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違うからこそ、楽しい。ふたりで広げる「くらし」のかたち。 Interview 高山 都さん安井達郎さんご夫妻

自分に合ったライフスタイルを実践する人、未来のくらし方を探究している人に「n’estate(ネステート)」プロジェクトメンバーが、すまいとくらしのこれからを伺うインタビュー連載。第7回目は、モデル・俳優の高山都さん、安井達郎さんご夫妻。

仕事柄、多くの人に会ったり、人の目に触れる機会も多い高山さんと安井さん。普段は都内での生活を楽しみながらも、休日には旅行やキャンプなどに出掛けて自然の中でのアクティビティを楽しんだりと、日々の環境に変化を与えることで、自分たちにとって“心地よい”と思える「くらし」の基準が見えてきたといいます。また、それぞれに多彩な趣味を持つおふたりが「すまい」をともにすることで、お互いの個性や価値観が心地よく混ざり合う「くらし」の変化について。飾らない、自然体なライフスタイルが人気を集めるおふたりのご自宅でお話しを伺いました。


【写真右】高山都 | Miyako Takayama 1982年生まれ。モデル、俳優、ラジオパーソナリティなどで幅広く活動。趣味は料理とマラソン。料理やうつわ、日々の暮らしを発信するインスタグラムが人気。著書に『高山都の美食姿』シリーズ(双葉社)がある。                 
        
【写真左】安井達郎 | Tatsuro Yasui  1988年生まれ。モデルとしてCMや広告、雑誌などで活躍。映像作家としてnever young beach、indigo la EndなどのMV監督を務める。近年は自身のYouTubeでVlogの発信のほか、写真家としての活動もスタート。                                                      

ハンス・J・ウェグナーのヴィンテージチェア。リビングには、高山さんがひとりぐらしの頃から「本当に心地よいと思えるものを」と選んだ、こだわりの家具や小物が並ぶ。

ー 現在のおすまいは、もともと高山さんがおひとりで住んでいらっしゃったのですよね。

高山さん(以下、高山):前に住んでいた家が、少し手狭になってきたので3年前に現在の家に引っ越しました。ただ、ここは私が住む前は男性が13年ほど住んでいた部屋だったそうで、いざ住もうと思ったらわたしのライフスタイルには合わない部分もあって。そこで大家さんに相談して、リノベーションをさせていただくことに。とはいえ賃貸ですし、当時はひとりぐらしで、この先どれくらい住み続けるかも分からない状況だったから、できる範囲の予算で部分的に。

ー 賃貸住宅のリノベーション。なかなか、思い切った決断だったのでは?

高山:そうですね。でも、わたしは「すまい」を考えるとき、いつも少しだけ背伸びして選ぶようにしているんです。もちろん不安もありますが、そうして選んだ家が自分の“うつわ”になってくれる気がして。私自身が成長することで、最初は大きかったうつわと自分の隙間を埋めていくような感覚です。ちょうどこの頃は、仕事も忙しくなってきて心境の変化もあったから、すまいを変えることで、自分も変わるかなという期待も込めて決断しました。

結果的に、風通しのいい部屋にすることができて、今の自分が一番心地よいと思える選択をすることができたと思っています。夫の達郎くんと知り合ったのもこの頃。たまたまご近所に住んでいて、コロナ禍だったこともあり、おうちでごはんを食べたり、この家で一緒に過ごすことが多かったです。ね、達郎くん? 聞いてる?(笑)

安井さん(以下、安井):聞いてますよ(笑)。

お料理好きの高山さんが使い勝手良く快適に使えるよう、リノベーションが施されたキッチン。
食器棚には、高山さんが集めた食器のコレクションがずらり。

ー 安井さんは、以前のおすまいには、どのくらい住んでいらっしゃったのですか?

安井:5年くらいですね。

高山:夫は、あまり家に執着しない人だったんです。

安井:
あえて、愛着を持たないようにしていたんです(笑)。身軽でいる方が、何か思い立ったときにどこにでも行けるじゃないですか。服とかも、なるべく持たないように。それこそ前の家では、3年くらいスーツケースひとつと布団一枚で生活をしていました。

高山:だから、最初はふたりの「すまい」に対する感覚や価値観は少し違っていたんです。わたしは、やっぱり家が好きだし、モデルの仕事をしていると家が仕事場でもある。ライフスタイルさえも、自分の“表現”のひとつになると思っているから、大切にしたくて。

安井:僕も「くらし」には興味があるけれど、その関心が“箱”よりも“場所”に向いていたんです。住む場所を変えることにも興味があって。だから、昔から旅が好きだったのかな。どう住むかは、くらしたいと思える場所に出会ってから考えるのでいい。

高山:「ここでどうくらすか」が大事なわたしと、「どこに住むか」に重きをおいていた夫。そんなお互いが持つ価値観が、ジグソーパズルのピースのように合わさって、ちょうどよくなった感覚があります。きっと、夫が合わせてくれている部分も多いと思いますが、生活の幅が広がって、厚みができた。趣味を共有したり、ふたりだからこそやれることも増えたんじゃないかな。

ー 例えば、どんな変化がありましたか?

高山:以前のわたしは友だちとホームパーティをしたり、自分の世界のなかで楽しむことが多かったから、行動範囲が狭いほうでした。対して夫は、週末には登山に行ってキャンプをしたり、もっとアクティブな趣味があって。わたしも興味はあったけれど、何からはじめたらいいか分からなかったから、夫と一緒にはじめることができたのが、いいきっかけに。すると、休日の捉え方や過ごし方も少しずつ変わっていきました。

ー安井さんの趣味だった登山やキャンプも、高山さんと行くのでは、また違った発見があったのでは。

安井:全然違いますね。それまでのキャンプは、山を歩く一環での“手段”でしかなかったんですけれど、ふたりになってからはキャンプをすることが“目的”に変わって。森のなかでくらす、みたいな過ごし方もそれはそれで楽しいものだなと思うようになりました。

ー アウトドアといえば、先日おふたりには、山中湖にある「n’estate」の拠点のひとつ「The Lodge Yamanakako by n’estate」にもご滞在いただきました。拠点に用意されているアイテムに加えて、普段ご自宅で使われている愛用品をご持参いただいておふたりらしい滞在を楽しまれていたのが印象的でした。

高山:我が家は、旅やアウトドアをするときも“日常の延長線”のような感覚で過ごすようにしているんです。キャンプだからといって、キャンプギアを集める必要はないし、普段から使っている鍋や、食器も木や金属、琺瑯などの割れにくい素材のものを選べば問題なく使えます。

器をつくる作家さんとお話しすると、みなさん「自由に使ってください」と仰るんですよ。例えば、日本酒のお猪口も“酒器”としては登場回数が少なくても、薬味を入れてみたり、大皿の仕切りのように使ってみたら便利で、たちまちスタメンになる。ものに限らず、「こうあるべき」といった基準を自分で決めつけてしまうことは、自分の視野を狭くしている気がするし、勿体ない。そう考えるようになったら、くらしがもっと自由に、楽になりました。

いつだって"日常の延長線"だと思って楽しむことで、自分たちらしく過ごすことができる。

ー 自分の中にある無意識の「制限」に気が付くことで、より自分らしいくらしの指針が見えてきたのですね。

高山:そういえば、新婚旅行に行ったパリでもホテルではなく、アパートを借りて過ごしました。一週間以上滞在したので、その空間をいかに自分たちらしく楽しめるかを意識したら、とてもよかったです。食材やお皿も、現地の市場や蚤の市で買ってきたものを使って、いつものように料理をして。あとは、お花屋さんで花を買ってきて飾ってみたり。部屋の洗濯機で洗濯もしていたので、パリでの思い出を振り返ると、洗濯物が干されたアパートの風景と海外の洗剤の香りが、今でも鮮明によみがえってきます。

安井:僕にとっても、これまでの旅は、何か目的地があって、自分の刺激になるようなことを求めていたけれど、ふたりの旅では「そこにくらす」ことがメインコンテンツに。場所が変わっても、普段のくらしがベースにあって、なんだか地続きな感じがするんです。同じ街の風景も、旅行者として見るのと、くらす視点から見るのでは、また印象が全然違ってくるから、とても新鮮でした。

ご自宅にも、近所の花屋で買ってきたという季節の花が部屋のあちこちに。「小さな花を一輪飾ってみるだけでも雰囲気が変わって、自分らしい空間になりますよね」と高山さん。

ー ふたりならではの、あたらしい楽しみ方を見つけることができたのですね。滞在先で必要なものを調達する楽しみもある一方、日常の延長線として、いつも持っていくようにしているアイテムも何かありますか?

安井:ランニングシューズは、いつも持って行くよね。もともとお互いにランニングが趣味だったのですが、靴さえあればどこに行ってもできるのがいいんです。

高山:走ることでしか見えてこない、街の風景もありますね。歩くのとも、乗り物で移動するのとも違って、走るスピードだからこそ、次々と情報が目に飛び込んでくる。街の地形やサイズ感も、手っ取り早く知ることができるんです。「アパートから数ブロック走ると大きな公園があって、その先の交差点を渡ったところにパン屋さんがある」みたいに。

安井:自分の足で巡るから、街のことを覚えやすくていいよね。走りながら「さっきのお店、雰囲気がよかったから後で行ってみよう」とか、下見をするような感覚で。

「カメラを一台持って街に出るのも、日常の視点を変えるきっかけになりますよね」と見せてくれた、おふたりの愛機。
モデルとして被写体になる一方で、写真家・映像作家としても活動する安井さん。リビングには、旅先で安井さんが撮影した写真が飾られている。               

ー いつでもどこでも、変わらずに楽しめる趣味があるのはいいですね。おふたりとも日常に小さな変化を見出して、オン・オフの切り替えを取り入れるのが本当にお上手だなと。

高山:ふたりとも仕事柄、毎日お勤めに行く場所があるわけではないので、意識的にオン・オフをリセットしないと一日がダラダラと過ぎてしまうから、意識的に実践しているところもありますね。

わたしたちの場合は、一日の終わりに二人で晩酌をするのがスイッチかな。ごはんを食べながらその日にあったことを話したり、好きな映画やドラマを観たり。オンとオフのどちらも大事で、どちらもあるからこそ、気持ちよく頑張れたり、思いきって休めたり。循環しているなと思います。毎日はハードルが高くても、まずは週末だけでもいいから、ルーティンを決めてみるとメリハリが生まれるのでおすすめです。

いつもと違う場所で過ごしてこそ、自分にとって“心地いい”ものが何かが見えてくる。

ー おふたりが、将来もうひとつのすまいを持つとしたら、どんなところでどんなくらしをしてみたいですか?

安井:これは、すごく楽しい質問ですね。

高山:それこそ達郎くんは、カナダに留学をしていたこともあって、海外に住んでみたいと思っていたんだよね。

安井:ふたりで海外に住むなら、まずはスペインかな。僕はもともとスペインが好きなのですが、妻にも好きになってもらえたらいいなと思って、ふたりでバルセロナに行ったときに、すごく気に入ってくれたみたいで。これは、しめしめと思いました(笑)。

高山:ガウディの街というだけあって、至るところの建物が素敵で、滞在したアパートもとても可愛かったんですよ。

安井:あとは、食文化も日本人に合う感じがするよね。

高山:バル文化だから、フランスやイタリアのビストロに行くよりも気軽で、飲食店にも入りやすかったです。小皿料理で少しずつ食べられるのもいい。お野菜や、さっぱりしたものもバランスよくあるので、これは口に合うぞ!と。食のマインドが合うかって、くらしにおいて大切なポイントだと思っているので、ちょっと住んでみたいなと思いましたね。

安井:じつは僕、最近スペイン語の勉強もしているんです。

高山:毎日、お風呂で一単語覚えて、お風呂上がりに挨拶とかしてくれるんです(笑)。全く予定もないし、何も決めていないけれど、未来の“たられば”をふたりで考えたり、話すことは楽しいので、普段からよくしていますね。

ー おふたりで、いろいろな場所に出かけているからこそ“たられば”の引き出しが増えていくというか、そういった会話が増えることも、拠点を変えて過ごす醍醐味
なのかもしれませんね。国内では、いかがですか?

高山:国内だと、八ヶ岳に住んでみたいな。以前、八ヶ岳でくらす方が書かれた本を読んでから、そこでのくらしや、短い夏と深い冬のなかで育つ植物の美しさに魅せられて。それまで、今のすまいのほかにくらしてみたいと思う場所ってなかったんですけれど、夫も山が好きだし、いいなあって。

安井:八ヶ岳は、いいよね! なんだかリアリティがある。少し気合いは必要だけれど、都内にも車で通えない距離じゃないし。

高山:高原野菜もおいしいし、地ワインもあるし。日常のなかにも食やアクティビティといったエンタメを見つけて楽しみたい、わたしたちのくらしに向いている気がします。

ー もうひとつのすまいに八ヶ岳、よさそうですね!

高山:それこそ「n’estate」のようなサービスを通じてできることって、自分を変えるための擬似体験やリハーサルに近い感覚がありますよね。

安井:うんうん。自然豊かなロケーションもあれば、都市部の拠点もあって、幅広い選択肢のなかからいろいろと試してみることができそうなのがいいですね。

高山:リハーサルも何度も重ねるうちに慣れてくるように、いつものすまいと違うところで過ごすうちに、自分にとって“心地いい”ものが何かが見えてくるんじゃないかな。それが、食べ物の場合もあれば、衣服やインテリア小物だという人もいる。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭だったら、普段から馴染みのあるお味噌があれば安心、とかね。「どこに行っても、これさえあれば!」といった基準が、人それぞれにあると思うから。それをまず試してみたいというときにとてもいいサービスだと思いました。

ー ありがとうございます。まさに「n’estate」では、いきなり移住や多拠点生活を実践するのは難しいけれど、どんなくらしが自分に合うのか、少しずつ試してみたいという方々の背中を押すようなサービスでありたいと思っているので、そのように言っていただけると嬉しいです。

最後に、あたらしいすまい方、くらし方を試してみたいと考えている読者のみなさんにメッセージをお願いできますか?

高山:あたらしい環境に思い切って飛び込むなら、「無いものは無い」で楽しむという、いい意味での開き直りも大事!  滞在先に着いてみると、都心から少し離れていたとか、いろいろ思い通りにならないこともあるじゃないですか。でも、そこを選んだからには「無い」ことを嘆くよりも、その条件のなかで工夫をする。人として試されている気もするし、いいところを見つけながらくらした方がきっと楽しい。滞在先でのそういった経験が、ちょっとした自信になって、お守りのように持てる安心感になると、引越しや移住のハードルも下がって、前に進んでいく後押しになるんじゃないかなと思います。

>高山さん&安井さんによる山中湖の滞在レポートは、こちら

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Photo: Ayumi Yamamoto

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