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天翔龍閃で妻の足を踏んづけた。


ちょっと前の話になるのだが、その当時、ぼくは『るろうに剣心』の劇場版(実写版)にハマっており、Netflixで全話一気見をしていたのだが、その際に、酔っ払った勢いで悪ふざけで妻に、飛天御剣流最終奥義〝天翔龍閃〟をお見舞いした。

何を言っているか、わからないと思うので、状況を説明すると、

ちょうど『るろうに剣心 伝説の最期編』の動画を、お酒を引っかけながら視聴しているときだ。

主人公の剣心と宿敵である志々雄が、燃えさかる船の上で激しい戦いを繰り広げているシーンだったのだが、もう技を繰り出すほどの体力もない状況で、剣心役の佐藤健がフラフラになりながら、身体に溜まった熱を発散しきれず(過去に負った火傷が原因で)ボロボロの状態の志々雄(藤原竜也)に、最後の力をふり絞り、飛天御剣流の最終奥義〝天翔龍閃〟をお見舞いする映画のクライマックスで、ちょうど妻が帰宅してきた。

その時点で、自分の酔いはかなり回っており、呂律は回っていなかったと思う。

「なに? 珍しいね〜。るろうに剣心見てんの?」

妻にそう声をかけられふり返ると、仕事から帰宅したばかりの妻が立っており、

「てか、もう呑んでんの?」

と、さらに呆れる。

そんなことはお構いなしに、「ちょっといい? ちょっといい?」と、ぼくは帰ってきたばかりに妻をリビングの中央に押しやり、「なに? なんなの?」と妻がぼくの悪ふざけの犠牲になる。

映画のクライマックスを視聴していたこともあり、アルコールも入っていたこともあり、上機嫌だったぼくは、「今から天翔龍閃をするね!! 見てて!!」と、仕事帰り妻に宣言し、エアーで抜刀の構えを決める。


「ほら、構えて!!」


脳内イメージ1


嫌がる妻に無理やりるろうに剣心ごっこに巻き込む。

よしておけばいいのに、それに悪乗りした妻が、同じようにエアーで抜刀の構えを真似る。


「じゃあ、いくよ!!」


「……(無言のまま身構える妻)」


「天翔龍閃ーーーーーーーー!!!!!!!」



脳内イメージ2


そう叫んだぼくは、抜刀するフリをしながら、一歩踏み出す!!

ただ、踏み込んだ先の地面には、すでに妻の足が一足先に踏み出されており、その上に自分の足が勢いよく乗っかる。

その瞬間、妻は床に突っ伏し、悶え苦しむ……


「あああああああああ!!!!!!!!」


足を抱えた妻が、フローリングをのたうち回る。


「ちょっと大袈裟だって、そんな迫真の演技は要らないから……」


冗談かと思い、そう声をかけると、


「違う違う……、冗談じゃない……、マジで爪が……、痛っ……、うぅぅ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」


蚊の鳴くような声で訴えてくる。


恐る恐る妻が手で押さえていた足の親指を確認すると、爪が反対側に裏返っているではないか!?


さっきまでの酔いが一気に吹き飛びしらふに戻る。


今度はこっちの血の気が引く。


「どどど、どうしたらいい!? マジごめん!? あわららあわわう゛ぁう゛ぁわwっららfう゛ぁj」


動揺が隠せずにぼくは、テンパりながらあたふたするだけで、まったく使い物にならない。


「そこに……、消毒液とガーゼと、サージカルテープがあるから、それをとって……」


さすが看護師。自分の状況を冷静に見極め、右往左往するぼくに的確な指示を与えてくる。妻に指示されるがまま、救急箱をから指示されたものを取り出し、妻の指示通りに用意すると、妻が自分で自分の親指を処置しはじめる。最後に痛み止めを服用し、しばらくすると痛みが引いてきたようで、ふつうに会話が出来る状態まで回復する。


「だだだ、大丈夫……、ほ、ほんとゴメン……」


酔った勢いとはいえ、悪ふざけで〝天翔龍閃〟を繰り出し、そのせいで妻に怪我を負わせたことに、再度、謝罪すると、


「まあ、態とじゃないし、仕方ないよ……」


と、仏のようなことを言う。


その日から、しばらく償いの意味を込め、妻を職場まで送り迎えをすることになったのは、ここだけの話だ……。


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