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人手不足を解消するロボット活用。飲食やその他業界での可能性も

最近、商業施設でロボットが道案内をしてくれたり、飲食店で配膳ロボットが料理を運んでいるのを見かけたことはありませんか?

ここ数年、企業によるロボット活用の実証実験が進み、中には本格導入に至ったケースも出てきています。他にも、2019年に経産省が「ロボットの社会実装を促進するためのタスクフォース」を立ち上げたり、NEDOが今年7月に発表したリリースでは、「ロボットフレンドリーな環境」の構築に向けて、小売店舗における棚の欠品検知といった在庫管理や自動陳列を実現するための研究開発を実施すると表明しています。

一方、海外ではWalmartが在庫管理ロボットの使用を中止したり、配膳ロボットで有名なスタートアップが資金難で従業員を解雇したという報道もありました。

このように様々な動きがある中で、今回も小売業DXのコンサルティングを行う郡司昇氏に、今後のロボット活用のニーズや浸透のポイントをお聞きしてみました。

ロボット活用は手段の一つ。導入時に考慮すべきポイントは?

――今回はじめにお聞きしたいのは、飲食店のロボット活用です。国内でも配膳ロボットを導入しているチェーン店も出てきていると思いますが、飲食店のロボット活用は今後も進むのでしょうか?

郡司氏:まず配膳ロボットに関しては、通路が狭いお店だとロボットが動けないので、スペースを確保するためには席数を減らさないといけません。そこで席数を減らしてでもロボットを導入すべきなのか、費用対効果の判断が出てくると思います。ロボットはあくまでも効率化のための手段です。そもそもオーダーのために人手がかかっていますので、こういったレベルのことを人手を介さないでやるようにする、テーブルオーダーの仕組みを検討するのがロボット活用を検討するよりも手順としては先になるかもしれませんね。

――では、調理ロボットはどうでしょうか?

郡司氏注文数が多ければ費用対効果が成り立つと思います。調理ロボット活用には料理の品質のばらつきがなくなるというメリットがあるので、そのニーズがある飲食店では導入効果が得られそうですよね。

――具体的にどのようなシーンだと効果がありそうでしょうか?

郡司氏:例えば親子丼って、作る人によって品質にバラつきがあると思いませんか?卵の焼き加減によって味わいが変わりますよね。そのような料理を一定のクオリティで同じように作るという作業は、ロボットが得意とする領域です。ただ、画像認識と温度測定でちょうど良いタイミングをアラートで知らせるなど、ロボットではない仕組みを使っても成り立つとは思うので、ロボットが最適な形なのかは考えないといけませんね。

――そうすると、お店のジャンルや扱うメニューによってロボットとの相性は変わってくるのでしょうか?

郡司氏:日本でもパスタや蕎麦の自動調理ロボットが話題になりましたが、同じ注文が沢山入るような専門店のほうがロボットとの相性は良いと思います。複雑な調理やメニューが増えてくると結局、人へのトレーニングが必要になりますし、スタッフが対応する作業が多くなります。

あとは店ごとの味のばらつきを減らしたいというチェーン店は可能性があるかもしれませんね。

――ちなみに価格帯は関係ありますか?高級路線のお店でもロボットは活用できるのでしょうか?

郡司氏:例えば、高級なお寿司屋さんで職人さんではなくロボットがシャリを握っていたら、どんなに美味しくてもやっぱり抵抗感がありますよね。食事の満足度は気分や雰囲気も大きな要因になるので、そこはお客さんの立場でしっかりと考えないといけないポイントですよね。

――確かに、お店のコンセプトやお客様のニーズに合わせて考えることはロボット活用の必要性を判断する上で重要ですね。

ロボットのサブスクサービスなど、敷居を下げる工夫に可能性も

――ロボットの導入はハードルが高い印象ですが、例えば、サブスクリプション形式などで導入費用の敷居を下げられると、もう少し試してみる企業も増えるのでしょうか?

郡司氏:そうですね、人間と全て同じことができなくてもスタッフ一人分(例:20万円/月)の仕事をしてくれればよいので、費用とロボットのコストが同程度になれば、導入する可能性は高まると思います。

実際、小売企業でPoCを行うとロボット活用自体のメリットを実感できるケースも少なくないようなので、例えばサブスクリプションサービスとして比較的導入しやすい価格設定にできれば、1年間だけ試してみようという話になるかもしれません。あとは費用対効果をどこまで工夫して設計できるかだと思います。

――なるほど、飲食店や小売店舗はいろんな形態のお店がありますが、どんな環境でもロボット導入は可能なのでしょうか?

郡司氏:ロボットを導入するのであれば、先ほども述べたように店内でロボットが安全に通れるスペースを確保した上で座席を確保するなど、それに合わせた店づくりが必要になります。

ロボットを活用した店舗運営で費用対効果を出すためにメニューや価格設計、など運営形態含め新しい業態を創るということを考えないとならないので、今の店舗の延長線上で考えると難しいですね。

――最後に、小売・飲食業界に限らず、ロボット活用と相性の良さそうな業界はありますか?

郡司氏介護業界との相性はすごく良いと思います。介護はする方もされる方も精神的・肉体的負担が大きいので、ロボットが代替する余地があります。

例えば、介護ロボットのサブスクリプションサービスを活用して、採用活動中で人が足りない数ヶ月間の間だけロボットでつなぐというケースも考えられるかもしれないです。

また、日本で優秀なロボットが作れたら国内で採算が合わなくとも輸出をするといった海外展開のチャンスもありますし、これからの需要を考えると介護のロボット活用には大きな可能性があるのではないでしょうか。

――介護に関連して、家事・育児サービスのロボット活用は可能性がありますか?

郡司氏:家事で言うとお掃除ロボットは既に世の中に浸透していますよね。ロボットではないですが食器洗い機も家事を代替してくれています。洗濯も自動化できていますが、個人的には洗濯物を乾燥させて畳むところまでやってくれるロボットが欲しいなって思います。家電製品の開発はスタートアップをはじめとするD2C企業も続々と参入しているので、ブレイクスルーが起きるようなプロダクトの登場に期待しています。

――そうですね、今後のロボット活用動向を楽しみにしたいと思います。ありがとうございました。

小売のロボット導入における費用対効果の重要性や活用の可能性については「ITmedia ビジネスオンライン - リテール大革命」でも詳しくお話しいただいていますので、興味のある方はこちらもぜひご一読ください。


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