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「風景」 時間泥棒を追って(2)

「駆け込まないでください!」「少しでも空いているドアへおまわりください!!」「無理なご乗車はお止めください!!!」

── 毎朝繰り返される風景。事故や確認で、電車が長時間止まると、必ずホームや改札で見られる風景もある。

『どうしてくれるんだ!』「○○線で○○駅でお乗り換えください。」『責任をとれ!!!』

── その口論を横目に、多くの人が改札を足早に抜けていく。急いでいるのなら、そんなところで過失のない駅員さんを責めてないで、早く歩いた方がいい。大体、過ぎてしまった時間に誰がどう責任など取れるわけも無かろうに。

会社へ着けば、『まいったよぉ』と、遅刻の理由が必要で大袈裟に話をするのだろう。そして遅延証明書がなければ、同じ遅刻でも正当性はなくなる。

同じような服を着た、朝から汗をかいた男女が箱詰めになって。毎朝、毎夕、同じ風景。私が東京に住んでいる数十年。その間で、引越しも何度かしている。しかし、この光景は、どの駅でも見た光景だ。

そう、どこでも見れるということは、もはや光景ではなくて、風景なのだ。ごく自然的な、人間という生物の日本種の都市部に生息する生物の、ごくごく一般的な性質なのである。そして数十年の時間を経ても、この生物のこの習性には、未だ進化は見られない。

序文でお話したとおり、私はまだ「モモ」を読んでいない。しかし、“そのまま”で解釈するのなら、この動く箱に詰められた黒いビジネススーツの紳士淑女こそが、“時間泥棒”なのか。または、時間泥棒に狙われた者達ということになるだろう。

20090415 23:57



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