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国境の南、太陽の西

久々に村上春樹の本を読みました。
約10年くらい前、22.3歳くらいの頃に「ノルウェーの森」を読み、その空虚感に耐えられなくてずっと避けていたのですが、やはり現代文学として避けては通れない道だと思い手にしました。

相変わらず読み終わった後の空虚感はすごいです。
しかしなぜか充実した感じもします。
また、読んでいる途中の意識への訴え方はとても強く感じます。

個人的に思うのですが、村上春樹の本は読

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錯乱のニューヨーク

現在世界的な建築家の一人である、レム・コールハースの最初の著書で、磯崎新をして「この書をよまずして、現代建築を語るなかれ」と言わしめた一冊。

タイトル通りニューヨーク、それもマンハッタンに限り物語は続いていき、短い文章の集合体として全体を構成している。
それらは複雑に絡み合い、次々と定義される言葉は最後まで物語の奥深くで意味を持っている。

マンハッタンのみを舞台にしているが、主題はマンハッタン

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男の生活の愉しみ

建築家宮脇檀によるエッセイ集。
小難しい建築の話は一切無く、食べ物・料理・いす・ホテルなどの話を軽快に綴っている。

男でも料理が出来ることが必要で、道具の準備から作り方、気構えまでを書いたりしている。

宮脇氏の本はどれもそうだが、文体がとても読みやすくすらすらと読める。
また、ほとんどの本が建築の専門知識が無くても読むことができる。(まあ、専門的なエッセイ本はほとんど書いていないが)
専門書で

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田中一光自伝 われらデザインの時代

2002年に亡くなった日本を代表するグラフィックデザイナーである田中一光の自伝。
無印良品の企業イメージや西武デパートの企業イメージ、Loftのロゴ作成をした人と言った方がピンと来る人が多いかもしれない。

自伝なので全体的に淡々と書かれているが、逆に変な考え方が入っていないので田中一光という人を知るには丁度良い一冊。
現在のグラフィックアートをする人は、少なからず影響を受けていると思うので、それ

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空間の行間

建築家磯崎新と文学教授福田和也との対談集。
テーマとなる歴史的建物を決め、それに対応する文学を選び、その間に浮かび上がるさまざまな事を話していく、という形式で進んでいく。
例を挙げれば「伊勢神宮」と「古事記伝」を選び、その成り立ち、内容、思想はもちろんの事、それから派生する哲学や現代への影響など多岐に渡って対談されている。

正直言って内容が自分には難しすぎたために、半分くらいしか理解できませんで

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蟹工船・党生活者

プロレタリア文学の代表的な作品でカムチャッカ沖で蟹漁をする労働者の現状と権利を勝ち取る様が描かれている。
プロレタリア文学と言うと左翼・共産党のイメージだが、この本はもちろんその類である。
しかし書かれた当時では思想的判断をした上で読まなければならなかったかも知れないが、現代では歴史を知る上での読み物として読むことができる。

自分としては表題の「蟹工船」よりもう一つの短編の「党生活者」の方がリア

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磯崎新の仕事術

この本は磯崎氏がそれまでに雑誌や海外の本で発表した文章をまとめたものです。
氏の発表した文章の数から考えたら本当にその一部ですが、それでもスケッチ集や建築に対する考え方、スケジュールの考え方などが載っているので面白いです。

特に世界中を飛び回って仕事をしているので、スケジュール管理などは大変だろうなと思っていたのですが、自分で管理をせずに秘書に任せていて、手帳すら持っていないと言うのは興味深かっ

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キレる大人はなぜ増えた

著者の香山リカさんは元々友人から聞いていて気になっていました。
たまたま古本屋で見かけて、内容も個人的に気になっている事が書いてあったので手に取ってみました。

著書が沢山あるだけあって、文章が読みやすいです。
専門用語を出来るだけ使わず、具体例を挙げて説明してあります。

内容はタイトルの通り、なぜキレる大人が増えたのか?それについて精神科医として考えているのですが、基本的には病気では無く、育ち

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ソフィーの世界

だいぶ前にベストセラーになりました「ソフィーの世界」、遅ればせながら読みました。
日本人には馴染みの薄い哲学について物語り形式で、順を追って書かれています。
途中説明くさい部分もありますが、物語という筋道が有るので全体的には読みやすいです。

哲学や宗教というのは日本人に馴染みが薄く、敬遠されるものだと思いますが、一歩入ってしまえば単なる考え方の一つとして捕らえることが出来ると思います。
日本人に

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アダルト・チルドレンと家族

精神科医である斉藤学氏の本で、氏は「アダルトチルドレン」という用語の名付け親でもある。
しかしアダルトチルドレンという用語が誤解されて利用されるようになり、氏はアダルトチルドレンという用語を使わなくなった。

機能不全家族で育ち、内向的トラウマを持っていると自覚する人には是非読んでもらいたい本であり、また、自分がそうで無いと思っていても、精神というものに興味が有る人は是非読んだほうが良いと思う。

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陰翳礼讃 / 谷崎潤一郎

建築をやる者、デザインをやる者、照明をやる者…みながこの本を読まなければならないと言われている谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」です。

日本独自が持つ「闇」について書かれたもので、日本古来から伝わる光、化粧、間、あらゆるものが闇を基本として成り立っていると。
それが「侘び寂」へと続いていく。

確かに建築をやる者として重要な事は色々書いてあります。
しかし本当に重要なのはその背後全体に流れる空気をいかに捕

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磯崎新の「都庁」-戦後日本最大のコンペ- / 平松剛

現在新宿西口に建てられている東京都庁、設計者は日本建築界のドンである丹下健三であるが、それはコンペによって決定された。
この本では敗れた磯崎新の立場からのコンペ案決定までの状況や日本建築界の歴史、磯崎新の生い立ちなどをうまくミックスさせて書き上げている。

コンペが開催されたのが1985年、自分はこの時まだ中学生であり、建築に興味があってもコンペなどはその存在も知りませんでした。
学生になり、社会

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梟の城/司馬遼太郎

司馬遼太郎が書いた最初の長編小説で有り、第42回直木賞受賞作。
秀吉時代(第2次朝鮮出兵頃)の忍者を扱った作品。忍者小説の代表作。

描写はSF的なものではなく殆どが心理戦的なものになっている。流石に少しは現実離れしている部分は有るがそれも気にならない程度なので、一般的な歴史小説として読むことが出来る。

忍者として敵と戦う肉弾戦と心理戦、人間としての心理戦、自分との葛藤がバランスよく配されていて

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ディテール新建築001/集合住宅

新建築からの季節増刊誌。

集合住宅に焦点を当て、その設計思考をディテール・構造設備との関連など具体的部分を通してインタビュー形式で掘り下げる内容となっている。

掲載されているのは

・乾久美子
・西沢立衛
・北典夫(KAJIMA DESIGN)
・千葉学
・谷内田章夫
・篠原聡子
・川辺直哉
・菊池宏
の8名(掲載順)

良く掲載されている基本設計時のコンセプトワークとか配置計画などの話しでは

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