執着

少女と出会うのはもう何度目か知れない。
今流行りの、多様化したアイドル界の中で今日を生きているその子はグループの中でも少し浮いていて、それは、一番人気があるだとか、一際目立っているとかいう訳ではなく、ただ一番何にもできなかった。
歌も上手くない、ダンスもトークもゆるくて独特な空気を出している。
そんな反面、同じ匂いのする人にだけはわかる様な闇のオーラ、ネガティヴで腐敗した感じが滲み出ていて、それは言わば少女だけが一番に人間であることを示した。
初めて見た時から目に付いていた、メンバーカラーの白色。
それなのにグレーっぽい衣装を着せられていること。
それでも、これはグレーじゃなく、白だ。と主張せざるを得ない、ほかの色の衣装との辻褄合わせ。
白よりグレーの似合ってしまう残念な少女を見て、僕は絶対にこの少女を幸せにすると決めた。

中央に立つピンク色から段々と外側に行くにつれて可愛くなくなっていく色の、最終着地点として少女はいた。
歌の中で前後左右する色たち。
中央の色も順番に変わる中で、あの辻褄合わせのグレーが中央に来ることは、とうとう最後まで無いままだった。


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