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uniba.jpリニューアル秘話 :vol.3 ユニバ株式会社 菊地玄摩さん&森淳さん インタビュー。「"Embodied Virtuality"ユニバが描く今と未来」(後編)

ユニバ株式会社(以下ユニバ)はコーポレートサイトuniba.jpを2022年5月末にリニューアルしました。
以前の記事、「日本一奇天烈なカオス会社 『ユニバ株式会社』に迫る」でもご紹介した弊社のコーポレートサイトは2022年の今、どのような経緯でリニューアルに至ったのか。サイト作成に関わった人物にインタビューを行いその背景に迫ります。
まだアクセスされていない方!まずは新しいuniba.jpを是非ご覧ください。

さて、前編に引き続き、内で今回のリニューアルを企画した代表の菊地玄摩さんと実装を担当されたエンジニアの森淳(以下MJ)さんのインタビューをお届けします。 後編では、Enbodied Virtualityについての考えや最近の関心ごとなどについてお話を伺っています。

ウェブへの思い

ー菊地さんにとって、ユニバが掲げる「Enbodied Virtuality」と「さわれるインターネット」には、どのようなニュアンスの違いがあるのでしょうか


菊地:
ユニバで少し変なものができた時に「これヤバイよね」みたいに喜ぶような感覚があります。それって「見慣れないけど、ある秩序を持って動いているように見える」だとか「"あっち"の世界に通じている」みたいな感覚なんだと思うのですが、それは「リアル世界じゃないもうひとつの世界」についての想像力(Virtuality)の働きだと思っていて、何か形としてつくること(Embody)を通して、その感覚にアクセスしていると思います。そこに通じるためにはディスプレイやタッチやキーボードを介するしかないのですが、「画面の中のこと」になってしまうとつまらない。ユニバはもっと"あっち"の世界を感じながらそれらを感じられるようなものを作る、作ろうとしています。でないと技術に踊らされてしまう。新しい技術や機材は新しいからすごいのではなく、どう使うかというときに今話したようなことを考えておかないと、仏教世界を信じていない仏師のようになってしまうと思います。背後の世界を表現しているから仏像として価値があるのであって、バーチャリティのないプログラミングってただの画面の光でしかない。というようなイメージです。
世界の広がりが「インターネット」だと狭く、「さわれる」というと作る側の難しさが飛んでしまう気がするのですが、Enbodiedはそれが一瞬奇跡のように具現化する感じがして自分は好きなんです。

ーMJさんは、リニューアル後のuniba.jpについてどのような思いがありますか?


MJ:阿部さんと木村さんが今回の改修で以前のゴテっとした印象から、チームの特色を生かしたクリーンなサイトになりました。この変化はユニバという会社の変化と同じです。前は自由な雰囲気と言いつつごちゃごちゃとした組織でした。その良さは生かしつつも、チーム制を導入しいろんな方向に向かって行けるという状態になろうとチャレンジしています。その意気込みがきちんと表現されているなという意味ですごくポジティブな印象を受けます。一方で、広報のウェブサイトの立ち位置として、uniba.jp が背負う部分があります。谷口さんとか阿部さんと木村さんが作ってくれた作品に対してうまく折り合いをつけながら、世の中のもっといろんな人に伝えていかなきゃいけないなという責任を僕は感じたりします。素晴らしいサイトができたので託された側の責任ですね。
後は、僕はおっさんだからあのサイトを見られるんだけど、若者ってあのサイトを見た時にどう思うんだろうなっていうのはありますよね笑
WEBって当たり前ですが誰でもアクセスできるので、リアクションを僕らは等しく吸収して「あ〜こういう反応なんだね」と捉えていくことをしていかないとなと思っています。その行為が楽しみでもあります。

リニューアル後のuniba.jpトップページ


昔のちょっとした時代にFLASHを使ったサイトが流行りましたよね。その時代には所謂”アーティスト”がウェブ会社で活動していたと思うんです。ユニバの中にもそういう側面を持った人はいました。そこから今はアーティストが映像の世界とかに行くようになりましたよね。今回のサイトでは、Unityって形で自分たちの世界を落としこんでああいう表現にした。ああいうことを谷口さんがやってくれたのはすごい良いことだなと思っています。まだまだネットに期待を持ってもらえる、表現の場としてポテンシャルを感じてもらえるとすごくいいなと思っているし、ユニバはそれを良しとしている会社だと思ってるので、そう感じる人達が集まってくれると嬉しいなと期待しています。

ーウェブ会社にアーティストがいたところから、専門分野的なところに移動していった背景にはなにがあったと思われますか?

MJ:あくまで個人の感想ですが、ツールが進化して、WEB のプログラミングでの表現がインタラクションの窓口だったところから、インスタレーションとか、ゲームとか映像での表現の方が、クオリティを突き詰めれる時代になったんだと思います。
商業的にな話を言えば、WEB のようなギミックがなくても、エンタメとしては Tiktok とか Youtube とか、それだけでマーケティングが成立するようになってきたというのもあると思います。ニーズがあるところにアーティストやクリエイターが向かってくのは当然だと思います。
今後のウェブの世界とアートの世界のつながりはどうなるのか、というのは最近よく話したりします。Z1 チームもアーティスト活動をする人たちをリスペクトしています。ウェブ会社として、何を思ってチームの人たちを育てていく、成長していくっていうのをすごく考えさせられます。だから谷口さんや阿部さん、木村さんの作品を見た時にはすごくポジティブな気持ちが生まれました。こういう人たちがいるんだからって。

ー新しいuniba.jpをどういう方々に届けたいですか?


菊地:
ユニバのようにものづくりに取り組んだり面白がって作っている人がいると思います。例えばmacを手に入れて何を作ろうかワクワクしている人はたくさんいる。そういう人に届いて欲しいです、仲間になりたいので。そういう姿勢で取り組んでいる人とはビジネスになるかもと思えるし、一緒にプロジェクトを作っていきたいと思っています。

MJ:若い人に見ていただいて感想を送ってほしいですね。10代、20代とか。谷口さんは対象にしてるのかな。30代くらいだったら全然理解できる、って言ったら失礼なんですけど、(自分は)なるほどね面白いなみたいな見方をしてます。10代20代から見られた時に新人類みたいに「なにこれめっちゃ新しいじゃん!」みたいな見られ方をしたら面白いなぁ。谷口さんの作品で勝手にはしゃいでもいけないんですが笑。
ウェブじゃないところで働いてる人が、作品を見た時にどう思うかってことですよね。ウェブでの表現が盛んだった時を僕らは見てたからあれに対する思いとかが分かる部分があると思うんです。今はYouTubeを見れないとすごいイライラするし、検索の仕方とか、コミュニケーションのやり取りなんて全く違うと思うんです。そういう時代であの作品を見た時にどう思うのかなってのは考えます。その子たちにとっては多分、新しい何かだと思うんだよね。そういう人たちに届けるためのレールを敷いていくことが僕らの仕事なのかなと思います。

リニューアル後のuniba.jp


関心ごとについて

ーおふたりの最近の関心ごとを教えてください


MJ:
一緒に働く人がどういう人か、どういう応援の仕方をしていったら良いのかっていうところが一番関心があります。自分はZ1のチームをやっているけど、チーム制はまだ始まったばかりです。今はユニバ全体が忙しいからなんとなく満足なんだけど、じゃあ今後のキャリアとかアートとか、いろんな関心がある中でどうなっていくのがいいかみたいなのをちゃんと持たないといかんな〜と。
僕より8個ぐらい上の人たちがそういうこと言ってるから、そろそろだなと。あとは、今回谷口さんや木村さんがすごくやりやすかったと感じてくれていたら良いなと思います。やっぱり仕事となると、やりやすかったか、やりにくかったかが結構重要になるじゃないですか。なんか辛かったって思われたら嫌だなあと思って。

ーユニバにいる人たちってお金を稼ぐ手段としてというより、物作りが好きな人というか、作るものの意味や価値があるものにしようという方が多い印象を持っています。

MJ: そうですね。まあバランスだから難しいんだけど。でもユニバは結構それを真面目に考えてる会社なのかなっていう風には思います。最近はちょっと忙しくてあんまりだけど。でも個人のクリエイターに対するリスペクトは変わっていないし、自分自身たちもクリエイターだと思っているところはあるかなと思います。

菊地:僕の関心ごとを一言で言うなら「30年後もみられるWEBサイト」なのかなと思いました。今ICC(NTTインターコミュニケーション・センター)と仕事をさせてもらっていて、ICCは1993年くらいからあるのですが、当時の会話の記録とかのページがいまだに見られるんです。当時って、今みたいなWEBの技術がないのでめちゃくちゃ素朴なHTMLですがちゃんと表示されていて、すごく良くて。しかも当時のスタイルが再現されて昔に戻ったような感じがするんですけど、それってもう30年近く前のWEBサイトで。今ICCと一緒にしている仕事でも、自分も30年後も見られる…「30年前ってこんなのあったね」みたいなのを意識した作り方をしたいと思っています。ユニバのメインストリームと全然違うアプローチをしようとしているんですけど、ブラウザのネイティブの機能だけで石を削り出すみたいな手作りサイトの作り方をしています。時間が経過した時に間にいろいろ挟まっていると、そこが古くなった時に見られなくなったり、メンテ不能になったりするんですが、ブラウザが解釈できる素のままで書くと、30年後もブラウザはぎりぎりあるんじゃないかと思っていて。
ブラウザが変わらないことにかけた作り方みたいなものに興味があります。世の中の流れで言うとJamstackとかが多少近いと思うんですけど、サーバーにプログラムを置いてそことお喋りするタイプじゃなくて、そこにHTMLとかスタイルシートをバリバリって書き出して置いておいて、それをただ見るっていう。
変更がある時には、HTML、CSSを書き出すプログラムが動いてHTML、CSSをつくる。けど、ユーザーが見に来る時にはただのホームページを見に来るだけ、みたいなところに可能性を感じています。そういものをもっとやっていきたいし、すごく最近ブラウザやWEB標準、WEB標準の歴史等を勉強しています。今更だしWEB屋なんで勉強しとけよってことなんですが、今までで一番ブラウザと向き合っていますね。結構楽しいというか、それをやっていると、世の中で今流行っているフレームワークとかで全然触れられていないブラウザの機能やスタイルシートがあるので、表現の可能性としても、素材としてブラウザと向き合うと、こういうのもできるじゃんみたいなのがある。最近はブラウザの表現の探検をしています。


いかがでしたでしょうか?
3回に渡り連載を続けてきたuniba.jpリニューアルに関するインタビューは、これが最終回となります。お読みいただいた皆様、ありがとうございました。
引き続き、ユニバに関する情報発信をしていきますので、お楽しみください!


Profile

菊地玄摩(Haruma Kikuchi)

ユニバ株式会社 代表取締役 / Circuit Lab.
2003年、有限会社ユニバースソフトウェア(現ユニバ株式会社)の創業メンバーとなる。2006年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。2009年よりユニバ株式会社代表取締役。ソフトウェア製品の開発プロジェクトや新規事業に参加し、アイディアの深堀(プローブ)と新しい体験の実装(プロトタイピング)を行なっている。2021年よりユニバ株式会社のCircuit Lab.チームで主に活動している。

森淳(Jun Mori)

ユニバ株式会社 取締役 / Z1
愛称:mjの名で親しまれている。山梨と東京を行き来するチームリード。 フリーランス/ユニバ/医療系スタートアップを経験し、ユニバの取締役として再参加。 美味いものを食って、サワービール飲んで、ウンコして寝れれば人生よし(๑•̀ㅂ•́)و✧

リニューアルした uniba.jp は以下のリンクからご覧ください。

uniba.jpリニューアル秘話 :vol.1 谷口暁彦さんインタビュー。「3つの会話 2022年5月」の記事はこちらです。

uniba.jpリニューアル秘話 :vol.2 「サイト設計でみせる不器用な丁寧さ」 デザイナー Takumi Abeさん&フロントエンドエンジニア Yusaku Kimuraさんインタビュー。(前編)の記事はこちらです。