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「圧倒的に生産性の高い人」に共通する考え方とは?『イシューからはじめよ』読みどころ紹介

仕事の生産性を高め、より良い成果を出すためにはどうすればいいか?多くのビジネスパーソンが日々向き合っているこの命題に、シンプルかつ本質的な考え方を示してくれるのが、『イシューからはじめよ』です。

本書では「本当に優れた知的生産には共通の手法」があり、そのカギを「イシュー」と捉え、イシューとは何なのか?イシューがどんな役割を果たし、どのように役に立つのか?をじっくりと説明しながら、「圧倒的に生産性の高い人」になるための考え方を紹介しています。

著者・安宅和人氏は、マッキンゼーでのコンサルタントを経て、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。学位取得後、再びマッキンゼーに戻り、現在はヤフーでCSOを務める傍ら、慶應義塾大学の環境情報学部教授や、データサイエンティスト協会理事なども務めています。このように「科学者とコンサルタント、そしてビジネスの現場という不思議な経験のミックスのなかで学んできた」という安宅氏ならではの、問題解決の方法を存分に学べるのが本書の特徴です。

なぜ、イシューが重要なのか?

あなたは労働者ですか?ビジネスパーソンですか?プロフェッショナルですか?
と聞かれたら、皆さんはどのように答えるでしょうか?

安宅氏は、「労働者」を「特定作業のために拘束時間に対して給料をもらうことを指す言葉」と述べ、「サラリーマン」も同じような概念だと言います。一方、「ビジネスパーソン」は「会社に雇われているが、マネジメントや自分の仕事に関わるハンドルを握る側の人というのが本来の意味だ」と説明し、労働時間ではなくアウトプットで評価されることを指摘。さらに「プロフェッショナル」は「特定の訓練に基づく体系的なスキルをもち、それをベースに特定の価値の提供にコミットし、特定の顧客から報酬を得ている人」だと言います。

本書で言う「圧倒的に生産性の高い人」とは、この中の「プロフェッショナル」のことを指します。労働時間の長さではなく「どこまで変化を起こせるか」というアウトプットの価値に応じて対価をもらい、評価される。「そんなプロフェッショナル的な生き方へスイッチを入れることが、高い生産性を生み出すベースになる」と語られています。

では価値のあるアウトプット(=バリューのある仕事)とは一体なんでしょうか?安宅氏は、取り組むテーマの「イシュー度の高さ(おかれた局面でこの問題に答えを出す必要性)」と、そのイシューに対する「解の質(どこまで明確に答えを出せているか)」の両方を高めることが、バリューのある仕事につながり、世の中に意味のあるインパクトをもたらすことができるのだと解きます。そして、多くの人は「「解の質」が仕事のバリューを決める」と考えており、「「イシュー度」、つまり「課題の質」についてはあまり関心を持たない傾向がある」とも述べます。確かに、課題に対してより良い答えを出そうとするケースは多いと思いますが、課題そのものの質を問うケースはあまり多くないかもしれません。

「世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。」

と著者が述べるように、そもそも取り組む必要性が低い問題に対して、どれだけ素晴らしい質の解答を導き出したとしても、クライアントや評価者にバリューを提供することはできない=「圧倒的に生産性の高い人」にはなれない、ということなのです。

一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでいたら、本当に大切なことをやっているひまがないうちに一生が終わってしまうんですよ。――利根川 進

といったように、著名人の名言を通して理解をより深められる点も本書の読みどころ。この利根川氏の名言にもあるとおり、一生の研究時間は限られています。だからこそ、バリューのある仕事を実現するならば、まずは解くべきイシューを見極めることからスタートし、特定したイシューの解の質を高めていくことが重要なのです。

イシューからはじめるために欠かせない「良い仮説」

では、どうやって「イシューを見極める」のか?著者は「やってみないとわからないよね」ではなく「強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心」と述べています。

どういうことかというと、例えば、「〇〇さん、新しい会計基準についてちょっと調べておいて」といった仕事の振り方はよくあるのではないでしょうか?しかし、これでは仕事を振られた人は「いったい何をどこまで、どのようなレベルで知ればよいのかがさっぱりわからない」のです。

そこで、仮説を立てるのです。例えば、新しい会計基準になることで「わが社の利益が大きく下がる可能性があるのではないか」「わが社の利益に対する影響が年間100憶円規模あるのではないか」といったものです。仮説を立てると、調べるべき内容が明確になり、価値あるアウトプットにつながるようになります。

また、他の例では食品メーカーで「ある商品Aが売れない」という理由を検討するケースでは、「商品力がない」または「販売方法がよくない」、どちらのイシューにするのかによって戦略は変わってきます。

本書ではこのように具体的な話を交えて、なぜ仮説を立てることが大切なのか、よいイシューの条件とは何なのかについて説明し、さらに先ほど触れた「問題かもしれない」「ちょっと面白いな」といった、本当は答えを出す必要のない「なんちゃってイシュー」に惑わされないようにすることについても解説しています。詳しく知りたい方はぜひ本書をお読みください。

「解の質」をグッと高める方法とは?

イシューを見極めたら、次は「解の質」を高めることに取り組む必要があります。

同じテーマでも、仮説の立て方が周到かつ大胆で、実験のアプローチが巧妙である場合と、仮説の立て方がずさんでアプローチも月並みな場合とでは、雲泥の違いが生ずる。(略)――箱守仙一郎

という名言にもあるとおり、イシューを見極めたあと、どう分析し解を出すのか。そのアプローチの違いでアウトプットの質は変わります。本書の後半では質の高いアウトプットを導き出すためのステップや考え方について丁寧に解説しています。

安宅氏はイシューを分解してストーリーラインを組み立てる「仮説ドリブン」、実際に分析・検証を進める「アウトプットドリブン」、そして、相手に力強く伝わる形でまとめる「メッセージドリブン」、この3つの「三段ロケット」に沿って進めることでイシューに対する解の質をグッと高めることができると言います。

それぞれの解説については本書を読んでいただきたいのですが、例えば「限られた時間で、いかに本当にバリュー(価値)のあるアウトプットを効率的に生み出すか」という観点から、ほしい数字や証明が出ないときや、自分の知識や技ではうまくいかないときの対処法や実際に論文やプレゼン資料にまとめていく作業でのポイントも掲載されており、アウトプットの質とスピードを高めるための具体的な手法を学ぶことができます。

元マッキンゼーならではの実用的なフレームワークや論理的な方法論が充実している点は本書の読みどころの一つですが、やはり重要なのは「価値のある問題だけにフォーカスし、質の高いアウトプットを効率的に生み出そう」ということでしょう。限られたリソースの中で社会にインパクトをもたらす価値創出や圧倒的な成長を目指すスタートアップの方々をはじめ、日々問題解決に取り組む多くのビジネスパーソンが、生産性を高めるために悩むのではなく具体的に考える必要がある時に、ぜひとも読んでいただきたい1冊だと思いました。

イシューからはじめることに少しでも興味を持った方は、本書を手に取ってみてください。



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