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スタートアップ経営に必要な人材ポジションとは?どうやって集める?-vol.2

前回に引き続き、Gazelle Capital株式会社の石橋代表と、東芝テックCVC推進室長の鳥井の対談インタビューをお届け。第2回のテーマは、「スタートアップ経営に必要な人材ポジション」。さまざまなスタートアップを支援してきたVCやCVCの立場から、スタートアップが成長していくために必要な組織や人材について聞いてみました。

リードをつくれるマーケティングのプロや、営業力の高い人材がキーパーソンに

ーースタートアップ経営は創業者に注目が集まりがちですが、優秀なナンバー2やエグゼクティブ職の存在もスタートアップの成長に欠かせないと思います。お二人はいろんなスタートアップと関わってきた中で、成長する企業に共通するキーパーソンや、こういう素養を持った人材がいるとCVCとして心強いというポイントはありますか?

鳥井:CTOとCOOに優秀な人材がいる企業は最終的にうまく回っている印象があります。

石橋氏:私もそう思います。特にマーケティングにすごく詳しい人やセールス力が非常に強い人がいるスタートアップは、初動のトラクションがかかりやすいと感じています。モノが十分に揃っていない創業期でも、業界知見と強い想いのある経営者のもとにリードをつくれるマーケターや売る力を持った営業がいれば、着実に成長していけるのではないでしょうか。

鳥井:そうですね。最初はCEOが自らクロージングして案件獲得するケースも多いと思うのですが、そのセールスパイプラインを仕組み化して拡大していくのがCOOまたはCMOの役割です。また、CEOが考案したプロダクト/サービスの品質を高めたり、スピード感を持ってリリースさせる役割を担うのがCTOだったりします。いろんな企業を見ているとそういったポジションの方がキーパーソンになっているんですよね。

石橋氏:東芝テックさんの事業領域だと、比較的早い段階でCFOが入ってくるケースもありますか?

鳥井:そうですね。ただ、個人的にはCFOを入れるのは、事業ステージの最後のほうで良いと思っているんです。それこそ、VCが入っているスタートアップの場合、私はVCをCFOとして捉えているフシもあります(笑)。

石橋氏:なるほど(笑)、確かにCFO的な役割を担っていることはあるかもしれません。

ーー重要なポジションに適した人材が見つからなくて困っているケースもあると思うのですが、人の集め方が上手なスタートアップはどんなことをしているのでしょうか?

鳥井:VCから良い人材を紹介してもらうパターンがありますよね。VCはいろんな業種の多種多様なスタートアップに投資をしているので、人材のコネクションが豊富なんです。例えば、支援先のスタートアップが残念ながらうまくいかなかったときでも、そこで働いていた優秀な人を他のスタートアップに紹介したり、既に引退されているけど専門領域に詳しい方を紹介することもできますよね。

石橋氏:まさしく、最近は他社との差別化要素としてタレントエージェント機能に注力するVCもでてきています。数千人規模のタレントリストを揃え、投資先のスタートアップに必要な人材を紹介する。そのようなVCを活用した採用活動は、今後のトレンドの一つになりそうですね。

鳥井:そうですね。スタートアップが自分たちだけで良い人材を集めるのには限界がありますし、実際に採用に苦労されている話をよく聞きます。人材紹介はCVCではなかなか提供できない機能なので、すごくユニークな取り組みだと思って注目しています。

CVCとVCの双方を有効活用するには?

ーーCVCとVCの役割分担といいますか、スタートアップが双方のアセットを有効活用する上で理想的な整理の仕方はありますか?

鳥井:まず陥りやすい罠として、CVCの方がVCよりもバリュエーションが緩いという理由で、VCを入れずにCVCからの資金調達を選択するケースがあります。しかし、リードVCのいないスタートアップがCVCからの資金調達だけでやり切れるのかというと、なかなか難しい側面があると思っています。VCのサポートを受けなくても自走できるチームなら良いと思うのですが、現実的にはそのようなスタートアップは少ないですよね。

石橋氏:例えばセーフィーを創業した佐渡島さんのようにファイナンシャルリテラシーが非常に高い起業家であれば、VCを入れずにCVCからの資金調達だけでIPOまでいける可能性もあると思うのですが、そうでなければ最初はリードVCを迎え入れて、事業成長の手段として事業会社のCVCとの連携も進めることが大事なのかなと思います。

鳥井:プレA〜シリーズAぐらいのステージまでは初めはVCを迎え入れて、その後CVCと連携する座組が一番理想的な気がします。VCに求められる役割とは、経営メンバーを強くしていくことや、企業価値を早く高めるグロースハック的な観点としての支援、そして次の資本政策に向けた目標を設定してリードしていくことです。一方、事業会社のCVCは自分たちの事業に関連した領域の成長をサポートしたり、アセットを提供する役割を担っています。自分たちの会社がスピーディに成長していくためには、どんなサポーターが必要で、どこからお金を集めるのか。それを判断する能力も、スタートアップの経営者にとって大事な要素の一つですよね。

石橋氏:ちなみに、投資先の企業で東芝テックさんを有効活用しているスタートアップはありますか?

鳥井:私たち自身も“こういう使われ方があるんだ”と感じた点として、HataLuck and Personさんのケースがあります。彼らは当社の営業がお客様に売りやすいプロダクトを持っているということもありますが、東芝テックの支社展示会に出展すると、足を運んできたお客さんだけでなく、当社の支社営業と積極的にコミュニケーションを取っているんです。実際に営業と良好な関係を築いておくことで、展示会後も営業経由でリードを提供してもらえることがあります。これは他のスタートアップにとっても良いノウハウなので、今後は仕組み化していきたいと考えています。

石橋氏:確かに、営業の方とウェットな関係性を築いているというのはおもしろいですね。採用が上手なスタートアップの中には人材紹介エージェントとの関係構築を行ない、結果的に優秀な人材を獲得しているケースも聞きますので興味深いです。

ーーVCの有効活用はいかがでしょうか?

石橋氏:VCは、CVCのように既存の事業アセットを提供しているわけではないのですが、VCの特徴の一つが、関係資産アセットを持っていること。VCはスタートアップだけでなく、さまざまな業界のCVCとのコネクションも強いので、それをうまく活用しているスタートアップの方はいますね。例えば資本提携ではなくまずは業務提携という視点で、場合によっては早い段階でCVC担当者をご紹介して適切な事業部署につないでいただき、サービス導入をご検討いただくことでリード生成やセールスに生かしているケースがあります。

資金調達においてもリードVCが次の投資家を紹介するというようなことはよくあるので、そういったVCが潜在的に持っている事業会社のリードの関係資産をうまく生かすという使い方は有効だと思います。

ーーありがとうございます。次回はスタートアップがVC・CVCとコンタクトを取る際に押さえておくと良いポイントについてお話しいただきたいと思います。

【YouTubeチャンネル「スタートアップ投資TV」で東芝テックが取り上げられました!】

資金調達や創業初期のスタートアップ起業家向けに有益な情報を発信するGazelle Capitalの公式YouTubeチャンネル「スタートアップ投資TV」に鳥井が全3回にわたって登場しています。東芝テックCVC立ち上げの経緯やカバー領域、スタートアップとの信頼関係の構築方法、陥りやすい罠などを詳しく話しているので、この機会にぜひご覧ください!

■リテール領域のアセットを活用した相互成長が可能なCVCとは?

■新規事業立ち上げのプロが直面した大手のジレンマと解消手段

■選ばれるための施策と陥りやすい罠を解説!


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