【新連載】真夜中の森を歩く 5-1
ミツロウの退学が正式に決定した。前田さんはミツロウの話を丁寧に聞き、最後まで高校に行く意義を諭した。しかしミツロウの意思は変わらず、前田さんの誠意もそれを変えることはできなかった。ミツロウの退学を伝える前田さんに父はなにも言わなかったが、その顔には明らかな侮蔑の色が浮かんでいた。
同級生が二年生へと学年を一つ上がると同時にミツロウは社会的に何者かわからない人間になった。学校へは退学の前からほとんど行ってはいなかったが、通学への強制が正式になくなったことは精神的に楽だった。