[SIer]SE単価に思う事

母親の友達の子供が内定を取れたとの事です。その子は文系出身です。
大手で給料と待遇が良いらしいよと母親が言っていましたが、会社を聞くと、デー子(NTTデータの子会社)でした。文系を出てSierに来る人は多いですが、やっていける人とついていけない人がいて、やはり理系の方が仕事について行ける傾向にあります。また、私の働いていた会社の人事に昔に聞いたところ、文系出身の場合は例外はありますが、それなり(MARCHクラス)の大学を出ていないと、新人研修の時点でついていけなくなって脱落するそうです。配属された先で、OJTで教えなくてはいけないので大変です。私は、新入社員研修の成績が悪くて保守部門の配属になったと思いますが、私のいた保守部門は、新入社員を取る場合はなぜか理系出身者ばかりでした。

私は就職先にSierはお勧めしません。文系であっても理系であっても業界そのものをお勧めしません。

私は、Sier時代は大手Sierの子会社で働いていましたが、ありがたい事に会社は親会社の下請けの仕事はしていませんでしたし、私自身それなりの給与をもらっていました。デー子と聞いて本当に給与と待遇がいいのか?と内心思ってしまいました。デー子の内情はしりませんが、デー子でも、研究所やJSOLの様にユーザー子会社の様な会社は別ですが、普通は親会社に出向したりプロジェクトでも親会社の下請けとして働く事になるのではないのかなと思ってしまいます。昔のNTTデータの会社ロゴが、まさにそれを示すように、親会社とそのほか子会社を関係性を示すようなロゴを使っていましたしね。

SIerは古い風習があり、人月単価で顧客に金額を提示する事があります。
2022年ごろのネットの記事に大手SIerの単価が漏れてしまったとの記事がありました。記事を元に記載のあった一部の大手Sierの単価(1人当たりの月額費用)は以下の通りだそうです。

アクセンチュア 353万
PwC 324万
NEC 205万
日鉄SOL 182万
NRI 178万
NTTデータ 178万
など

皆さんは上記を見て高いと思いますか?それとも安いと思いますか?

ちなみに私の働いていた会社は、外向けに出す人月単価は140万でした。今はもっと高いそうです。しかし、プロジェクト内の原価構造で見ると、人のコストはランク別に単価を持っており、例えば私は150万越えぐらいで、新入社員だと50万ぐらいになります。プロジェクトには色々なランクの人が参加しています。さらにその人件費のコストに、製造間接費や販売管理費(本社部門や営業部門のコスト、教育のコスト、教育や手待ち時間など活動していない時間分のコスト)という、会社内の税金の様なもの(国税と地方税の様に、組織の規模毎に色々な分類があります)がのってきますので、プロジェクトの原価はさらに高い金額になります。そこに利益を乗せて、外に出す金額になります。外に出す人月単価は140万になっていましたので、できるだけ、単価の安い人を使って単価の高い人はあまりプロジェクトに参加しない様にしないと、プロジェクトは赤字になってしまいます。また、バッファーをある程度想定していますが、予定をしていた工数(作業時間)を超えても赤字になります。赤字になると、面倒な会社の会議で詰められます。
内部の人件費の単価でみると、派遣社員(新人に近い人)は、安くて地方で月60万程度、都内だと80万程度だったと思います。それなりのスキルの有る人は派遣社員でも100万を超えてきます。社内の若手より派遣社員の方が単価が高かったので、できるだけ社内の人間を使いたいなと思っていました。経験を積むことは教育・勉強にもなりますしね。派遣社員は失礼な話ですが、仕事が終了したり、会社全体の業績が悪くなると契約が終了となる場合があるので、会社側から見たら調整弁の意味でも必要です。事務作業で自身の手が足りない場合は、事務で派遣の方を新規採用して単純作業の様な自分の仕事を減らす事もできます(ただ、事務作業は製造間接費の上がる元になりますし、私の教え方が悪いためだと思いますが、過度の期待は禁物で自分ですべてやり直さなくてはいけないケースもあります)。あたり前かもしれませんが、技術についても、派遣さんは経験として同じ様な事が書いてあっても、人によってスキルが本当にばらつきます。できない人は本当にできないです。いやぁまったくできないです。できる人はレベルが高いです。

とある日本企業のメーカー系グループのSierの話です。出張する時の移動手段は、高速バスだったそうです。プロジェクトのコストを下げるために、当たり前の事だったとの事です。私の働く会社に来て、無駄な出張!?などで、新幹線や飛行機を沢山使っている事に衝撃を受けていました。かなりの大手だったので、移動手段夜行バスには驚きました。その日本企業メーカー系グループのSierは何社かありますが、いずれの会社も私の働いていた会社では、給料が低い事で有名でした(転職希望者の給与を見るとスキルに対して金額が低い)。世の中の一般的にみたら、知名度もあるし大企業なのですけどね。

以前に私がまだ若かった頃、ある地方に親会社の人と一緒に私たちと営業が出張して移動する事がありました。移動は、お得な切符があった(通常の普通席よりグリーンの方が安いし、私の周りではその切符は有名だった)ので、私たちはグリーン車に乗っていました。行きは別々に現地集合でしたが、帰りは気まずかったです。親会社のある程度の役職の人たちは、普通車に向かい、子会社のさらにペーペーの人達がグリーン車に向かうのです(ただ、お得な切符を利用していたので、移動費としてみれば親会社の人たちよりも私たちの方が安く移動できていたはずです)。

某大手お菓子メーカーの製造ラインが停止して2カ月がたちます。SAP HANAの導入失敗が原因らしいです。そして、システム要員の募集をしています。本社採用らしいのですが、システム子会社に出向して働く事が条件に記載されています。業務内容として"グローバル展開を見据えた次期統合認証基盤の企画、設計、構築"、歓迎条件は"SAP ERP(S/4 HANA含む)"となっており、予定年収は"500万円~"で応募をしているそうです。
はっきり言って安すぎて応募する人いるのかな?と思います。
その会社が"好きだ"とかなら良いのかもしれませんが、出向して子会社勤務になりますし、何をモチベーションに仕事をするのでしょうかね。
実際に現状でプロジェクト炎上していますし、炎上している所にこの年収でプロジェクトに参加したい人はいるのでしょうか?
そういえば前に、青色の銀行がサクラダファミリアを構築していた時も、大炎上してからプロジェクトマネージャーを募集していましたね。その時は月額130万までとなっていました。雇用形態が分かりませんが、派遣や委託であればこんな安い金額でどこが受注に動くのでしょうか?権限ももらえないと思いますし、結局なにもできないのではないのでしょうか。
いや、わかるんです。本当にわかります。会社には社員のランクがあるので、ランクに合わせた給与形態にしなくてはいけないので、そのような年収の開示になったのだと思います。今時点で働いている社員と比較して年収を上げると既存の社員の不満にもつながりますし。中途採用の難しい所です。
ちなみに、"SAP ERP"の技術要員は引く手あまたですし、外に頼むと人月単価はかなり高い金額が提示されます。もちろん、設計、開発(その会社向けのオンプレミス)、導入・切替、運用・保守で単価は異なると思います。私の会社は上記の通りどの工程でも140万でしたが。私の会社でも"SAP ERP"を担当している人は技術がついたら、転職すると年収が上がりますので、転職する人は多かったと思います。
日本の会社は、パッケージに合わせて仕事を行うのではなく、自分たちの仕事を変えずに、パッケージを業務に合わせて変更をして利用しようとするので、うまくいかないのです。海外のERPをはじめとするパッケージはパッケージに合わせて仕事をする事を前提としています。日本企業は、自分たちの業務のやり方が変わる事に対して抵抗感があります。業務にあわせた形にパッケージ魔改造をして独自仕様にするので、システムの導入もそうですが、その後のバージョンアップや老朽化に伴うシステム移行を難しくさせているのです。

私は、外部のベンダーに仕事を依頼して仕事をしていたので、大手SIerを利用する事も多かったのですが、大体中レベルの技術者でも300万ほどの単価が提示される事が多かったと思います。その為、上記の流出した大手SIerの単価は安すぎるように感じました。まぁ、人月単価が300万の人でも、単価と給与は違い、給与はそれほど高くない事も理解しています。大手Sierに値引き交渉をすると、プロジェクト要員を別のSIerを下請けで利用するなどして、単価を下げてくる提案をしてきます。プロジェクトマネージャーは大手Sierが実施するので、責任をもってやって結果がかわらないのであれば、歓迎です。しかし、やはり下請けを利用すると、下請けの要員は分かっていない事が多く、決められた事はできるが、なにかトラブルがあるとだめですね。私たちも、外向けには同様の事をしていたので、私が利用していた大手SIerのやり方や言い分も理解できます。大きな会社であればあるほど、製造間接費は高くなるので、プロジェクト収支を作成している人は大変だと思います。

さて、上に記載した大手Sierの単価ですが、先ほども記載しましたが私は安いと思います。おそらく単価の安い下請けなども含めて、出された単価ではないのかなと思います。

大手お菓子メーカーのSAP導入プロジェクトの炎上は、大手外資系コンサル(会計事務所系)という記事がありますが、昔大手外資系コンサル(会計事務所系)A社が主導していたプロジェクトがあって、A社ではどうする事も出来なくなって、下請けで働く事がほとんどなかった私の働く会社が支援した事がありました。私自身はプロジェクトにはかかわっていませんが、機会があって見学に行きました(本当は、大手のエンドユーザの会社の中に入ってみたかっただけです)。はっきり言ってA社のプロジェクトマネージャーやA社の他の方々は何もわかっていないという事が分かりました。ITの事が分かっていない私がいうのもおかしいですが、レベル低かったな~。
A社がこんな状態ですので、大手外資系コンサル(会計事務所系)のPwC、トーマツやKPMGも似たような感じなのかもしれません。

A社とは別の大手外資系コンサル(会計事務所系)の某社には仕事上で年齢が同じくらいの知り合いがいましたが、給与に対しての愚痴を聞きました。その人の業務や評価にもよると思いますが、30歳少し前ぐらいで500万より低く私より低かったです。給与明細を見せられました。その人の業務は一応上流工程を理解しないとできないような仕事でした。本人は給料が低くてやってられないという事を言っていました。

上記の単価表にも出てくる日系のSier上位のB社は上場しているので、平均年収がファイナンス情報で公開されており、その通り給与は高いです。普通に年収1,000万を超えます。B社にも知り合いがいますが、仕事のやりがいは無いそうです。金融系の仕組みの為、そもそも高い単価が提示され、機械を導入する際も、金融系しか購入しないであろう高額の機械を導入するそうです(配属される部署によって異なるので、あくまで一例です)。その知り合いの立場によって異なると思いますが、金額を気にして仕事をするような事はないそうです。その高額の機械の設定などはかなりニッチな技術らしく、なかなか大変みたいです。新人で入ってくる人がそもそも学歴はかなり高く、さらにはITの技術レベルが高いらしく、新人が本当に優秀らしいです。東工大出身者すごいらしいです。
その知り合いとは関係無しに、B社に仕事を頼んだ事もあります。B社に依頼をした時も、プロジェクトマネージャーはB社の要員が行い、実際の作業を行う要員は下請けを利用していました。ですが、B社の人を筆頭としてそのプロジェクトメンバーの人たちは本当に楽しそうに仕事をしていました。営業の人は役職が付いていましたが、馬鹿なんじゃないかと思うような事もありました。東京大学を出ているらしいですが、プロジェクトを円滑に動かす様に馬鹿を演じていたのかもしれません。打ち合わせの時間中に、何度も席を外し深刻そうな顔をして電話をしていたので、何事かを確認したら本当に馬鹿の様な内容の事でした。笑ってしまいました。プロジェクトの終了後に知ったのですが、プロジェクトメンバーはメンバーで、構築しているシステム(ソフトウェア)は初めて触って対応をしていたらしいです。B社は、プロジェクトマネージャーが本当に優秀で、技術を持っている人はレベルが本当に高いです。別件で、別の部門の所に見積もりも含め相談をした事もありますが、本当に優秀な方々でした。ただ、プロジェクトマネージャーにも、色々なタイプが居て、コンサルチックな人や顧客側に寄り添う人などに分かれます。一度、どうしても私と合わなくて区切りのいいところで、チェンジしてもらったことがあります。

レベルが高くて驚いた会社の一つに、ガートナーがあります。あるプロジェクトで、コンサル支援(どちらかと言うと、上流工程よりもっと前の考え方に近いもの)を頼んだのですが、素晴らしい資料をいただきました。ここは個人の能力というより、組織として、優秀なのだと思います。本当にアウトプットは素晴らしく、求めていたものをいただけました。ただし、サービス費用は高額です。

ここまで、だらだらと書きましたが、何を言いたいかと言うと、外向けの単価と、実際の給与は乖離しているという事です。
大手Sierに入ったら、入社した最初の方は違えど、上流工程から入れることができ、エクセルやパワーポイントの利用が中心になります。子会社になると自身で仕事を取ってこれる会社なら良いのですが、一般的には親会社下請けとなって、言われたことをやるような仕事になってしまいます。仕事を自分で取ってこれないような規模の独立系のSierも同じです(悲しい事に、中途半端な規模のユーザ系Sierも同様です。業績を上げるために親会社以外の仕事をしようとするが、自分たちで仕事を取ってこれないのであれば、大手の下請けの仕事になってしまいます)。大手SIerのパートナー制度はうまくできていると思います。結局どこかの下請け(パートナー)で仕事をする事になります。プロジェクトの責任者に近い立場になると精神的な負担があるので、どちらがいいのか一概に言えませんが。まあ、大手Sierに入ったとしても、客先常駐になる場合も多いので、居心地がよくない環境で仕事をしなくてはいけない場合も多いのですが(業務委託と言えば聞こえはいいですが、指揮命令権など扱いは違えど、派遣さんと変わらないような居心地かと思います)。

Sierの構造は本当に建築工事の現場に似ていると思います。新卒で就職で仕事を探す際は、心からこの業界に来てはいけないと思います。ITをやりたいのであれば、パッケージ(クラウドサービス含む)を作成している会社か、外資系の大手、メーカーや普通の会社(先ほどの例にあった製菓会社など自分の商品を持っている会社)のIT部門を目指すべきだと思います。
それでもSierになりたい場合は、特に派遣業を主とした会社やSESを主にしている会社は避けた方が良いです。
大手ではない場合は、売り上げを、従業員数で割ってください。一人当たりの売り上げが見えてきます。売上の原価には、派遣さんや他社に委託した分、機械を売った(購入仕入れした)金額、各種固定費も乗ってくるので、本当の意味での一人当たりの売り上げは分かりませんが、その金額以上の年収は絶対にもらえないという事を理解する必要があります。大昔から言われていますが、少なくとも、2,000万以上ある会社を選んだ方が良いと思います。1,000万を切っている会社は、給与は確実に少ないし派遣やSESがメインでスキルが付くことは無いと思います。

私の所属していた会社ですが、部下の給与を見ると、25歳ぐらいで500万強の年収がありました。30歳少し前には600万を超えるくらいかな。転職サイトで、平均年収が書かれていますが、なぜかとても低く書かれています。全体的な書き込み数が少ない中で、派遣社員の方の記載が多く、平均された結果、サイトで算出された平均年収が低く出ている為だと思います。
まぁ大手Sierの子会社なので、少ないと思われても仕方がありません。本当は親会社より給与や福利厚生、昇格のしやすさなどの条件はいいと思うのですが。
転職サイトで、正社員と派遣社員を同じ会社の枠で記載し、給与などを平均するのは間違っており間違った情報を発信する事になるのに、なぜそのようなサイトは一緒にしているのかはわかりません。派遣社員の方を否定するつもりはありませんが、正社員と派遣社員では、役割も、仕事も、給与形態もまったく違うので一緒にするのはおかしいと思います。

私は、保守・運用という業務が中心でしたが、上流(超上流というらしい工程やグランドデザイン作成等)から、下流まで経験をしてこれた事は、幸せな事だったのかもしれません。ただ、IT業界はもう戻りたいとも思いませんし、最終的にはうつ病になってしまいましたが。

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