた家に『神郷町史』が残されていなかったのは伝蔵さんが許嫁の津弥さんをふりきって家出同然に出奔し、宗教家として成功した事実が、わが家の子孫

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【106日目】張家口

【106日目】張家口

ご隠居からのメール:【張家口】

張家口関連資の情報、ありがとう。早速浦安市図書館に以下の二冊をリクエストした。稲垣孝『日本人を守る最後の戦い』も探したが在庫がない。

『1945年八月十五日』にたぶん書いてあると思う。忘却の彼方だった張家口の記憶が少しはそれでよみがえるだろう。日本軍人はみんな在留邦人を見捨てて逃げたとオレも思っていたが、天皇陛下の命令にさからい、ソ連軍に抵抗して、在留邦人が引き

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■【より道‐35】知られざる亡国_幻の満州国②

■【より道‐35】知られざる亡国_幻の満州国②

満州国という存在を少しずつ学んでいくうちに、今度は、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがどういう生活をしていたのかということが気になってきた。父と毎日メールのやり取りがはじまってから、不思議なご縁でお祖母ちゃんが書いた手紙とめぐり会った。

そこには、1940年(昭和十五年)哈爾濱から日本に一時帰国した数ヶ月後に、新天地の大同・張家口で生活をしている様子が書いてあった。

張家口と哈爾濱では、随分場所が違

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【105日目】王道楽土

【105日目】王道楽土

ご隠居からのメール:【王道楽土】

中国・モンゴルの地図ありがとう。これを眺めると、北京と大同と張家口が三角形になっていて、モンゴルと接しているように見える。ハルビンは三角形からかなり遠く離れている。

二歳の頃の記憶はほとんどないが、三角形の一辺から一辺への移動は半日もかからないということ、大同も張家口も内蒙古ではなく、中国の市(河北省と山西省)と確認できてよかった。

満州国の理念は、八紘一宇

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【104日目】五族協和のワンダーランド

【104日目】五族協和のワンダーランド

ご隠居からのメール:【五族協和のワンダーランド】

日本人を頂点において、満州人、中国人、朝鮮人、蒙古人を下位におく協和が他の四族に納得してもらえる王道楽土のワンダーランドをほんとうに信じていたのだろうか。パワハラ(力による支配)では協和は得られないという意見を自由に発表できる現代日本のほうが王道楽土だよ。

『坂の上の雲』は上り坂の日本の明るさが描かれているが、『戦争と人間』は暗いね。その後は、

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【103日目】井上日召

【103日目】井上日召

ご隠居からのメール:【井上日召】

今朝は、パソコンの初期画面からOutlookの表示が消えた。他の手段で送信を試みることにしたが、はたしてうまくいくかどうかわからない。

弥左衛門さんの没年は大正四年だが、ゆき叔母さんは、大正十二年七月五日生まれだから、お互いに顔を知らない間柄だったようだね。ひいじいさんというのは、顔も知らないのがふつう。弥左衛門さんは依然として謎の人だ。

実の父親だって過去

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■【より道‐34】知られざる亡国_幻の満州国①

■【より道‐34】知られざる亡国_幻の満州国①

幼いころから、「父は満州で生まれた」と聞かされてきたけど正直ピンとこなかった。満州がどんなところかもわからないし、1939年(昭和十四年)がどのような時代だったかも想像がつかないからだ。

そのようなことを父に話したら、1970年(昭和四十五年)に日活が制作した「戦争と人間」の存在を教えてくれた。この戦争映画は1928年(昭和三年)の「張作霖爆殺事件」から1939年(昭和十四年)の「ノモンハン事件

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【102日目】攘夷

【102日目】攘夷

ご隠居からのメール:【攘夷】

元治元年といえば、友次郎さんと安次郎さんが生まれた年だが、京都では禁門の変、長州では馬関戦争と日本人が攘夷を叫んで大騒ぎになった年でもある。備中では山田方谷でさえ攘夷を主張していた。水戸では天狗党が決起して武田耕雲斎を押し立てたが、京都で孝明天皇を守護している徳川慶喜に捨てられた。(立場上、見捨てざるをえない)。

勝海舟など一部の開国論者だけは攘夷なんかできるわけ

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