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なんらかのレビュー

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2019年3月の記事一覧

「障害のことを忘れてしまった」というポーズについて:ナイトクルージング

「障害のことを忘れてしまった」というポーズについて:ナイトクルージング

昨日、恋人と映画『ナイトクルージング』を観に行った。宇多丸さんのラジオ「アフター6ジャンクション」で勧められていて、気になっていた映画だ。
 
生まれつき全盲の加藤秀幸さんがSF映画を製作する様子を、加藤さんの友人で映像ディレクターの佐々木誠さんがドキュメンタリーとして記録したのがこの映画。昨日はたまたま舞台挨拶も聞くことができてそこで知ったのだけど、佐々木さんに「視覚障害者が出てくる面白い映画を

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私の遺骨を読んでね:ダルちゃん

私の遺骨を読んでね:ダルちゃん

なぜ子供を生んだのか、という話に至ったとき、職場で一番都会が似合う先輩は「自分がここにいた証拠が残したかったからかなあ。私が死んじゃったとしても、子供がいたら、私のかけらは未来に残るじゃない?」と言った。

私は長生きしたいわけじゃない。こんなくそみたいな世の中でどうして生を更新していきたいと思えるだろう、と毎月思っている。

それでも、この話を聞いたとき、私が子供を生まずに死んだら、私の存在はな

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いっぱいの肉体と本物の感情:岬の兄妹

いっぱいの肉体と本物の感情:岬の兄妹

この映画を、口に入れるものにたとえるならばなんだろうなあ、と考えていた。強いていうなら、鶏胸肉か。この白いのは、管か、血管なんだろうか。このぶつぶつのあるところに、羽が生えていたのか。目の前いっぱいに、むちむちと広がる肉。そういう、生き物の雰囲気。血の気配。おそろしくてコミカルな、あの感じ。味で言えば、ヤギ乳みたい。立ち上る獣の香り。いつまでもしつこく口の中に残る。

映画.comより、映画のあら

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