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写真家 竹沢うるま
2020年3月19日 14:44
クック諸島滞在記No.11(番外編) 3月18日は僕にとって特別な日である。 10年前のこの日。僕は不安と期待をこれ以上ないぐらいに心の中に詰め込んで、テントと寝袋とカメラで重くなったバックパックを背負って日本から旅立った。息をするだけで口から不安が漏れ出しそうになるような状態の中、頭のなかで期待を膨らませ、なんとかその不安を胸の中に抑え込もうとしていた。 はじめは一年と思っていた旅は
2020年3月13日 13:45
クック諸島滞在記(番外編) No.10 いまさら改めて書くまでもないけれど、コロナの影響で行き先を失っている。3月4月に予定されていた撮影はすべてキャンセル。もともと海外撮影が主な仕事の僕は、コロナの影響をもろに受けた形である。ついでに、クック諸島は日本に対して早い段階から入国制限をしており、また飛行機の8割近くが減便となり、そう簡単には島にも戻れない。 多かれ少なかれ、そういう人は世
2020年2月13日 11:17
ラロトンガ島は、果てを意味する「ラロ」と、南を意味する「トンガ」からなる。なので、ラロトンガとは「南の果て」を意味する。 ラロトンガ島はポリネシアを構成する群島のなかでは最も南に位置する。この島に住む人々はかつて他の島々からカヌーに乗って来たと考えられており、この島は彼らが南へと航海を続け、その果てで見つけた島なのだろう。(余談だが、ポリネシア海域の北側には、北を意味するトケラウ群島、南側に
2020年2月3日 20:19
「名もなきフィジー人」 南太平洋に浮かぶ小さな島国で一年の半分近くを過ごしていると話すと、大抵の人は羨望の言葉や表情を浮かべる。でも大半の人たちの頭の中にはクック諸島の具体的な情報はほとんどなく、ただ単に南の島=楽園のイメージを思い描いているに過ぎないのだろうなぁと感じる事が多い。それもそのはずで、クック諸島という場所がこの世界に存在しているかどうかも、大半の人は知らず、「それは国?どこにある
2020年1月29日 19:14
「8ドルのココナッツ」 先日、8ドルのココナッツのことが島で噂になっていた。クック諸島はニュージーランドからやってくるツーリストたちのホリデーデスティネーションで、他の国ほどではないが、それでもいわゆる高級リゾートがいくつかある。 大抵はムリビーチエリアに集まっているのだが、そのうちのひとつのリゾートで、ココナッツが8ドルで売られていたのである。それを見かけた地元の人が撮影した写真が
2020年1月10日 06:19
「2020年はサイクロンとともに」 年が明けた。 ラロトンガ島で年を越すのはこれで3回目である。初めはこんなに長くいるつもりはなかったが、結局、これで島での滞在も4年目に入ることになる。 日本と違って、クック諸島の新年は淡々と過ぎていく。それよりも、クリスマスのほうが彼らにとっては大切な時間であり、ほとんどの会社や商店が休みになる。というか、誰も働きたがらないので、必然的にすべてのサー
2019年12月21日 10:23
「マウイとココナッツの物語」 ある朝、Cook Islands News(地元の新聞)を読んでいると、マンガイア島でココナッツの実が男の頭に落ちたというニュースが載っていた。 幸い男の命に別状はなかったが、マンガイア島は離島のために病院がなく精密検査ができなかった。検査のためにはラロトンガ島の病院に行くしかなく、男の奥さんは、この国の医療サービスはラロトンガ島に住んでなければ受けられな
2019年12月20日 09:20
「水平線の向こう側」 ラロトンガ島の北側に、ブラックロックと呼ばれる場所がある。 その名の通り、ゴツゴツとした黒い岩が海に向かって張り出しており、夕方にもなると子どもたちがこの岩の上から海に飛び込んでは遊んでいる。 僕は島で時間をつぶす時、この場所で過ごすことが多い。少し高台になっているためにリーフからその先に広がる水平線が見渡せる。その光景は空と海、そして水平線で構成されており、単純
2019年12月19日 07:22
「私は人間?? 鶏のピータの物語」 昨日の記事に鶏のピータが登場したが、ついでなので彼女のことを書いてみることにする。(全然、島のことを書いていなくてごめんなさい。次ぐらいから書こうかと。) ピータがこの家に来たのは、2年前ほどのことである。ニュージーランド在住の日本人のM氏がラロトンガ島を訪れていた際、滞在先の宿の軒先で親鳥のいない生まれたばかりの二匹のひよこを見つけたのが始まりである。
2019年12月18日 07:25
「寂しがり屋の黒猫たちの訪問」 昨晩、何度も夜中に目が覚めた。 ラロトンガ島は夜になると物音がほとんど無くなるので、深夜などは波の音がより大きく聞こえる。そのため、目を覚ますことが頻繁にある。そんなときは、波の音に耳を澄まし、睡眠と覚醒の間をたゆたうことにしている。 暗闇の中、ベッドの上でそうやって過ごしていると、まるで海に浮かんでいるかのような感覚が訪れる。その時間は島で過ごす時間の
2019年12月17日 09:46
「良き物語の始まりは、波の音とともに」 いま南太平洋に浮かぶ小さな島で、波の音を聞きながらこの文章を書いている。 海からの風に椰子の葉が乾いた音をたてて揺れ、その向こう側のリーフで白い波が砕けているのが見える。この数日は東からの貿易風が強く吹き、波は高く、音が低く響いている。鶏が鳴く声は絶え間なく聞こえ、時折、島民たちの陽気な笑い声が風に乗って流れてくる。 この島に住むようになってから