盗賊のコピー

詩 51〜55

  盗賊

夜にさえずる 雪の日々
足場は ただれ ぶつぶつと
弱音を はいて マゼンタの
コスモスが咲く つまさきに

赤毛 からんで 月の道
はしごをのぼって まだ遠い
努力をしても むくわれず
不眠不休の幼虫で

明日はどこなの 切株に
会釈している かんちがい
ねえ お姫さま まねをしないで

まばゆい光 いたずらも
名誉の怒り はい いいえ
いいえ それでも 反省してます




  夜明け

ぜんぜん夜の 気配 なく
だんだんあきて うわの空
まだ終わらないかもしれず
おみやげ 金魚 夢のなか

バットで起こした 倦怠の
三半規管が まだ うずく
つり糸たれて ひっかかる
おやつのりんごの 蜜の海

進化もせずに ただ つもる
たまって よどむ 灰になる
ねがわくは 星 光のなかで

生まれかわっていいですか
ぜんぜん夜が はじまらず
だんだんあきて 紺色の空




  プリマドンナ

空気がはらむ いいかおり
あなたの輪郭 ふちどられ
優等生の象徴は
嫉妬の海で溺れない

力をぬいて 今朝だけは
今夜だけはと くつろいで
折りたたまれる やわらかく
悲劇的とは言わないで

きびしいことばで しかったり
やさしい愛撫で なぐさめて
めんどくさいけど はげましていて

漠然とした栄光で
あなたが立てるはずもなく
冷静沈着 あつかましい 血が




  ぶきみな娘

一番下でうごめいた
もしもし あなた 見えてます
ぶきみな娘 ちいさな巣
元気でしたか 眉を剃り

あれから五年 観察の
義務は終わって 脱皮した
それを ぬけがらを 現実と
ポケット 迷路 かさねあう

直視できない愛もある
たとえば やさしさ 天気予報
反射している だから感じる

どんなに必死にあがいても
一生懸命 考えて
だってあなたは ただの木琴




  娼婦

そう思うのもむりはない
おそるべきもの 悪いもの
規則ただしく通過する
これはまぼろし 悪い夢

あなたの牙が折れてから
神さまの前で見捨てられ
名誉なんかでごまかして
砂漠を守る命令も

ミミズク一羽いればいい
つばさの動き すべらかに
重々しくも 風 すずしくて

あなたは忘れる その恐怖
きっと忘れる ほめられて
恍惚のなか ぼろぼろにされ

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