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写真日記

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スナップと日記です。
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#毎日note

恐怖

恐怖

身近な恐怖の正体を探ってみると、そのほとんどは己の知識不足や、予測不能な事象といった未知が原因だという論理に帰結する。つまり、恐怖から解放されるには全知全能になる必要がある。そうなることが不可能だという事実に限っては誰しもが理解するところだ。そう考えるといちいち向き合うことが酷く馬鹿馬鹿しい行為に思えてくる。何処にでもあり、いつも身体に取り込んでいる空気程度に瑣末なものとでも認識していようか。

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水準

水準

何処に行こうが自分自身で楽しみを見つけられるだろうと自負していた。確かにこの両脚があればある程度の距離までは自力で行動することができるし、カメラを持てば一層高い水準の幸福を得ることができる。何もかもが集約された環境では最大に近い時間価値を発揮することができていたのかもしれない。しかし、広大なスケールの環境で生活してみると、どうしても物足りなさが残ってしまう。活動範囲の理想と現実に大きな差があるから

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温泉地

温泉地

温泉地にて社会で着込んだ分厚い衣を纏っていては本末転倒だ。気心知れた友人達と裸一貫で会話していると、毎晩部屋を行き交った過去を想起すると同時に、各々に社会を生き抜く術が備わり始めていることに勘付いた。嫉妬も侮蔑もなく、互いの変化を純粋に面白がるこの関係以上に価値のあるものは手元に無い。

ISO400
f14
1/100s

解読

解読

綺麗な色彩やコントラストを見かける度に写真を撮っている。その多くが偶発性のあるもので、見返しながら思い出し、余韻に浸ることが楽しみの一つだ。なぞらなければ解読できない遠回しな表現であるほどそれは増し、他人を置き去りにしてしまう。

ISO100
f16
1/60s

秋

心地よい気温は低気圧を原因とする一過性のもので、再び夏のような気候へ戻るのではないかと思っていた。しかし今、街の空気はすっかり秋の香りに満ちている。季節が変わってしまったという受け入れ難い事実と、秋特有の快適さを同時に突きつけられて困惑している。シャッターに迷いはないが。

ISO100
f4.5
1/200s

焦点

焦点

何気なく生活していると色彩を目で追っていることがある。それ自体が悪いことだとは思わない。目立つからと論なく持て囃したり、他人の価値観で左右されたりする思考を無価値と看做すことが自身の価値観の基礎であり、複雑な色彩に惑わされることはその価値観を揺らされるようで不快というだけだ。自我を確固たるものに昇華し、独自の視点を得るためには、外部からの複雑な情報を単純化するフィルターを通して極端かつ徹底的に分断

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紗幕

紗幕

首筋にヒタリと落ち垂れた冷たさに顔を上げると、紗幕のようだった空がいつの間にか鉛のカーテンと見紛う不気味さを纏っていた。最近は天気や季節、ひいては時間の経過があっという間に感じることが多い。今でも水流に飲まれた自分の足元は無視し、光の粒の異様な遅さばかりを追いかけている。

ISO1600
f11
1/60s

透明

透明

影からはより多くの光を観測することができる。光に対する感度が高くなると表現した方が正確か。世の中には明るすぎると見辛くなるものがある。透明且つ小さい雨粒のような気に止まらない一つ一つが暗所からだと煌めいて見えたりする。

ISO1600
f13
1/30s