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2024年1月28日 「脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき」の感想

脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき
著:毛内拡
ブルーバックス
をAudibleで読みましたので、その感想です。

Audibleの口コミは割とアテになる


さて今回は、Audibleで聞いた本の感想です。
今回はいつもの英国推理小説から離れて、科学の本を選びました。
好きな本ばかり読んでいては発展性がないのではないかという疑念があり、
定期的に科学系の本、ノンフィクションを読むべきだという思いが湧いてきます。
しかし、決して得意な分野ではないので
できるだけわかりやすく、そして面白い本を選ぶ必要があります。
Audibleは口コミの情報は正確である印象です。
時折、いちゃもんに近い口コミもないことはないのですが
口コミをいくつか読めば、どれが真実かは何となくわかります。
そのため、わりと簡単に
内容もよく、読み手も素晴らしい作品に出会うことができるのです。
今作も、そうして口コミから選びました。
今回も、口コミは「正しかった」と言えるでしょう。
とても良質な本です。
非常に面白かったので、書籍の方も購入しようかと考えるほどでした。

頭がいい人は構成が上手い


編集者の力もあると思うのですが、この本は構成が非常に素晴らしい本です。
プロローグ、1章から6章、エピローグで構成されています。
基礎的な知識を語る章から始まり、最近の研究の動向が紹介され、
著者の研究についての説明、今後の展望が語られます。
一本筋が通っていて、混乱することなく最後まで読める構成は「お見事!」の一言です。
章ごとはもちろんのこと、その中に収められている小さな章すべてにも、わかりやすいタイトルがついており、
タイトルで何の話をしている章なのか、すぐにわかります。
数字ではないので、 Audibleでも、気になる章から選んで聞き直しがしやすいです。
科学の本で聞き直しをしたのは、この本が初めてです。
また、大きな章の終わりには、
「第◯章のまとめ」として、章を振り返り、まとめる文章があります。
このまとめが、非常にわかりやすいです。
「そうかそうか、こういう話だったね」と確認ができるのはありがたいです。
優秀な科学者はわかりやすく書けるのだと感心しました。

誠実に語ろうとする姿勢


ブルーバックスの本であるということもあり、
若い学生に読んでもらうことを想定しているのか、
各用語についても平気な言葉で丁寧な説明があります。
その上、言及しにくい点、まだわからない点についても誤魔化すことなく丁寧に書いてあるところにも好感が持てます。
例えば、動物実験の倫理についてのコラムがあったり、
最新の研究について書いた後、その研究には異論がでて未だ議論がなされているとか、
完全に鵜呑みにするのは危険な場合があり、
その研究についての情報を目にした場合には、とある条件を確認する必要があることなどがしっかり指摘されているのです。
また一般庶民が飛びつきやすいTMSという治療法についても、
避けることなく扱った上で
個人的な医療行為としてはまだ完全にメカニズムが解明されていないので慎重にあつかうべきという
著者自身の意見もしっかり書いておられます。
エピローグにはどうして本書を書くことになったかの経緯が書かれていますが、
「若い人に研究を紹介していく」「専門家以外にも研究を伝える必要がある」という
熱い想いがあるゆえの誠実な姿勢がよいと感じました。

科学的思考を育てる本


「脳のはたらきにはニューロン以外の脳も大きく関係し、
特に人間らしい行動には特にニューロン以外の脳(アストロサイトなど)が関係する可能性が高い」
本書の内容を一文で示すとすると
こうなるのですが、この文章を理解するためには
基礎的な脳の知識、脳内物質の知識、これまでの研究の流れなどを知る必要があり、
この本の大部分がそのためにあったことがわかります。
知識の積み重ねの上に、ようやく研究があり、そして、新しい理論が出てくるのだいうことを体験できます。
ですから、この感想を読んでご興味を持たれた方は、本書を読んだほうがよろしいのです。
トンデモ科学が劇的なのに比べると、実際の科学は地道です。
一足飛びに結論には辿り着きません。そういった科学的マインドを身につけるためにも読むべき本だと思います。
読み手もよかった
読み手は、ハキハキとしながら品の良い青年のようなお声でした。
毛内先生の文章のわかりやすさにマッチしています。優しく語りかけるタイプの文章でもあるので、「ものすごく声が良い科学者」から個人授業を受けているような気分になれます。
贅沢ですね。

科学者も協力、発信する時代


また、印象的だったのは、現代の研究では、1人の研究者、ひとつの研究室で研究は完結することがなく、それぞれ得意な分野を持ち寄って協力するということです。これ、数十年前はなかなか難しい研究のあり方だったのではないでしょうか。新しい時代がもうきているのだなぁと実感しました。
また、著者の毛内先生後書きでご自身の研究室のSNSや YouTube動画を紹介するのも、今の時代だなぁと思います。研究者も研究だけでなく、発信をする時代なのです!
専門外の一般の人にも届くようにしていくことで、全体的な科学リテラシーをあげ、そしてさらに良い研究者、良い研究環境ができていくという流れになればいいなと思います。


やはり時には科学系の本も読んだ方が視野が広がりますね。
ただし、理解するのは倍くらいの時間がかかりますので、その辺りは心せねばなりません。
でも、それだけの価値はあると思います。

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