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過去

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#ネガティブな過去

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のり子は就職活動をしていた時に「事務職」をしたいと思っていた。

社会経験のない女子高生のほとんどは事務職を希望するものだ。

のり子がこの会社の就職試験の面接の時に
「事務職の採用枠があまりないから販売職になります。それでもいいですか」と聞かれて、
「事務職の枠が無い場合は、御社には就職をいたしません。」とのり子はお答えした。


後で知ったのだが一緒に試験を受けた皆さん全員同じ質問をされ、「販

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入社前の研修が松戸市の研修センターで始まった。

東京に本社があり日本各地にお店がある小売業に就職したのり子たちは、社会人としての常識や、就業規則、接客方法などを一週間、研修センターに宿泊して学んだ。


まだ、誰がどこの売り場に配属になるかは分かっていない。それは入社式の時に辞令が渡されその時初めて分かるのだ。


1970年代の新人教育はスパルタ式だった。
「分かりましたか!」
と聞かれたら、

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高校の卒業式は、飛びぬけて何かに秀でた人に賞を与える。

例えば国体に出場した人とか、全国的に有名な展覧会で絵や書道が入選した人とかだ。

のり子の所属する合唱団も2年生の時に全国大会で銀賞を受賞していたが、それは団体であり、卒業式の時はあくまで個人に対する賞だったから、合唱団は該当しなかった。

また、特別勉学に励んだ人には学校長賞が贈られていた。



そのように特別何かに秀でていなくてもいた

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高校3年生ののり子は就職試験を受けるために寝台列車に乗り、上野に向かった。

当時、新幹線はまだなかったから大都会の東京に行くには寝台列車が主流だった。


のり子の学校からは3人がその会社の就職試験を受けることになり一緒に東京へ試験を受けに行った。

のり子達が寝台列車に乗り込もうとしたら遠くに学生服姿の集団が目に入った。地元でスポーツ校として有名な学校の生徒達だった。

5~6人の彼女たちは

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のり子の学校は2年生の時に就職と進学のそれぞれの進路ごとにクラス替えが行われた。

のり子は母親から、「その高校に入り、そして電電公社に就職してほしい」と言われていて、何の疑問も持たずに自分はそうなろうと思っていた。


なぜ、のり子の母親はそう言っていたのか。


のり子の家はとても貧乏だった。のり子の家は、両親と姉と弟との5人家族だった。

お米の専業農家だった父は田植えと稲刈りの時期以外は

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入学したら部活動は必ず入るもので、入部したら絶対に辞めずに卒業まで続ける事。

のり子の当時の常識はそうだった。
だからのり子は部活に入ることは当たり前だった。


校門に入ると上級生が待ち構えていた。「合唱部に入りませんか?」
漫画でこういう「部員の客引き」の図を見たことはあったが、その光景を実際に目にすることは、のり子は今までなかったので、「へー、高校って大人の世界だなぁ」と感じた。

部活の

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やりたくもないのに無理やり多数決でクラス委員長をすることになったのり子は高校に入学して半年間、迷走しきっていた。

学活の時の議長の時は会の運行をうまくまわせなかった。
話をどう持って行って結論を出せばいいのか分からなかった。

もしかしたらそれを文章にして静かに考えていたらできたのかもしれない。

しかし、人と話をすることが苦手で、ましてや皆さんの前に出て話をしなければいけない状況で、脳内はグ

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高校に進学して初回の授業はどの教科も先生の自己紹介や雑談で終わっていから
「高校ってそういうものなんだ」と、のり子は油断してしまった。


まさか、大好きな数学の初日に授業が始まるなんて思ってもみなかった。先生が自己紹介もせずに突然黒板に問題と解き方を書き始めたのには驚いた。

のり子達は慌ててその数式をノートに写し始めた。先生の説明はもう頭の中で素通りしていた。
とにかく早く書き写さなければいけ

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自分から人に声を掛けられず独りぼっちの中学三年間を過ごし、勉強するしかなかったののり子は地域でも有名な進学校に入学した。


そこは百数十年の歴史がある、地域でも有名な女子高だった。

その学校は自転車で片道45分位の「街なか」にあった。
これまで周りが田んぼだけの小中学校だったのり子にとって、「大人の世界」へ飛び込んだような気がした。


同じ中学からはのり子を入れて2~3人しか入学していない、

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中学に進学したのり子は、いじめをしていた彼とは別クラスになりいじめは自然消滅した。

彼はボンタンの恰好をして他校の番長と喧嘩沙汰を繰り返すようになっていった。


小6の一年間、他の女子に被害が及ばないようにと思い、のり子はひとりになることを選んだ。


いじめが終わったのにのり子は自分から人に話しかけるのが怖いと感じる子になり、結局、中学の時も独りぼっちだった。


友達がほしい
誰か私を助

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入学式の早朝、のり子は自転車に乗り、中学校の玄関に貼られたクラス分けの表を確認しにいった。

「どうか、A君と違うクラスでありますように」

番長的立場のA君から1年間いじめを受けたのり子は小学校を卒業してから今日まで、指を組んで神さまに拝む姿勢を何度もしていた。

眠る時もその祈りは眠りに入るまで続けていた。

そして、彼とは別クラスになったことを知った時、初めて眼鏡をかけたあの瞬間のように、世

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未来を知るために、過去のネガティブな経験を徹底的に洗い出してみよう。


ネガティブな過去だけを時系列で洗い出してみることにした。


たぶん、小5まではそれほどネガティブな思いはしていなかったような気がする。

のり子はそれまでクラスの女子の人気者だった。
毎日が楽しくていつもニコニコしていた。
勉強も運動もできていた。

小6になって、クラス委員長を決められた時にのり子の人生の矢印は大きくうね

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