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【大規模無料招待?】大好きなJリーグだからこそ、その価値を自ら下げないでほしい



チケット転売サイトを除くと200円や300円という少額の値付けで、当選チケットがずらりと並んでいる。
しかも、それが売れ残っているのだ。ざっと数えただけでも数百枚はありそうだ。


悲しい。

30年以上スタジアムに通っている自分にとって、こんなに悲しいことはない。
きっと、各クラブの多くのファン・サポーターたちも同じように思っているだろう。





👉なぜ、無料招待を乱発するのだろう


まもなくゴールデンウィークだ。
寒くもなく、暑くもなく、花粉もないというスポーツ観戦するためには最高の時期になる。

Jリーグの各クラブでも、多くの観客や売上が見込める重要な時期だ。
満員になるスタジアムも多いと思う。


しかし、そのタイミングで、Jリーグは12万名という大規模な無料招待を仕掛けている。本来であれば、いちばん集客を見込める時期に、無料で招待をするのはなぜなのだろう。


4月20日~5月29日まで100試合以上を対象に招待キャンペーンを実施中!
はじめての方も、お久しぶりの方も大歓迎!
ゴールデンウィークはJリーグに遊びに行こう!




そもそも、開幕の時期に17万名の無料招待をやったばかりだ。
つまり、30万人以上の無料招待をこの3か月間の間に仕掛けていることになる。



通常のマーケティング戦略であれば、需要が少ない時期にこのようなプロモーションを打って、需要の最大値化するはず。

最需要期に無料招待をするのは、マーケティングのセオリー的で考えてもありえないような気がしている。




この無料招待についてはリーグ側で2023年度の「to Cマーケティング戦略」では、このように語られていた。


「Jリーグへの興味・関心度の向上」に取り組んでいく方針を示した。昨季はコロナ禍明けに伴う集客数の回復を目指し、スタジアムから足が遠のいた人々の復帰やスタジアム未体験者の獲得に重点を置いていたが、さらに関心を呼び起こしていく必要性が浮き彫りとなったという。

 Jリーグへの高関心層の割合は21年8月から昨年6月にかけて17.4%から15.5%に1.9ポイント低下。閉幕時期の昨年11月には16.9%に一時持ち直したものの、おおむね低下〜横ばい傾向となっており、「このままターゲットのユーザー転換のみを推進し、関心度が下がり続ければ、ターゲット層が枯渇しかねない」という結論に至った。

 そこでJリーグは今季、JリーグIDの新規登録や新規来場者の確保に引き続き取り組みつつ、Jリーグへの興味関心への醸成にフォーカスする方針。テレビ応援番組などを通じたローカル露出、デジタルメディアを活用した首都圏・関西圏の露出を強化し、そこに30周年プロジェクトも活用していくという。また今季からJリーグ職員に各担当クラブを割り当て、集客、SNS活用、調査・分析、チケッティング、学習プログラム、システム開発などで支援ができる体制を整えている。


いわゆるファネル型のマーケティング手法を使っているのだろう。

ファネルには「漏斗(ろうと・じょうご)」という意味があり、その形状を生活者の購買のプロセスに当てはめたものをファネル型マーケティングと呼ぶ。
見込み顧客に対して、興味、感心、検討、購入、リピートみたいに入口は大きくして、段階ごとにだんだん顧客が減っていき、最終的に残った人ロイヤル顧客となっていく。最初のアプローチ(メディア露出、大規模キャンペーン)が多ければ多いほど、最終的に残る人も増えていく考え方でもある。


Jリーグで言えば、見込み顧客を設定し、その方たちに観戦機会を与えることで、新しいファン・サポーターになってもらえることにつながると考えているのだろう。
もちろんその段階の中で離脱する人も多いのだろうが、最終的に残る人のパーセントも計算でき、一定の効果が出ていたのかもしれない。





でも、なにかが引っ掛かる。

それは、このやり方が数字だけを追っかけていて、いちばん大切なファンやサポーターの感情や熱量というものを、あまり重要視していないように見えるところだ。

あまり感情的な話にはしたくないので、無料招待におけるメリットとデメリットを書き出してみる。




👉無料招待のメリット


❶新規の観客にスタジアムで観戦をしてもらえる。

海外で活躍している日本人選手や一昨年のワールドカップ、今年の夏のパリ五輪などによってサッカーに興味を持った人も多くいる。この方々を国内のリーグにも興味を持って観てもらうことで、新しいファン・サポーターを獲得できるのではないだろうか。
また、過去に観戦経験がある方も、これを機に再度観戦をしてもらえるかもしれない。


❷来場者数が増え、満員のスタジアムで盛り上がることができる。

現状ではスタジアムを満員にできないクラブは多いと思う。
無料招待をすることで、満員かそれに近いスタジアムを作りだすことができるかもしれない。

そうすれば、クラブやリーグとしても観客動員数も増えることになるし、プレーする選手たちも嬉しいだろうし、気持ちよくプレーできるだろう。
観客が増えれば広告の露出なども増えることになり、結果としてスポンサー企業を集めやすくなるかもしれない。


❸JリーグID登録者数が増え、多くの方に情報を伝えることができる。

Jリーグの戦略では、JリーグIDの登録者数を増やすことを明確にし増している。

JリーグIDを登録してもらえれば、リーグ側から様々な情報をつながっている人に送ることができる。登録数は定量的な成果として現れるので、今回のキャンペーンのKPI(重要達成度指標)としても使うことができる。
企画を考え進めていく上ではとても大事なことなのだろう。



👉無料招待のデメリット

❶ライトな観客が増えて、相対的にスタジアムの熱量が低めになる。

今回の招待チケットは、席種もバラバラに設定されている。
熱い応援をするゴール裏の関も含まれていたりもする。
初めての方が、このような座席に入ることは応援の熱を薄めることにつながるかもしれない。

スタジアムに観客は多いけれど熱量はそこまでになっていないという状況が発生する可能性がありえるのである。
それはJリーグの魅力である観戦体験を下げてしまうものにもなる。




❷既にチケットを購入しているファン・サポーターがいる。

既に試合のチケットを購入しているファン・サポーターは多いと思う。また、年間シートなどを購入している熱量の高いサポーターも多い。
同じ座席が後出しで、しかも無料で配布されるということを知って、この方たちはどう思うだろうか。
数百円で転売されていたら、どう思うのだろうか。

普段から支えてくれているファン・サポーターをガッカリさせてしまうことはキャンペーンの設計としていかがなものだろうか。



❸無料で観戦をした人が、その後に有料のチケットを購入して継続的に観戦をしてもらえるのかわからない。

無料のチケットと有料のチケットを比較した場合、やはり無料でもらったチケットで観戦ほうが思い入れも下がるし、気持ちのノリも落ちるだろう。

一度、無料で観戦してしまうと、試合の価値は安いままで固定されてしまうかもしれない。
もし試合を見て魅力を感じて、その後、有料で試合を見ようとしても、必要以上に高いと感じてしまうのでないだろうか。


❹観戦経験は必ずしも素晴らしいものではない。

はじめて観戦をした試合で、応援しているクラブが負けてしまったらどうだろう。スコアレスドローなどゴールシーンが見られなかったらどうだろう。
気温が寒かったらどうだろう。雨だったらどうだろう。

残念ながら、Jリーグ観戦ではこのようなことが普通に起こっている。

そうした時に、がっかりして、二度とJリーグを見たくないと思うのではないだろうか。もしかしたら周りに良くなかったと広めるかもしれない。





👉サポーターからの反発


本日、このようなニュースが流れた。
サポーターからの反発があったという内容だ。

Jリーグは今月18日、6月1日に国立競技場で開催する明治安田J1リーグ第17節の鹿島アントラーズ対横浜F・マリノスで、10000名を無料招待すると公式発表。鹿島の公式サイトでも同様の特別招待企画実施が案内されているが、ファン・サポーターからは批判の声が湧き起こっている。

 「THE国立DAY」の一環として開催される鹿島対横浜FMでは、JリーグIDをお持ちの方を対象に、5000組10000名を無料招待。特設サイトにて今月18日から30日まで申し込み可能となっており、当選者にはバック上層(自由席)または サポーターズシートホーム(自由席)が割り当てられる。

しかし、無料招待のエリアに鹿島のホームゴール裏が含まれていることもあり、X(旧ツイッター)上では鹿島サポーターから「ゴール裏にばら撒かないで」「鹿島を応援する人だけゴール裏に来てほしい」「鹿島ゴール裏は特別な場所だからやめてほしい」といった反発の声が。一部のファン・サポーターは「初めて観戦する人は、メインスタンドやバックスタンドの方が見やすいと思う」などと、無料招待企画の改善策を指摘している。

 また、無料招待企画や国立開催に対する疑問の声も噴出。鹿島の公式X(旧ツイッター)アカウントには、「ホームゲームを国立でやる意味ない」「チケットを購入したファンを蔑ろにしている」といった意見も寄せられている。

この無料招待は、ゴールデンウィークの後に行われるもの。
つまり、大規模無料招待は、年間を通してずっと行われると思われる。

この記事に載っている
「チケットを購入したファンを蔑ろにしている」
の言葉を軽く見てはいけない。

積み上げるのは長い時間がかかるけれど、壊れるのは一瞬だ。

いちばん大切にしなくてはならないファン・サポーターの感情を無視し、存在を数字としか見ていないようなことは絶対にしてはならない。



逆にファン・サポーターを味方につけられれば、こんなに頼もしいことはない。無料招待というキャンペーンを行うのであれば、ただばら撒くということはせずに、もっともっとファン・サポーターにことを頼るべきだ。

もっともっと頭を使って考えるべきだ。


(ファンベース視点で考えた活用アイデアはこちらで書いています)



大好きなJリーグだからこそ、その価値を自ら下げるようなことはしないでほしい。




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このマガジンでは、今年もスポーツファンの熱量を高め、熱狂のスタジアムを作っていくことを書いています。


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