Watcher #4
おれの中では、“あれ”は幻覚だというのが有力だ。
検索したところ、幻覚には、
幻視
幻聴
幻触
幻嗅
幻味
体感幻覚
が、あるらしい。
おれは“あれ”を見ているし、あれが出す音も聞いている。
触ったこともあるし、匂いは···
錆っぽい“あれ”から、すこし錆びくささが、匂ったこともある。
味は、さすがに知らない。
これらを、幻覚で説明づけようとすればできてしまう。
体感幻覚で有名なのは、幻肢痛だ。
怪我で脚を失った人物が、ないはずの脚に痛みを感じるというものだ。
聞いたことのあるエピソードだと思う。
これは、おれと“あれ”の間では関係ない。
あと···
まあ、これは信じがたいけれど···
検索してるときにみつけた話。
真っ赤に焼けた鉄の棒をある人物に見せ、そのあとに目隠しをしたその人物の腕に、常温の鉄の棒をあてたら、そこに水膨れができたという話。
この話がほんとか嘘か。
おれの検索能力ではわからなかった。
おれは、“あれ”が出す炎を触ったけど、熱さを感じなかった。
それは、“あれ”が幻覚である証拠になるのか、ならないのか···
よくわからなくなる。
幻覚であることが有力ではあるが、断定はしていない。
保留だ。
もし“あれ”が、おれの幻覚ではないのなら。
おれの見ていないところにも、存在しているのか。
例えば、誰もいない閉店後の踊り場。
消し忘れたブラックライトを浴びているかもしれない。
もっと遠い場所。
例えば深海とか。
さらに遠い場所。
例えば月の裏側とか。
そんなところに、存在しているのかもしれない。
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