梟の城/司馬遼太郎

司馬遼太郎が書いた最初の長編小説で有り、第42回直木賞受賞作。
秀吉時代(第2次朝鮮出兵頃)の忍者を扱った作品。忍者小説の代表作。

描写はSF的なものではなく殆どが心理戦的なものになっている。流石に少しは現実離れしている部分は有るがそれも気にならない程度なので、一般的な歴史小説として読むことが出来る。

忍者として敵と戦う肉弾戦と心理戦、人間としての心理戦、自分との葛藤がバランスよく配されていて本全体はもちろん、単元毎にもまとまりが有り飽きが来ない。このあたりは短編小説から書き始めた司馬氏が長編を書くに当たって、ある程度のまとまりを繋げていったのだろうと推測できる。その為中心となる人物や場面が結構変わるのに対しても無理が無くまとまり、むしろ冗長にならず小気味良くなっている。

初期の作品だからか、または人の心理の虚を突くことがまず第一の忍者を扱っているので会話より心理描写が多くなるためか、司馬作品に言われる「説明臭さ」「話をまとめ切れていない」は感じず、頭の中で絵をイメージしやすい作品になっている。
(しかしこれを原作とした映画の評判はあまり宜しくない。監督の問題か?)

ページ数が結構多いので読みなれていない人は最初尻込みするかも知れないが、前途のように読みやすいので苦にはならない。むしろすぐに終わらずに長く楽しめる。

歴史小説だが特別に歴史の知識が無くても読めるので、これからこのジャンルに入っていこうという人にもお勧め。
(元投稿:2008.4.8)

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