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「BOPIS」「Click & Collect」「カーブサイドピックアップ」それぞれの違いとは?

コロナ禍をきっかけに、海外ではBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)カーブサイドピックアップなどの新しいサービスが急速に浸透しています。以前noteでも「アフターコロナも継続利用?小売店舗のサービスとは」というテーマで、小売業のDXに関する有識者である郡司昇氏にBOPISのメリットや可能性をお話しいただきました。

今回も郡司氏にご協力いただき、改めて「BOPIS」や「Click & Collect」「カーブサイドピックアップ」について整理していただきつつ、日本で導入する上での課題やチャンスについてもお聞きしてみました。

――はじめに、新しい買い物体験として耳にすることが多い「BOPIS」や「Click & Collect」「カーブサイドピックアップ」、それぞれの違いを改めて聞いてみたいと思います。

郡司氏:Click & Collectは、オンラインで注文した商品を自宅以外で受け取るショッピングスタイル全てが該当します。例えば、Amazonで注文した商品をコンビニで受け取るのもClick & Collectに該当します。BOPISもClick & Collectに含まれますが、BOPISの場合は自社オンラインタッチポイント経由で購入して、同一企業の店舗での受け取りに限定している点が特徴です。カーブサイドピックアップは店舗に車で訪問し、降りずに商品を受け取る方法なのでBOPISの一形態と言えるでしょう。

海外ではWalmartやTarget、The Home Depotといった大手小売企業でもBOPISやカーブサイドピックアップが浸透していますが、日本だとユニクロやGU、ワークマン、しまむらなどのアパレルメーカーで少しずつBOPISの導入が増えてきています。

――日本のBOPISと、海外でWalmartなどが提供しているBOPISとの違いはありますか?

郡司氏:一つ言えるのは、「モノの流れが違う」ということです。WalmartのBOPISは受け取り拠点となる店舗の売り場とバックヤードにある商品を含む“お店にある在庫”をピックアップするケースがほとんどです。日本だとヨドバシカメラやカインズが同じようにお店にある在庫を活用したBOPISを展開していますね。

一方、しまむらやワークマンの場合、オンライン注文が入った商品を物流センターから受け取り拠点の店舗に届けるサービス形態です。企業側のメリットとしては、通常の店舗納品と同じ便でオンライン注文の商品を運べるので、そこまでコストをかけずに便利なサービスを提供できます。顧客側も受け取りまでに少し時間はかかるものの、送料無料で利用できるメリットがあります。

ユニクロやGUも以前はセンター在庫を使っていましたが、現在は店頭に在庫があれば最短2時間でピックアップが可能になる「ORDER & PICK」というサービスを展開していますね。

――Click & CollectやBOPISは、今後いろいろな業種に広がっていくのでしょうか?

郡司氏:そうですね、Click & Collectで言えば、最近だとオンライン服薬指導で処方された薬をコンビニで受け取るサービスが都内の一部で始まるなど、新しいチャレンジも生まれています。

BOPISに関してもドラッグストアのクリエイトエス・ディーやスギ薬局が日用品や医薬品、化粧品、食料品などをスマホアプリで注文し、最短2時間で店頭または駐車場で受け取れるサービスを提供するなど、アパレル以外の事例も少しずつ出てきています。

――なるほど、ちなみに海外でも処方箋を薬局以外で受け取るようなサービスはあるのでしょうか?

郡司氏:はい、海外だと慢性疾患などのリフィル処方で2回目以降にメールオーダーによる宅配便を利用するケースがありますね。おそらく、アメリカだと2割以上はメールオーダーではないでしょうか。

――コンビニ受け取りのサービスは今後も浸透しそうですが、課題はありますか?

郡司氏:実はコンビニ受け取りのサービスには保持日数の期限があるので、その間に受け取りがなかった場合、EC事業者の送料負担で返送するケースがあります。例えば、EC注文でコンビニ受け取りを指定した顧客が商品を取りに来なければ、EC事業者が荷物1つに対して着払い料金を負担することになります。こういった負の部分をどう解消していくかが課題の一つになると思います。

――自宅配送ではなくBOPISやClick & Collectを選択する人には、どのようなニーズがあるのでしょうか?

郡司氏:やはり配送料の有無が大きいと思います。数百円を支払ってでも自宅に届けてもらうのか、配送料がかからない代わりに店舗まで取りに行くのか。コストと利便性の両方を考えた上でBOPISをチョイスする人は一定数いると思います。

あと、事業者側の立場からすると宅配の費用がかからないので負担が軽減されるメリットがあります。例えば宅配料金が500円発生するのであれば、本当は購入者に全額を支払ってもらいたいのですが、そうすると注文が入りにくくなるため、500円のところを300円で対応しているネットスーパーもあります。1注文ごとに発生する200円の赤字がなくなると考えると、事業者側のニーズはもちろん存在するでしょう。

Walmartは通常だと宅配料金がかかりますが、サブスクリプションサービス「Walmart+」の有料会員であれば自宅配送料を無料にするという特典で対応しています。結局モノを運ぶときにはお金がかかるので、その負担を誰がどう負担するのかという話に尽きると思います。

――先日、「ITmedia ビジネスオンライン」でも、BOPISが日本に浸透する上での課題についてお話しいただきました。

その中で「課題解決にはテクノロジー活用がカギになる」というお話がありましたが、今後BOPISに取り組む小売企業が増える中で、スタートアップ企業に参入のチャンスはあるのでしょうか?

郡司氏:在庫管理や陳列状況の把握、ピックアップ最適化といった領域はまだまだ改善の余地があるので、スタートアップ企業にも十分にチャンスがあると思います。大手小売企業であっても自社開発はなかなか難しいので、SaaS型スタートアップ企業のプラットフォームを活用したり、協業という形で課題解決に取り組む事例は今後も増えるのではないでしょうか。

――先ほど仰っていた組織づくりや評価システムなどのHR領域で支援できることもありそうですね。

郡司氏:そうですね。OMOは現場任せでは絶対にうまくいかないので、上流工程の戦略や仕組みづくりが重要になります。そこに特化したサービスに対するニーズは当然出てくると思います。

――ありがとうございました。

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