矢口 季男(天風哲学を経営に活かす)

主に小規模企業を対象に経営コンサルタントを行っています。約35年間、1万人以上の社長さ…

矢口 季男(天風哲学を経営に活かす)

主に小規模企業を対象に経営コンサルタントを行っています。約35年間、1万人以上の社長さんと向かい合ってきました。 これらの経験から学んだことと天風哲学を学んだこと、この両方との関連性にはかなり多くの共通点があることを感じました。社長自身の資質や考え方に触れていきたいと思います。

最近の記事

天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 5-2

当社の使命とは (5-2) したがって、企業は規模の大小、顧客層、市場、商品やサービスなどに関係なく、その企業を必要としている人達や企業などが存在している以上、価値を果たしているといえる。ただ、ここで考えなくてはいけないのは、企業の存在価値と存続とは違うことである。いくら価値を果たしていると思っていても、業績不振で存在が危ぶまれる企業もある。いわゆる企業存続のため資金を稼ぐことができない場合は、必然的に市場から去らなければならない。 ここに企業の存在価値だけではなく企業存

    • 天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 5-1

      当社の使命とは (5-1) 企業が存在する意義はどこにあるのだろうか。同様に人間は何のために生まれてきたのだろうか。両方とも共通の課題が含まれており、回答も一つに集約できるのではないだろうか。 私たちが生まれてきたことは偶然でもなく必然的でかつ必要だから、すなわち生まれるべきして生まれたのであって明確な目的があるはずである。 この問いに対する回答は人それぞれの解釈があり、どれが正解であるかどうかは定かではないが、経営に携わる人間であれば、この点を明確にして対応していくこと

      • 天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 4-2

        正しい経営とは何か!(4-2) 一方、経営が成り立つためには、適正利益を獲得して企業の維持発展を行っていかねばならない。その中には人件費や光熱費などその企業が必要とする経費が維持でき、さらに税金や社会保険、あるいは借り入れがあれば返済原資なども賄わなければならない。 ということは、必要経費を賄うだけの利益を獲得しても顧客が十分に満足できる商品やサービスを提供していかねばならないことになる。 ここに正しい経営の根幹は、企業が維持するための必要最低限の経費等を賄うだけの利益を獲得

        • 天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 4-1

          正しい経営とは何か!(4-1) 経営とは一般的に複数の人が協力して、その会社の目的・役割を果たすためにある。その目的や役割は何かというと、当社が扱う製品や商品そしてサービスなどを通して、これらを必要とする人たちに適正価格でスムーズに提供することにある。その結果は満足を伴うものでなければならない。 こう考えると、あらゆる会社は、その会社の提供するモノやサービスによって社会全体、あるいは個々の人たちに役立つことを行ない、強いてはこの行為が社会全体の進化と向上をもたらしているも

        天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 5-2

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 3-2

          社長の仕事は「金の管理」と「人の管理」で十分(3-2) 人の管理とは、命令や指示をすることだけをいうのではない。従業員一人ひとりのモチベーションを高め、自ら率先して動くように仕向けることである。それには、会社の目的や理念を理解し、全員が一体として同じ方向に向かって動くようにすることである。 まず、社長自身が会社の目的や理念を明確に理解していなければ、社長の背中をみている従業員には伝わらない。当社の存在意義はどこにあるのか、一般的には顧客、従業員、そして広く当社を取り巻く社会全

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 3-2

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 3-1

          社長の仕事は「金の管理」と「人の管理」で十分(3-1) ここでは小規模企業の場合を例にとって述べる。極端なことかもしれないが、私の経験からいえることは、社長の仕事(管理)とは「金の管理」と「人の管理」で経営の80%以上をこなしたといってもよい。しかし実態は「金の管理」から逃げている姿が多く見受けられる。社長の奥さんや身内、あるいは従業員に経理を任せ、自らは営業や現場の仕事を優先している姿である。 社長が自らお金の心配(資金繰り管理)をするからこそ、模索し、対応策を考え、そ

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 3-1

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 2-2

          なぜ、社長の責任は重いのか(2-2)  社長に問題があれば、従業員や取引先にも影響が波及し不幸な状況に追い込まれることになる。社長の舵取りの良し悪しは多くの人たちの生活にも影響し、ひいては雇用や税金などを通して社会全体の貢献度にも影響する。 だから社長の考え方や資質は重要であり、そのことに対して十分な認識をもって行動しなければならない。失敗は許されないのであり、常に安定経営を持続させていかねばならない責任と能力が必要となる。  特に小規模企業の多くは、仮に社長の資質に問題

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 2-2

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 2-1

          なぜ、社長の責任は重いのか(2-1) 従業員は常に社長の言動を注目している。従業員からみれば、社長はその組織体のトップに立つ長であり、社長の考え方や手腕によって会社の将来が左右されてしまう。このような会社の舵取りを行う権限と責任を従業員が認めているからである。 従業員は社長の言動の一言一動が将来の行方を方向づける力があることを認め、常に会社の将来に対し希望や憂いを抱いている。だから、業界の動向を探ったり、時にはボーナスや昇給、昇格を同僚や同業他社と比較し、良し悪しを比べて

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 2-1

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 1

          社長のあるべき姿を考える(1) 小規模企業の相談を36年間行い、その数は約2万社以上となる。同時に中村天風氏の教えや考え方を自己流で勉強し、その教えから社長の抱く哲学や心構えの大切さを身にしみて感じている。結局、企業経営の良し悪しは社長が抱く、哲学、考え方、心の持ち方、資質など(以下、考え方という)で決定づけられるということである。 特に企業のトップである社長の考え方は日常の経営活動を通じて、従業員をはじめ、顧客や取引先、あるいは会社を取り巻く関係者全般に何らかの形で影響を

          天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 1

          相談事例と天風哲学(事例-19)24

          (菓子製造業の例-19) 観光地に立地している当社は3代目と続く老舗の菓子製造・卸・小売業である。古くから土産品などの高級菓子なども扱い、品質、味、見た目とも優れた和菓子店である。この地に2店舗を構えていたが、観光地であるという立地条件から春先から秋頃までは安定しているが、冬場は客足が途絶える。この対応策のため卸売りを強化、売上拡大はできたものの利益が出ず、過去9年間のうち8年間が赤字となっている。 社長はM&Aや廃業も視野に入れての相談となった。しかし、社長の持病は悪化

          相談事例と天風哲学(事例-19)24

          相談事例と天風哲学(事例18) 23

          (太陽光発電装置工事業の例-18) 当社は太陽光発電装置の取り付け工事などを主体に行っている会社である。太陽光装置では国内でも有名メーカの代理店を早くから取得、県内を始め関東一円を市場としている。多い時の従業員は6~7名いたが、現在は社長と事務職1名となった。  仕事は忙しくかなりの注文を受けていたが、従業員の定着は悪く、仕事をこなすことができなくなり業績は悪化、金融機関への返済も滞り、リスケなどを要請するも断られ最終的に代位弁済となった。  社長は県外の出身で実家は

          相談事例と天風哲学(事例18) 23

          相談事例と天風哲学(事例17) 22

          (自ら決断できない経営者の例-17)  突然の電話での相談、年齢は40代後半の男性からである。U商工会議所で5回の創業塾を経て、いよいよ卒業の段階になり、来週は各自が自分の思いを発表するとのこと。  奥さんに聞いてもらいたく、発表会に来てもらうよう話をしたところ大反対された。現在、サラリーマンで娘が大学生とのこと、お金がかかり安定収入を蹴ってまで創業することはないとの反対だったらしい。どう対応したらよいのかの相談内容であった。  創業塾においては、自らの創業に対する想い

          相談事例と天風哲学(事例17) 22

          相談事例と天風哲学(事例-16) 21

          (空調設備工事業の例-16)  当社の主な業務は独製のキッチン器具・装置の販売と自然エネルギーを活用した住宅・事務所等の空調の設計・施工である。現在、自然エネルギー活用の相談や打ち合わせ回数が多くなり、また一部は受注にも結びついている。  そもそも私との係わりは、当時の長男が会議所に相談に来たのが始まりである。自社の窮境状態を切実に語り、今後どうするか迷っているとのことであった。そこで当時の社長(父親)との面談を行い、具体的な改善の道を探ったものである。  空調設備工事の

          相談事例と天風哲学(事例15) 20

          (染色業の例-15) 県南で事業展開する繊維等の染色業者の例である。国内の繊維業界は、海外からの安価な輸入品に押され衰退の途のある業者は多い。当社も同様に厳しい状況下にあり、社長は70歳代で40歳代の息子と二人で経営している。 社長は以前から業界の衰退をキャッチし、新たな事業を興そうと試行錯誤してきた。健康に関した寝具などを開発し、販売したものの思うようには売れず、仕掛品や製品の在庫を抱えるようなった。一方、長男は従来からの染色を中心に事業を行っているが、売り上げの拡大は望め

          相談事例と天風哲学(事例15) 20

          相談事例と天風哲学(事例14) 19

          (空調工事業の例-14)  当社は建設業の一環として設備工事業を行っており、特に冷暖房機器の工事を主体とした空調工事業者である。従業員は社長を含めて4名、ほぼ家族的な経営であり、もともと公共工事や民間工事の下請けを主体にしてきた。  しかし、大きな受注額案件を狙うようになり、無理して受注獲得に専念してきた。その結果、大型の受注を確保したが大赤字、慣れない仕事に手を出したつけが回ってきた形となった。  特に自社の労働力では担うことができず、外注先として自社よりも規模の大きい

          相談事例と天風哲学(事例14) 19

          相談事例と天風哲学(事例13) 18

          (洋菓子製造・小売・卸業の例-13) 当社長は結婚式場や洋菓子製造販売、大型店内へのテナント出店など過去に3回会社を設立してきたが、業績悪化に伴い、いずれも廃業を余儀なくされた。  現在、社長の年齢は72歳であるが、新たに洋菓子店を開業したいという相談が1年前にあった。商売に対する意欲は旺盛で前向きであることに感服である。  社長の性格や新たな借入金負担などを考慮して新規開業をやめるようにアドバイスしたが強硬出店となった。案の定、店売りだけでは採算が合わない。仕方なく

          相談事例と天風哲学(事例13) 18