雑音のコピー

詩 111〜115

  雑音

ふしぎな時間 浮遊する
はげた塗装のドラム缶
泥水 流れて だけど きみ
平和のなかで 窒息死

花瓶の首を移植して
くるぶし こすって マッチの火
不幸の銃弾 のがれられ
おかしを食べて昼寝する

風見鶏さん 御影石
タールの海も ごうごう と
運ぶ 汽笛と 瓶詰手紙

粉ミルクさえ十分で
吸血鬼 埋め 平和の 実
撃たない 笑顔 嫉妬しそうだ




  もの

われらの真夜中 奪還せよ
ものを滅ぼす その もの は
イソギンチャクのように舞う
一見 すてきな かぎりなく

概念に近い物体で
荒れはてた地に芽生えたり
ルビーに炎をうつしたり
さみしい心に住みついて

選ばれなかったものたちの
かわいた目玉 うるおした
われらの悪夢 火あぶりになる

音をかさねてごまかされ
貝を積みあげかざられて
満足している 堕落がはじまる




  円環

うろこ雲 かすむ 鳥の群
はなればなれに 星時計
がまんできずに落ちてきて
実は はらはら 雪でした

地べたに 点々 紙ポプラ
三日三晩は立ちつくし
空気にさらされ やはり 雪
くずれて つくりなおす 人

歩いて 走って 飛ぶ 恐竜
ぼんやりしたら もう 化石
やっとかがやく 琥珀神殿

砂になれたらいいけれど
残念ながら液体で
魚のあなたを妊娠したい




  寝息一二八小節

ねがい みちる 日 それぞれの
反映 背負う 偶然に
無知の かくれが 見つけだし
自分以外を 救いたい

いたましい うそ もう いやだ
すべては 明らか 駅のなか
だけど 真実 その こたえ
誰があたえたものですか

ぽたぽた 分解 したりして
すべては こなごな アメフラシ
またまた とびらを 自分でふさぐ

黒板 すべる 曲線に
銀鉛筆の けずりかす
わたしは 旅人 ただの飛行機




  栞蝙蝠

梢にたたずむ夏雲は
ラプンツェルではないあなた
背中はまっすぐ いじわるな
目隠し 波を 縫い 渡し 

かなたへ届く その視線
ひばりの墜落 気づかない
じっと見ている 強がって
にぎった こぶしの ゆらゆらが

なんてかなしい三拍子
重い ふらつく 羽根で来た
昨日はなぜか木の葉にまぎれ

読書している 五ページで
世界は変わる ただ一目
その顔 ください こっちを向いて

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