僕の正義

「人が死ぬ小説が嫌いなんだ。」

本屋でふと後ろを通りかかった2人組の1人がそう漏らしていたのを度々思い出す。

ちなみにそれを言ったのは男で、もう1人は女だった。男女の、2人組。

男は女にその言葉から何を伝えたかったのか知らないが、女の方はその言葉にまるでピンと来ていないようで、へぇ、と相槌を打っていただけであった。

人が死ぬ小説がきらいでさ、推理小説とか、ああいうの、絶対人助けられない感じが、なんかもやもやする。というか、許せなくて、それで読まないことにしてるんだよね。

人はそれぞれの正義を飼っていて、人を救えない小説が嫌いだと言った彼からすれば、きっと死なないことが正しくて、正義。

物凄く子供だ。と思った。

だってこれは、まさしく幼少の頃の仮面ライダーやなんとかレンジャーの影響なんじゃないか。

悪は罰せられるべきで、曖昧は許されない。悪者は悪そうな色をしていて、正義は格好良くて、そして最後は絶対正義が勝つんだ。みたいな。

だから、意味もなく死んでいく生命が許せないのか。

人が死なないことこそが、平和。??

公共の場で微温い正義感を披露してくれる行動も、それにより暴かれる彼の精神的年齢も、全てはピンと来ていない彼女により救われている、現実。

彼は、彼の正義は、
本当のヒーローが彼女だということにはまだまだ気づかないのだろう。

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