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“鮮度と価格”で勝負する! 群馬県で大人気の生鮮食品のディスカウントストア「アイザワ」

2023年、食品の値上げが様々なところで取り上げられている中、セール品をタイミングよく購入したり、まとめ買いをするなど、「買い物をいかに節約しやりくりするか」ということは日々の重要な課題ではないでしょうか?
そんな中、常に新鮮な食材を売るだけではなく買い物客が〝お得〟と実感できる価格を打ち出している人気のお店があるようです。
今回はそんな「主婦の味方」をモットーにするディスカウントストア・アイザワの魅力を、「食品商業」編集長 毛利英昭さんにレポート頂きました。

群馬県の太田市、高崎市、館林市に4店舗展開し、地元住民に熱烈なファンを持つ生鮮ディスカウントストア・アイザワ。
今回は、2021年3月に社長に就任された2代目の相澤一宏氏に、人気の秘密を伺いました。

〝鮮度と価格〟で主婦の味方になる

アイザワは、株式会社相澤総合食料品店(1968年創業)の次男であった相澤昇氏(現会長)が、2004年3月に独立して開店した食品ディスカウント・スーパー。相澤食料品店は、太田市で人気の店ながら、売場面積100坪で40台の駐車場しかなく、店のことよりも駐車場での交通整理に追われることが多く、「いつかは広い店で自分らしい商売をしたい」という強い思いから1号店である太田店を開業しました。
太田店は、某スーパーが撤退した場所。撤退前の日商は、200万円を切る状態であったが、「この場所ならいける」と考え勝負に出ます。最初は苦労続きでしたが、2年で日商600万円に躍進させました。
その相澤会長のモットーは「主婦の味方」になるということ。「より新鮮な商品をより安く販売し続ける事でお客様に喜んでいただきたい」という気持ちから、できるだけ安い価格で商品を提供し、商品の回転率を高めることで鮮度の高いフレッシュな商品を供給し続ける商売に徹した。これがアイザワのポリシーであり、今も2代目である相澤一宏社長に受け継がれています。
相澤社長は、1年前から父である現会長から社長になるよう説得されていたそうです。子どもの頃から父の商売のやり方を見聞きし、20歳から店に立ち、最近は専務として陣頭指揮をとってきたから自信はあった。だが、まだ若いので時期を見ていたが、現会長の強い要請で2021年3月に社長に就任したのです。

有限会社アイザワ
本社所在地/群馬県太田市龍舞町5235
創業/2004年3月
代表者/相澤 一宏
店舗/生鮮食品ディスカウントストアー4店舗
年商/77億円
2021年3月に専務から社長に就任した相澤一宏氏。「鮮度と価格」の強みを活かしながら、誰もが求める商品を買いやすくすることと接客を大切にして、各店舗の平均日商600万円を目標として、5年後に5店舗目を出店したいと語る。

近くに大型店があるから商機がある

群馬県南東部に位置する太田市は、富士重工など自動車産業を中心に製造品出荷額2兆9千億円を超える北関東有数の工業都市。令和3年経済センサスでみると、製造業に勤務する従事者数は46, 379人で、総従業者数の約36%にのぼります。
世帯数は約98,600世帯(2021年1月現在)と比較的小規模な地方都市です。
太田市は両毛地区の中でも、北部の足利市や桐生市に比較すると、商売の難しい地域で、いわゆる堅実で価格に対して厳しい消費傾向を持つのだそうです。また、競合店や大型ショッピングセンターもあります。
しかし、創業当時に会長は、「大型店がすぐ近くになることを私はチャンスと考えました。そこへ行くお客様のほんの数%を自店に呼び込めれば十分商売が成り立つからです。私にはその自信もありました」と言い、大手が近くにあることをポジティブにとらえてアイザワ流の強みの確立に努めました。
それから約16年で順調に店を増やし、4店で年商77億円の地域住民の支持される大繁盛店となりました。

アイザワ館林店
所在地/群馬県館林市近藤町178−96
売場面積/710坪
年商/約21億円
日商/約575万円
坪年商/約450万円
最も重視する入り口正面。来店客が思わず「安い!」と目を輝かせる。
相澤社長は、「入り口は、お客様にどんな店か印象を決定付ける大事な場所です」
というように、毎日お買い得品が並ぶ。

青果の徹底した安さと鮮度を強みに口コミで顧客を増やす!

アイザワは、オープン直後を除きチラシによる販促は行っていません。販促といえば、月1回の「アイザワ祭り」と曜日特売の店内告知だけ。
ポイントカードの導入を考えたこともあったが、「それより少しでも安く商品を販売する方がお客様のためになる」と一切の販促は行わず、今も全て現金販売に徹する。
それでも各店舗の平均日商が約460〜580万円を超えるのは、すべて評判が評判を呼ぶ口コミ効果です。
口コミの理由は、“安さと鮮度”に尽きます。特に青果は、相澤社長が最も力を注ぐ部門であり、アイザワの顔といえる存在。それだけに青果の商法は、思い切った大胆な方法であり、「他社が真似しようにもなかなかできないはず」と豪語するほどです。
それは商品の特性に応じた大胆な値入に秘密があります。相澤社長の考え方は一貫している。鮮度の悪くなったものを見切り価格で値下げして売ってもお客様はちっとも喜ばない。鮮度が良いうちに売り場の状況や仕入れの量を考えながら、どんどん値段を下げていく。
鮮度の良いものがまるで見切り価格のように売られるのだから、お客様が喜ばないわけがありません。
また、「とにかく来客数が大切」という考え方も会長と共通する。一つ一つの商品から利益を考えていくのは当たり前だが、まずお客に来ていただかなくては何にもならないことを強調する。「どんなに薄利であっても商品が回転すれば、額は少なくても利益はついてきます」と語ります。
実際、日常的に良く使うキャベツ、大根、レタスなどの陳列と値入は極めて戦略的です。入り口を入ってすぐ正面に、日常的によく使う野菜を積み上げ、思い切った値入で安さを強調。
この一瞬が勝負です。店内に入ってパッと目に飛び込む商品の鮮度と価格のインパクトで、お客様の店に対する印象は決まります」と、一見無造作に積み上げられたかのような商品の狙いを語ります。
アイザワの最大のイベントは、毎月1回日曜日に行う「アイザワ祭」。普段から値段の安いアイザワが、驚き価格で商品を販売するとあって、朝9時のオープンを待たずに駐車場や店の前に行列が続きます。
レジにも長蛇の列ができ、館林店ではレジ待ち40分になることも珍しくない。それでも圧倒的な安さと鮮度に魅了され、毎月楽しみにするファンが大勢いるのです。

自分たちで自ら目利きして納得したものしか買わない

店内入り口でアイザワの安さと鮮度を実感したお客は、店の奥へ誘われるように進んでいく。しかし、見せ筋で誘って、儲け筋を買わせるといった細工はアイザワにはありません。野菜に限らずフルーツ類も安い。青果に限らず、鮮魚も精肉もその他の商品もできる限り安く売るのです。
売り場をみていると、儲けてやろうというよりも、お客に喜んでいただきたいという気持ちが先行しているのがわかります。それが商品の価格に現れています。
だから商品の回転は極めて速い。品出し陳列したそばからどんどん商品がお客の買い物カゴに吸い込まれていく。
安く売るには仕入が大切なのは言うまでもありません。各店のバイヤーが自ら市場に足を運び目利きする。相澤社長も仕入に併走する。これはという物があれば、勝負とばかりすべて買いとる覚悟で思い切った仕入をする。
一つだけ、マグロだけは会長が仕入れるそうです。群馬県は、海なし県だが、マグロの消費量は、静岡県、山梨県に次いで全国第3位。寿司屋や居酒屋で刺身と言えばマグロのことです。
お客のマグロを見る目は厳しいが、圧倒的にマグロが売れる。その仕入は会長がまだ譲りません。
また、低い値入で大量に販売するためには、価格に転嫁されるような経費のカットが不可欠です。
野菜をハーフカットするなど余計な作業は極力行わない。鮮度が良い状態でどんどん売れていくから、商品を作り直す必要もありません。
また、従業員のユニフォームもあえて作らず、普段着にエプロンを一枚まとうだけ。
こうした商品の価格に転嫁される要素になりうることをできるだけ除外し、商品の実質的な価値を顧客に訴求するのがアイザワの商売です。
勿論、お金をかけるところにはきっちり投資もする。作業性を高めるためのバックヤード増床や、衛生管理上問題となりそうなハードは早め早めに投資して対処する。
HACCPへの対応にもいち早く取り組み、店長が衛生管理責任者、HACCP責任者となって、衛生管理面の指揮をとる。
やらなければならないことは沢山ありますが優先順位をしっかり考え投資しています」とのことです。

坪年商400万円超、青果と精肉で50%を占める!

アイザワの顔は青果。どこよりも安くどこよりもフレッシュな商品を求め、遠方からも顧客が通うほど。その影には、顧客の購買心理を読み、その場限りではなく長い目でお客を引き寄せる計算があります。
例えば、原価が仮に70円であっても、売れる価格が38円であれば、赤字であっても売り続けるという。そうすることで利用機会が増えて、売れるようになっていくのです。
家庭で使う習慣ができれば、少しずつ商売になる値段へ移していく。消費者に食べ方を伝えながら商品を育てていくのです。
そのためには接客が大切だといいます。スイカとメロンを手にして悩んでいるお客を見れば、どちらが何故お薦めなのかを説明する。価格と鮮度に加え、接客を重視しお客の声に耳を傾けて、お客が望むことに力を入れています。
2年間のコロナ禍でお客様に一番喜ばれたのがカゴとカートの消毒です」と社長は言います。お客が最も心配していることに耳を傾け、いち早く各店舗に消毒専任者を配置した。朝から晩まで、買い物カゴとカートの消毒を行うことで、鮮度と安さだけで無く、安心・安全に買い物して頂くことを実践しています。
相澤社長は、「専任者を置くことでコストは増えますが、それに代えがたい信頼を得ることが出来ます」とお客の声を聞く重要性を説きます。

目標日商600万円! 5年後には5店舗目を出す!

厳しい商売を強いられるとの周りの声があった中で、目標日商2,000人・400万円を勝算ラインと考えてスタートしたアイザワ。
スーパーマーケット業界の平均客単価が、約1,800円〜2,000円のところ、約3,000円と非常に高い。それだけ買上点数が高くまとめ買い客が多いということです。
日商も各店舗とも約400万円と安定している。それはお客様に支持されているからに他ならないが、それは儲けでは無く損から入る商売に徹した相澤会長とその意志を継いだ相澤社長さらに従業員の努力の賜物と言えるでしょう。
今後の目標はまず、全店の平均日商を一番売っていた頃の600万円にすること。これまでの最高日商は650万円なのでできないことはないといいます。
そして5年後には新店を出すこと。そこを今の幹部にやってもらう。そのためには、新たな幹部育成が重要です。店作りは人作りからということでしょう。
さらにいつかPBにも挑戦したいという。アイザワブランドの商品を開発して販売するという目標もいずれ現実のものになるのではないでしょうか。

館林店にはじめて導入されたセミセルフレジ。
10レーン中、3レーンだが、レジ待ち時間短縮に貢献し、
流れもスムーズになるなど良い結果を示しているという。
また、POSデータも積極的に活用している。
「今の若者はちゃんと数字で示さないと納得してくれないところがあります。
毎日、毎週、毎月の売上データを共有して課題を明確にして計画を立てることが大切と思います」
と相澤社長は言う。

(取材・文:「食品商業」編集長 毛利英昭)

群馬県内で4店舗・年商77億円を稼ぐディスカウントストア「アイザワ」の戦略を毛利編集長にレポートしていただきました。
アイザワの戦略を紐解いていくと、経営資源の投資から売り場づくりまで、「選択と集中」が徹底されていることが分かります。日常的なチラシ販促やポイントカード、従業員ユニフォームなどには一切手を出さずに経費を削減し、バックヤードの作業効率化やHACCPへの対応など、働く環境作りや品質管理には惜しみなく投資する。そして何よりも、「お客様に喜んでいただく」ことを第一に仕入や値入をしているからこそ、瞬間的には赤字を出してでも強烈なインパクトを持つお店づくりを実現しています。
その結果として、スーパーマーケット業界の平均水準よりも高い平均客単価につながっているのだと思いました。
物価高の影響が日常生活に及びつつある昨今、アイザワのような“鮮度と価格”で勝負するスーパーの存在感はますます高まりそうです。出店戦略にも長けたアイザワが5店舗目をどこに展開するのか、そしてPB商品の開発も含めて、今後どのような発展を遂げるのか、引き続き注目したいと思います。


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