マガジンのカバー画像

真夜中の森を歩く

32
昔に書いた小説です。重め、暗めの近代小説です。お暇がある方は、読んでみてください。
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

【新連載】真夜中の森を歩く 8-2

テーブルには食い散らかされたあとの皿が何枚も並べられていた。唐揚げの皿にはレモンが転がり…

takayama
4年前
1

【新連載】真夜中の森を歩く 8-1

ユキとのセックスは日々の進行と共に日常の中に埋没していった。はじめてユキの身体の中に入っ…

takayama
4年前
3

【新連載】真夜中の森を歩く 7-4

夕方から振りだした雨によって冷え込んだ空気にミツロウは身体を震わせた。布団の隅で丸まって…

takayama
4年前

【新連載】真夜中の森を歩く 7-3

ユキとの同棲によって女性との身体的接触の際に感じるミツロウの罪の意識は少しずつ薄らいでい…

takayama
4年前
2

【新連載】真夜中の森を歩く 7-2

夏の夜のにおいがした。アスファルトが日中にため込んだ熱気を発している。ミツロウは額から流…

takayama
4年前
1

【新連載】真夜中の森を歩く 7-1

高橋の恋人アリサの母親が経営するスナック「エイミ」にミツロウは足繁く通った。最初こそ高橋…

takayama
4年前
1

【新連載】真夜中の森を歩く 6-4

店内は煙草のにおいで充満していた。薄暗い照明にゆらゆらと煙の筋が浮かんでいた。カウンターに座る高橋はビールを勢いよく流し込むと「つまみ」と大きな声で叫んだ。カウンターの内側にいた中年の女性が皿に柿の種とポテトチップスを盛り、高橋の前に差し出した。 「乾きものじゃなくてさー、もっとあったかいものくれよ、手作りのさ」 高橋はそう言いながらも皿の上の柿の種を手で掴み、口に入れた。わざとらしく音を立てて咀嚼すると、頑丈そうな顎が上下に動いた。 ミツロウはその顎を凝視しながら自分

【新連載】真夜中の森を歩く 6-3

ミツロウは休日も高橋と過ごすことが多くなった。高橋の強引なまでの誘いを断るのは難しかった…

takayama
4年前
3

【新連載】真夜中の森を歩く 6-2

就業時間を過ぎた建設現場は人気もなく荒涼としていた。冷たい風が吹き、資材を覆っているビニ…

takayama
4年前

【新連載】真夜中の森を歩く 6-1

日々は遅滞なく進んだ。ミツロウはそれが不思議なことのように思えた。深夜の教会での出来事以…

takayama
4年前
2

【新連載】真夜中の森を歩く 5-4

薄い闇を瞳が映していた。闇は静かにミツロウを包んでいたが眠りはやってこなかった。 ミツロ…

takayama
4年前
3

【新連載】真夜中の森を歩く 5-3

父が再婚をした。痩せ細ったどこか鳥を連想させる女だった。女は三歳の男の子を連れていた。そ…

takayama
4年前
1

【新連載】真夜中の森を歩く 5-2

鉄板の上にあるハンバーグを一つ一つ小さく切っていく。ソースの焼けるにおいが食欲を掻き立て…

takayama
4年前
1

【新連載】真夜中の森を歩く 5-1

ミツロウの退学が正式に決定した。前田さんはミツロウの話を丁寧に聞き、最後まで高校に行く意義を諭した。しかしミツロウの意思は変わらず、前田さんの誠意もそれを変えることはできなかった。ミツロウの退学を伝える前田さんに父はなにも言わなかったが、その顔には明らかな侮蔑の色が浮かんでいた。 同級生が二年生へと学年を一つ上がると同時にミツロウは社会的に何者かわからない人間になった。学校へは退学の前からほとんど行ってはいなかったが、通学への強制が正式になくなったことは精神的に楽だった。