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女性レプリカントの夢《Dream Diary 14》


xxxx年05月06日(x)


 未来都市の映像を背景に、二人の女性が横向きに並んで立っていた。「それではプロフィールを紹介しましょう」。あたかもテレビか映画のナレーションのような声が響き、その内の一人が回転して顔が正面映しになった。彼女は映画『ブレードランナー』に出て来た暗殺者の女性レプリカントだ。名前はゾーラ・サロメ。私は身の危険を感じ、もう一人の女性の顔を見たいと思った。たちまち回転して正面を向いた彼女の顔を見ると、慰安用レプリカントのダリル・ハンナだった。彼女は私に向かって不満そうに、「私はプリスよ」と言った。映画での役名はプリスだったからだ。私はダリル・ハンナが好きだったので、初めに実名が浮かんできたのだ。彼女がヒロインを演じた、『俺たちの明日』という青春映画が良かったから気に入ったんだけど、ダリル・ハンナは他の映画では大根女優と酷評されたんだっけ? 気が付いたら暗殺者のゾーラ・サロメが、三人目の女性レプリカントのレイチェルに変身していた。ハリソン・フォード演じるデッカード捜査官と恋に落ちる、美しい女性レプリカントだ。ショーン・ヤングが演じていたけど、その後の主演作で大根女優と酷評されたのは彼女の方だった。いや、ダリル・ハンナも映画『スプラッシュ』の人魚役で酷評されたんだったかな? みんなレプリカントだから演技がぎこちないのだ。「私はレプリカントなんかじゃないわよ」。声がしたので足元を見ると、地面に張り付いた新聞紙の第一面に、女性の顔写真がアップで印刷されていた。以前よく聴いたシンガーソングライター・ミユキナカジマの顔だった。確かに彼女はレプリカントじゃないけど、厚みの無い写真に過ぎないじゃないか。ハリソン・フォードのラスボスのレプリカントのバッティを演じるレプリカントのルトガー・ハウアーを演じるレプリカントの私は、まだ厚みがあるだけマシだ。しかし、この夢自体がテレビか映画仕立てだから、やっぱり私も厚みの無い画像に過ぎないのだった。しかも夢っすよ夢。




プリス(ダリル・ハンナ)
レイチェル(ショーン・ヤング)
バッティ(ルトガー・ハウアーのご冥福を祈ります)


 

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