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2018年12月の記事一覧

詩 111〜115

詩 111〜115

  雑音

ふしぎな時間 浮遊する
はげた塗装のドラム缶
泥水 流れて だけど きみ
平和のなかで 窒息死

花瓶の首を移植して
くるぶし こすって マッチの火
不幸の銃弾 のがれられ
おかしを食べて昼寝する

風見鶏さん 御影石
タールの海も ごうごう と
運ぶ 汽笛と 瓶詰手紙

粉ミルクさえ十分で
吸血鬼 埋め 平和の 実
撃たない 笑顔 嫉妬しそうだ

  もの

われらの真夜中 奪還せよ

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詩 106〜110

詩 106〜110

  不死鳥

ほんのわずかな気持ちでも
なにかの光になれるはず
たとえば 花火 また ネオン
スポットライトの下の国

誰もあなたを傷つけない
小川も塀も つまらない
人を寄せない いつだって
たとえば 彗星 世界へと

声なき声に着火して
胸は こがねに 命 焦げ
あなたに届けば 愛と呼びたい

空き地のまんなか 舞い上がる
ほの暗い嘘 つかまえよう
遠いかなたに ときはなつため

  おしまい

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詩 101〜105

詩 101〜105

 いばら歌

待たせているからしかたなく
元気がないけどやってきた
栄養失調 流星雨
シアンとブルーに汚染され

ミシンを踏んで かた かたん
拍子をつけて はげませば
からまる からまる 絹の糸
いい人だから 急ぐんだ

たった五秒の真空に
むくんで つらい もう イナゴ
きみの握手はまるで魚雷だ

タツノオトシゴ 来客を
侮辱するため 生みだされ
満月なんか 見むきもしない

  エピタフ

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詩 96〜100

詩 96〜100

  エレジー

おびえた目のなか 羽虫が
ときには あばれ ときには 実
みっつ数える その前に
首をかしげて 傷だらけ

いつからペンキ 塗りたてだ
清涼飲料水 こぼし
ほころぶ さかいめ エレベーター
うすぎたない血を材料に

十年前からそうだった
傷だらけの手 ばんざいが
できない だから 仲間はずれで

おなかがすいた あなたなら
地盤沈下の下心
別世界では 息もしてない

  鳥

風 

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詩 91〜95

詩 91〜95

  雪女

寒いところで目を覚まし
さなぎのままに育てられ
結局なんにもなれなくて
ぼんやりしてたらひからびた

連休明けに目を閉じて
おなかの皮を顔にはり
無表情でもいとおしい
めがねのレンズにまつ毛ふれ

なんでもないからなにもせず
それが罪ならしかたない
あきらめるのかもう消えるのを

となりにいればヒロインで
楽器をかまえてきつねの子
冬は寒いし夏は暑いし

  朝顔ヶ丘

テトラポッドが

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詩 86〜90

詩 86〜90

  入浴禁止

自問自答の沈黙が
誤解を生んで 放置され
いまや血みどろ シャンプーで
落とせる色はそこにない

愛し合うのに 疲れはて
列車もろとも分離され
軽蔑 密告 予防した
緊急包囲のスフィンクス

上目づかいに見なおせば
やっぱり幻滅 いいかげん
紙くず燃やして 正当化する

心は近く 住みながら
妥協は成立 おめでとう
脳裏に面影 石鹸 剥奪

  失恋

臆面もなく 偶然と
よそおう

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詩 81〜85

詩 81〜85

  赤道切断

炎暑の海に ハリネズミ
熱にうかされ 船酔いで
洗濯さえもままならず
あせりといらだち どんよりと

雲は黒々 もう残照
挿絵のような この苦痛
無限の未来に複製を
許可した罰で音を立て

崩壊したのは蚊帳の檻
コンパスにぎった羊飼い
蚊とり線香 けむる 中庭

わたしは消しゴム 捨てられる
解剖しても鋭角で
ざまみろ なんて 笑える特権

  双生児

あなたの骨がもろいから

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詩 76〜80

詩 76〜80

  レミニセンス

歌 よみがえる 前のめり
青モザイクの花束に
編まれて嫉妬 でも感謝
いま なつかしい ただ すわる

波紋の輪郭 消えないで
とらえられない それが 水
いやでも分かる ふるさとを
人質にする ぬいぐるみ

味方がいるなら単純に
伴奏をして なにくわぬ
顔は もういい オーケストラは

だまっていたら また 荒廃
殺人事件 きりがない
感傷的に思い出させて

  オベリスク

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詩 71〜75

詩 71〜75

  家路

退屈だけど やめておこう
ひとりよがりの刻印に
一喜一憂 ターコイズ
顔から襟まで鮮明に

うつる 色 影 イチョウ型
たなびく うねる アラベスク
道をはさんで 夏木立
隠れてしまえば 見つからず

もう 鬼ごっこ 終わらない
砂漠 花畑 縫いあわせ
編みこむ 静脈 さびたレールが

欠陥だらけで あまりにも
立体的で とぎれ なぜ
金魚草の露 その信号 赤

  明晰夢

電車の光

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詩 66〜70

詩 66〜70

  微熱

クモの巣ばかりの路地裏に
指おり数える室外機
五十二個目であらわれた
夏の日の海 たぶん 朝

髪型変えて努力した
だけどすぐには のびなくて
結局帽子で蓋をする
わたしの思いが飛びたてない

葉っぱを集めてつみかさね
少しのずれを繰り返し
双子の月だ こんなに 大きい

完璧なもの ここにある
靴の底から のぼれ 種
のがれられない 微熱 わたしは

  人畜無害

人影 すさぶ 風

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詩 61〜65

詩 61〜65

  蒸留実験

メランコリーは生まれつき
まばたきの闇 一瞬に
オーロラ 浮かぶらしいって
そんなうわさを信じたい

大きな声で誓いたい
きっと失敗するでしょう
いまではきみも共犯者
死んだふりして逃げないで

拍手のかわりに石がふる
月をむかえる唾の雨
無力の証明 わたしはあおむけ

空の現象 ひとりじめ
この場所だけはわたさない
悪口の日々 わたしはそれでも

  ファウスト

また来る季節 

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詩 56〜60

詩 56〜60

  ランデブー

まっ赤なコートの裾と袖
鉄の車輪に巻きこまれ
頭を つむじを かきむしり
ランチは一時 間に合わない

バレンタインデー みどりの日
結婚記念日 誕生日
いつか地球の終わる日に
メリーゴーランド おだやかに

誘拐している 小犬たち
通信している ハロー ハロー
どこにも行くな ここにいるから

流星が来る きみが行く
置き去りのハート 隅々に
照りわたる 青 わたしまで 青

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詩 51〜55

詩 51〜55

  盗賊

夜にさえずる 雪の日々
足場は ただれ ぶつぶつと
弱音を はいて マゼンタの
コスモスが咲く つまさきに

赤毛 からんで 月の道
はしごをのぼって まだ遠い
努力をしても むくわれず
不眠不休の幼虫で

明日はどこなの 切株に
会釈している かんちがい
ねえ お姫さま まねをしないで

まばゆい光 いたずらも
名誉の怒り はい いいえ
いいえ それでも 反省してます

  夜明け

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