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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 9-1


経営は単純に考えるべき(9-1)
 私の最近(2023~2024年)の相談経験から話してみたい。県北のある和洋菓子製造販売業の件であるが、この会社は創業100年以上の老舗会社で観光客などを対象とした土産店として発足。その後事業拡大に波に乗り、現在の売上高の70%以上は首都圏の量販店など向けの卸売業である。
 当初は観光地である当地に2店舗を出店、取り扱う菓子類は味や見栄えが良く、ネームバリューもあり、また老舗ということから安定的な商売がなされていた。しかし、さらなる売上拡大のため卸売業に進出、特に首都圏を中心に新規開拓し取引先を拡大してきた。
 
これが裏目に出た。なぜか、売上拡大のために利益を度外視してしまったのである。「安くしなければ売れない」、「値上げをすると取引が停止となる」・・・など、売上拡大一辺倒の考え方が当社の窮境状態を招くことになった。
 
 しかし、ここで立ち止まって考えてみたい。採算が合わないで安く売ること、すなわち赤字での商売は誰にでもできる。このようなやり方では企業の安定経営は難しくなるのは明白であるが、続けてしまうところに問題がある。
多くの経営者は、経営の安定化は売上高の維持・拡大に固辞し、売上高さえあれば何とかるものだという考え方が底辺にある。
 
 安定化経営とは適正利益を得て、その範囲内で経費など必要な支出をカバーできれば良いのであって、必要以上の利益の獲得は逆に顧客を遠ざける原因にもなる。しかし、ここで重要なのは、原価に適正利益を加えて販売することであり、その適正利益には会社の経営を維持する経費等や借入返済などの支出額を考慮することである。
ただし、原価や経費等の支出を下げる努力を払うことが前提であるが、そこに適正利益を加えて販売することが商売の基本であり、正当な商売なのである。
 
 この正当な商売を行っても売れないとなれば、これは商品、売り方、販売促進、立地、あるいはターゲットなどが間違っているかも知れないし、場合によっては競合店に劣る状態になっているのかも知れない。
 商品にも問題がなく、経費等の削減努力を行っていても採算までの利益が得られなければ、当社の存在すべき使命や役割は終焉したものと判断し、潔く商売から撤退することを理解すべきである。
 
 なぜなら、このような状態に陥ったのは、当社の存在価値がないということが実証されたからである。極端なことをいえば、当社および当社の扱っている商品等がなくても、顧客は不便などを感じないからである。
それは、当社よりも勝る同業他社が存在しているか、あるいは当社の扱い商品が顧客にいとって必要性がないと言えるだろう。
 
 特に老舗と言われた会社などは旧態依然の商品や売り方を行っていて、現在の顧客のニーズからかけ離れているといった現象も見受けられる。商売はなるべく単純な見方をするのが大切である。原価や経費を極力抑え、必要最低限の利益をつけても売れないとなれば、当社の存在価値を疑ってみてはどうだろうか。
 
 先の菓子製造会社の話に戻るが、利益が取れずに赤字の状態が続いたという事実を以て、単純に値上げをしようということになった。
そこで全商品の原価を見直し、そこに適正利益をつけて販売することにした。商品によっては5%以上から30%程度のバラツキの値上げであったが、結果的にはほとんど売上数に変化はなかったということである。
 
いわゆる懸念していた売上高の減少はなく、逆に売上高や利益の増加につながったのである。嗜好品という商品徳性やリピータ客が多かったこと、老舗であること、ネームバリューがあること、味・見た目とも優れていたことが挙げられる。そして、価格以上に当社の商品を必要とする顧客が多かったということに結論づけられる。

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