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『日本最南端のおむすびナンナンナンダ探訪記(中編)』

1.日本最南端の有人島「波照間」へ向かうのだ
2.相棒は自転車キーキー号
3.日本最南端の郵便局でお宝マップを手に入れろ
4.次から次へと難敵襲来




5.共同売店ローラー大作戦!



日本最南端のおむすびを明らかにするために向かったのは、日本最南端の有人島「波照間島」
日本最南端の郵便局でもらった情報を元に、まずは朝から営業している共同売店を周っておむすびを探すことになった。ちなみに島内にある共同売店はこの5つだ。

南共同売店、まるま売店、冨嘉売店、名石共同売店、丸友売店

情報によると、このどこかに日本最南端のおむすびがある可能性が高いと考えられる。それぞれの売店は集落ごとに分かれて建っているみたいだけど、自転車で周ればそんなに時間がかからない距離にある。
よし、どんどん周っておむすびを見つけよう。作戦名は「共同売店ローラー大作戦」だ。

では、どこから周ろう。悩んだ結果、まずは南共同売店に向かうことにした。南共同売店は、その名前の通り波照間島のいちばん南にある売店。ここでおむすびを見つけることができれば、この旅のミッションもほぼ完了ということになる。
早めにミッションを終わらせて、残った時間で悠々とビーチで遊ぶのも悪くないだろう。そんな青写真を描きながら漕ぐたびに音の鳴るレンタル自転車のキーキー号を走らせ、集落を横断する道をズンズン進んでいった。

それにしても暑い。
まだ3月だというのにその日差しは真夏そのものだ。
首筋や背中は、吹きだした汗でぐっしょりである。

島で唯一の中学校の横を通り、くねくねした道を進むとコンクリート造りで白い庇がついている建物が見えてきた。建物の前には白い自動販売機と赤いポストも設置されている。どうやらここが南共同売店みたいだ。
自転車を店の脇にとめて、売店の中に入る。お店と言っても、少し暗くてあまり広くはない。広さを東京で例えると駅の改札横にあるコンビニぐらい。その店内の棚には、お菓子や調味料などの食品や雑貨が整頓されて並べられていた。入り口付近の棚はなぜかぽっかりと空いていて、商品が置かれていなかった。

すみませーん。おむすびは売っていませんか。

「今日は売ってないよ」
レジのところにいたお店の方はそう答えた。

残念・・・。
今日は売っていないということは普段は売っているのだろう。まだ午前中とはいえ、早々に売り切れてしまったかもしれない。来る途中で、雨宿りをしたり子ヤギと戯れていた時間が悔やまれる。
まあいいでしょう。島内には、あと4つも売店があるのだから。そのどこかでおむすびを手に入れられるだろう。

気を取り直して、南共同売店の一番近くにある、まるま売店へ向かうことにした。地図を見る限り、位置も南共同売店とそんなに変わらないぐらい南にある。まるま売店でおむすびを見つけたとしても日本最南端と言っても異論はでないはずだ。
しばらく、自転車を漕ぐと南国らしく薄いブルーの壁の建物が見えてきた。大きくまるま売店と書かれた看板がかかっているので、ひとめでここだとわかる。店内に入ると、先ほどの南共同売店と同じく、おむすびの姿はなかった。

すみませーん。おむすびは売っていませんか。

「今日は、おむすびを作っている惣菜店が休みなのよ」
お店の方はそう答えた。どうやら、おむすびを製造している総菜屋さんがお休みらしい。
そもそも共同売店はおむすびを売る場所であって、作っているのは別にいる方らしいのだ。
うーん、またダメだったか。
まあでも、まだ周っていない売店は3つもあるし、そのどこかでおむすびに出会うことはできるでしょう。
またまた気を取り直して次の売店へ向うことにした。



6.島から消えたおむすび


次に向かったのは島の中央にある名石共同売店だ。名石共同売店は、先ほどのまるま売店のすぐ近くに会って、自転車でも2分くらいで着いてしまった。
大きな三角屋根が特長的で、他の売店よりも規模は大きそうだ。
ここならおむすびが見つかりそう。正確に言うと日本最南端の売店ではないけど、そこに近い売店だからギリセーフと言う話にしてしまおう。

お店に入ってレジのところにいる店員さんに、本日3回目の台詞を投げかける。
すみませーん。おむすびは売っていませんか。

「今日は入荷してないよ」

えっ。ここもダメなの。もしかして、島でおむすびを作っている方はひとりだけで、たまたま今日がお休みの日だとかするのかもしれない。
不安が頭を駆け巡る。
まあでも、まだ周っていない売店は2つもあるし、どちらかでおむすびは見つかるだろう。

次に向かったのは島の東側の集落にある丸友売店だ。鉄パイプの土台で作られた庇が店の前に突き出ている特徴的な建物。

そこで本日4回目のこの台詞を放った。

すみませーん。おむすびは売っていませんか。

「売ってないのよ。今日はあやふふぁみさんが休みなのよ」
えっ。あやふふぁみってなに?
お店の方に聞くと、おむすびを製造しているカフェの「あやふふぁみ」が今日はお休みとのこと。
さらに聞くと、島内には「あやふふぁみ」と「藤井惣菜店」の2つのおむすび製造所があって、各売店によって取り扱いが別れているらしい。少なくとも「あやふふぁみ」のおむすびを入荷しているお店は全滅ということだ。さらには「藤井惣菜店」を入荷しているお店もすでにダメだった可能性が高い。

この時点で共同売店でのおむすびは出会えない確率は95%ぐらいになっていた。
残るは島の一番西側にある冨嘉売店。
冨嘉売店は、自転車で15分ぐらいかかる離れた集落にある。ここが本当に最後の売店になる。

泣きそうになりながら、今日5回目になる台詞を言った。
すみませーん。おむすびは売っていませんか。

しかし、結果はダメだった。
この日は島のおむすびを製造している「あやふふぁみ」と「藤井惣菜店」が、2軒ともお休み。そのため、どこの共同売店に行っても、おむすびは売っていなかったのだ。
春休み期間中の金曜日で、観光客も多いはずなのに。さあ本当に困ったぞ。


7.ホバリングとサイクリング

あてにしていた共同売店でのおむすび探しは、どこにも売っていないという最悪の結果になった。とはいえ、波照間島まできてこのまま手ぶらで帰るわけにはいかない。
そこで、次の作戦を考えることにした。

それは「飲食店ローラー大作戦!」
そのネーミングの通り、波照間島内の食堂やカフェなど飲食店のメニューでおむすびがないかを探す作戦だ。島内の飲食店はランチ営業から始まるところが多く、どこも11時近くにオープンするらしい。それまで少し時間が空いているので、波照間島でどうしても行きたかった日本最南端の碑を見に行くことにした。

郵便局でもらったマップによると、横長の楕円形をしている波照間島の南東にあたる海岸線沿いにその日本最南端の碑はあるらしい。

波照間島は島の中央部分が平らな台地になっていて、周囲の海岸線に向かって標高が下がっていく、どら焼きみたいな形をしている。
海岸線に向かって行って、そこから帰ってくるということは、坂の上り下りがあるということにもなる。

今乗っている自転車は、変速ギアがついていないノーマルなママチャリ。しかも、ペダルを漕ぐたびにキーキー音がするオンボロさだ。坂の上り下りはかなり脚力が必要になりそうだけど、のんびり行きましょう。


まずは、島の中心部から東側に向かい、海岸線をぐるっと周りながら南下して日本最南端の碑を目指すことにした。
しばらく進むと周囲を包み込むような、ブロロロロという大きな音が聞こえてきた。
飛行機かな。でも波照間島には航空路線がないはず。よく音を聞いてみると自分の進んでいる東方向から鳴っているようにも思える。もう少し近づいてみよう。

すると、地上にかなり近いところでホバリングしているヘリコプターが見えた。
その下には金網の柵に囲まれた広場があって、その手前にはい赤瓦の新しい建物が見えてきた。

その建物に近づいてみると、大きく波照間空港という文字が書かれていた。
調べてみたらここは波照間空港の新ターミナル。現在では、波照間島に航空路線はないけれど、昔はあったことがあるらしく空港は当時からあったものらしい。
今後、新しい路線を就航させることも想定されていて、そのために新ターミナルを整備しているらしい。ヘリコプターはなにかの訓練中だったのだろう。

嬉しいことに、この空港から先の道は緩やかな下りになった。空も雲がなくなり、快晴に近くなってきた。陽の光が射すと空や海が鮮やかになってくる。目の前に広がるのは、青空と緑の草原と碧い海。 吹き抜ける海風も自転車のキーキー音もぜんぶが心地いい。まさに最高のサイクリングとなった。


8.日本最南端の地に立つ

緩やかな下り坂をどんどん進んでいくと、日本最南端の碑と書かれた案内看板が出てきた。
ついに日本最南端の碑がある場所に着いたようだ。案内看板の指す方に進むと大きな広場になっていた。
広場から先は、ぼこぼこした芝生や砂浜もあって、歩いてしかいけない。

自転車キーキー号は広場に置いていくことにした。
実は自転車キーキー号には鍵はついていない。
もし自転車盗難にあったら…
自分は日本最南端の地で置き去りになってしまう。まあ、離島では自転車盗難自体がないのかもしれないけれど。

芝生の上を進んでいくと、いろいろな石碑が並んでいるのが見えた。
波照間の碑、平和祈願の碑、日本最南端の平和の碑。
さすが、日本最南端の地だ。石碑の数も多い。その3つの石碑のさらに奥の方に、Tの字になっている石碑があった。このTの字はガイドブックで見たことがあるぞ。

その石碑には「日本最南端の碑」と書かれていた。これが、有名な日本最南端の碑だった。このTの字が指している方向は真南なのだろう。

それにしても、ここが日本の最南端の地。 

正直感慨深いものがある。
でも周りをよく見てみると、海岸線までは少し離れているように見える。日本最南端の地というのであれば、ギリギリ海のそばのような気もする。果てしてそこまで行けるのだろうか。海岸のほうは岩場のようで、ところどころ膝下ぐらいまでの草が生い茂っていた。真っ白なテッポウユリなども咲いている。場所を選びながら進めば、海岸線の近くまで歩いて行けなくもない。

とりあえず行けるところまで進んでみよう。ここは八重山諸島。
ハブなどの危険生物もいるので、足元を確かめながら、ゆっくりくゆっくり慎重に進んでいく。いつしか草もなくなり岩場だけの場所がでた。目の前には海が広がっている。足元も悪いし、これ以上進むのは無理かな。

携帯会社の電波も届いているみたいだったので、スマホでマップを見てみることにした。先ほどの日本最南端の碑からさらに南へ進んでいるのがわかる。マップを見る感じだとここが波照間島の中でもいちばん南の場所らしい。つまり本当の日本の最南端に辿りついたようだ。

ゴツゴツした岩場と真っ青な水平線。日本最南端の地に立って気持ちも晴れやかになった。

さあ、日本最南端のおむすび探しを続けよう。



(後編に続く)



※写真は、自分で撮影したものです。
※こちらの旅行記は、「1000日間で1000のおむすびを食す男」の特別編として、2023年5月に書いた記事を元に、追記編集、再構成して書き上げたものになります。

※毎日、おむすびの食リポをしていますので、よろしければ読んでみてくださいね。↓



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