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思い付く限りの欲を全て架空の人生に当て嵌めて、眺めながら自らのはしたなさやまずしさを愉しむ遊び
お前に味噌汁をぶっかけてやる。 俺は今手の中に持っているお椀の中で平和にワカメを漂わせているこの味噌の汁をお前にぶっかけてやる。 お湯に何かを溶かすと汁になる。俺は味噌をといたこの汁をお前にぶっかけてやるつもりだ。 味噌汁は絶対に、お前が嫌いだと言った赤出汁の味噌汁じゃないと許しはしない。 赤出汁の味噌汁をお前の頭の上でひっくり返してやる。 日頃から女に嫌われ、「キモいおっさん」扱いされているくせに、 憂さ晴らしをするように俺にばかり文句を言うお前に味噌汁をぶっかけてや
僕が、自らのおかしな性的趣味に気がついたのは子供の頃だった。 僕は一人っ子で、その頃は両親とともに3人で暮らしていた。 専業主婦の母はとても優しく、会社員の父の稼ぎはよく、周囲からは羨ましがられるくらいに何不自由なく生活できていた。 だが、父は極度に酒癖が悪く、酔うと母に容赦無く手を挙げる鬼と化す。 度々飲み会などで遅くなる日は母が僕をさっさと寝かせ、酔った父親のストレス発散の標的となっていた。 とはいえ父は、僕には暴力を振るわなかったし、母への暴力を僕に
高校の頃、デザイン科に通っていた私は、年に一回の学科の行事で芸術鑑賞というのがあり、様々な美術館へ連れていかれた。 好きでもない作家の剥き出しの精神を見るということに、当時は全く興味はなかったのだが、それでも一応参加していた高校3年間の中で、いちばん記憶に残っているのが「貴婦人と一角獣」というタペストリーだった。 タペストリーというのだから絵ではなく、糸で織られた大きな布だ。 それであれほど繊細且つ大きな作品が織れるのだなというのが衝撃だったのもあり、 また一角獣が処女
「お願い、 どうしても私は美しい子供を産みたいの! いいえ、他の人を好きになったりなんか していないわ。 貴方のことはとても好きよ。 結婚したいって心から思ってる。 でもね、子供だけは、 私の子供だけは美しく産んであげたいの。 貴方が今までしてきたような、容姿にまつわる苦労を、我が子にはさせたくないのよ。 だからお願い貴方、 許して、 貴方以外の優秀な遺伝子を私が受精することを、 どうか許して、、」
僕のカメラのシャッター音は、僕が君に触れる音である。 現実では到底さわることのできない君にも、写真を撮る瞬間だけは少しさわれるのだ。 僕のカメラのレンズは、君に触りたい僕の欲求のフィルターである。 直接は見せられない僕の恥ずべき欲求が、このレンズの中で何度も濾されて写真となるのだ。 僕がカメラを持つこの手は、理論上もう君に触れている。 撮られたい君の欲求は事実、自覚し得ない地点で、僕にさわられたいと感じているのだから。
見てはいけないものを見た。 という意識は、恥ずかしがっている彼女の姿とともにずっと脳にこびりついてしまった。 どうにも発散できないような熱い液体みたいなものが、お腹のあたりで留まっていく感じがする。 顔が、見たい。 ゆっくりと彼女の方へと身体を向けた。彼女の顔をみるということは、私の顔も見られてしまうという事だった。 私は絶対に、ぜったいに今、淫らな顔をしているに決まっているのに。 そんなことよりも、もっと、彼女が今どんな顔で私に擦り寄ってきたのか、確
私は犬を飼っている。 その犬は今、私の荷物を両手に全て持って、後ろをついて廻っている。 私の痛いや辛いに、過剰に反応しては心配をする様に舐め、 私の冷たい言動には全身全霊で落ち込む。 こいつはきっと私が手放そうとしても、決して離れようとはしないで居るだろう。 どんな形でも縋りつこうとするだろうし、諦めないと思う。 こんな生産性のない関係は、以前の私なら、どうしただろうか。 きっと相手がどう感じようが関係ないと、潔く絶っただろうか。 結局こうして繋がりを生かして置
「お久しぶり。」 背後から気色の悪い声に肩を叩かれました。 こういう時の嫌な予感はもはや予感の範疇を超えて逃れられぬ現実となります。 振り向けばそこには、一度見れば絶対忘れないほどに醜悪な男。幼馴染の男でした。 女は思わず歪みそうになる顔を真顔に保つのに必死です。男はそんな黙ったままの女にジメッとした分厚い手を差し出してきました。 まぁ、ただの挨拶にわざわざ握手を求める奴があるでしょうか。その見た目で、図々しい。 女は握手をするなど死ぬほど嫌ではありましたが、どうしても
日当たりの良い部屋のテーブルに、果実を置いたままにしている。果実というのは水分が多く、常温でも少しひんやりとしているからだ。 人肌に最も近づけるためには、この方法が一番良いのである。 太陽光にさらしておくと、果実は次第に傷みはじめるだろう。ぱつぱつと張りのあった表面は柔らかくなり、重力に従って爛れていこうとする。締りのなくなった表皮は中の水分を留めきれず、机には果実の汁が染み、周囲にはかなりきつい匂いを撒き散らす。まともに嗅ぐと、鼻の粘膜が突き刺されるほど痛く甘い匂いだ
「あのこは病気だからみんなと一緒にマラソンできません」 小学5年生。 もう周りの目が優しく見えなくなり初めて、少し経っていた。 はっきりとはまだ分かっていなかったにしても、何となく1人で生きていくのだな。というのを自覚し始めていた気がする。 みんながやりたくないことを、やらないでいい理由。 みんなと一緒になれないことの、言い訳。 いつの間にか都合の良い使い方をしてた。 生まれてからずっと付き纏う。 何もなく正常に生まれてきた人達とはその瞬間、生
「君が好き好き言って毎日のように性的接触をしているその彼氏、つまり愛する私の息子は、ある意味私なのだ。 なぜなら、第一に同じ血が流れている。同じ遺伝子を持っている。だから、息子は顔も体格も若い頃の私にそっくりだ。ともすれば私は息子の25年後の姿ということになる。 事実、君は私の息子と結婚したいなどと言っていたのだから、25年後の息子と、先に1度交合っておいても別に問題は無いんじゃないか?」
僕に周りの目を気にするなとは言わせない。なぜなら気にした結果がその選択だったんだろ、君が浮遊してる数センチの隙間に挟まれて殺されそうになる、まだ正しいやまちがっているなどの判断難しく咎められない世界線に到達してない事項は、まるで好意が罪かのような酸素を吸って生かしているのだから、それを愉しむだけの余裕と猶予をもう少し美味しそうに喰えばいいのだ。自信ない人間ほどよく吠える理論に則って、僕もまた余計に吠えるだけの機関である。 罪にしたのは僕たちの積み上げてきた全ての過去の愚かなせ
僕の中に綾なす色とりどりの欲情がいつも少女に向かうと言う事を、罪だという名前にしたのは誰だろうか。 少女たちは僕と言う侮蔑すべき劣情の持ち主に対しても等しく優しいので、きっと僕の味方です。 白く、すぐに壊れてしまいそうな少女と言う容れ物に対する恋だろうか。それとも、少女の時期にだけ見られる成長への抵抗や美醜への囚われ、性の興味、好奇心などが折り重なって少女の内部に巣食った僅かな罪悪の方だろうか。 後者であれば、僕は僕の劣情よりもひどい罪悪にきっと救いを求めていて、でもそんな罪
少女と出会うのはもう何度目か知れない。 今流行りの、多様化したアイドル界の中で今日を生きているその子はグループの中でも少し浮いていて、それは、一番人気があるだとか、一際目立っているとかいう訳ではなく、ただ一番何にもできなかった。 歌も上手くない、ダンスもトークもゆるくて独特な空気を出している。 そんな反面、同じ匂いのする人にだけはわかる様な闇のオーラ、ネガティヴで腐敗した感じが滲み出ていて、それは言わば少女だけが一番に人間であることを示した。 初めて見た時から目に付いていた、
「人が死ぬ小説が嫌いなんだ。」 本屋でふと後ろを通りかかった2人組の1人がそう漏らしていたのを度々思い出す。 ちなみにそれを言ったのは男で、もう1人は女だった。男女の、2人組。 男は女にその言葉から何を伝えたかったのか知らないが、女の方はその言葉にまるでピンと来ていないようで、へぇ、と相槌を打っていただけであった。 人が死ぬ小説がきらいでさ、推理小説とか、ああいうの、絶対人助けられない感じが、なんかもやもやする。というか、許せなくて、それで読まないことにしてるんだよね