味噌汁レンジャー

お前に味噌汁をぶっかけてやる。


俺は今手の中に持っているお椀の中で平和にワカメを漂わせているこの味噌の汁をお前にぶっかけてやる。
お湯に何かを溶かすと汁になる。俺は味噌をといたこの汁をお前にぶっかけてやるつもりだ。

味噌汁は絶対に、お前が嫌いだと言った赤出汁の味噌汁じゃないと許しはしない。
赤出汁の味噌汁をお前の頭の上でひっくり返してやる。


日頃から女に嫌われ、「キモいおっさん」扱いされているくせに、
憂さ晴らしをするように俺にばかり文句を言うお前に味噌汁をぶっかけてやる。
そんな歳になっても仕事ができないくせに、歳を重ねただけのくせに、
俺のことを自分より下等だと偉そうに威張るお前に味噌汁をぶっかけるんだ。


満員電車で少し触れ合っただけの女に期待して跡をつけていたことを俺は知っている。
エスカレーターで別の課の若い女のスカートの中を盗撮していたことを俺は知っている。

気に入った女がトイレに立ったら帰ってくるまでの時間を時計で確認したり、
女が捨てた紙コップについてある口紅の跡を見てニヤニヤしたり、
仕事をせずに女の胸元ばかりみていることも知っているんだからな。



味噌汁を、ぶっかけてやる。



話すとき毎回つばを撒き散らすお前に俺は味噌汁をぶっかけてやる。

貧乏ゆすりをいつまでもやめないお前に俺は味噌汁をぶっかけてやる。

俺の手の中でだんだんと冷えてきたこんな味噌汁じゃなくて、できたての美味しい味噌汁を勢いよくお前にぶっかけてやる。



俺がお前に味噌汁をぶっかけることは、世間的に暴力だと定義されるだろうか。
でも、安心しろ、味噌汁はお前を殺さない。むしろ健康的なものだ。だから味噌汁をぶっかけてやる。

俺がお前を許さない理由をもっとたくさん書いたら、
世間はお前を、味噌汁をかけられて然るべき存在だと納得するだろうか。
恐らく納得するだろう。だから俺は、お前に味噌汁をぶっかけてやる。



正義は悪を退治するべきだと昔からそう決まっている。

誰がお前を許しても、俺はお前を許しはしない。

俺はお前に味噌汁をぶっかけてやるんだ。

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