入浴禁止のコピー

詩 86〜90

  入浴禁止

自問自答の沈黙が
誤解を生んで 放置され
いまや血みどろ シャンプーで
落とせる色はそこにない

愛し合うのに 疲れはて
列車もろとも分離され
軽蔑 密告 予防した
緊急包囲のスフィンクス

上目づかいに見なおせば
やっぱり幻滅 いいかげん
紙くず燃やして 正当化する

心は近く 住みながら
妥協は成立 おめでとう
脳裏に面影 石鹸 剥奪




  失恋

臆面もなく 偶然と
よそおう 狂喜 罪深い
あなたは もちろん 誰よりも
自分自身に 罪深い

話にならない 悪影響
唯一 ひとり ただひとり
手ぶらの正座も きゅうくつで
手本にならず やみくもに

遠のく はなれる ふてくされ
百も承知の無力感
息苦しいのはこの部屋だけだ

こんなことばを培養し
私腹をこやす もてあそぶ
永続するのか 退屈予報




  やつあたり

酷暑 むさぼる人は誰
女で 赤いスカーフの
顔はセメント 腕は鉄
唱える呪文も早口で

算数 灰色 同情は
しない いくつか 煙 立つ
空中シーソー もう 廃止
天文学の敗北だ

妖精 遊ぶ おもちゃには
嘘発見器 飽きもせず
液体相手に泣きごとなんて

きらい きらい きらい きらい
どこもかしこも三次元
安楽椅子か回転木馬




  二〇〇三年

かなしい知らせがつづいたら
あなたの背中に身をあずけ
さびたチェーンの自転車で
なまぬるい夜 飛んでいく

着地点ではヒグラシが
入道雲につぶされて
息苦しそう ふたりなら
笑って 走りぬけていく

赤い光が点々と
街路樹 かざる ここは 海
なつかしい海 まっ黒な海

道に迷って でも ふたり
つばを吐いたり 寝ぼけたり
わたしの大事な思い出でした




  私的レクイエム

川で ふたりの 道 別れ
あなたは あっち 橋 渡り
わたしは こっち 部屋で待つ
ノック 八回 テンポよく

カレーのにおいに さそわれて
つばさ 広げる ふたり乗り
ご機嫌で 踏む 青タイル
あくまで まっすぐ でも 迷う

手書きの文字が うずくまり
まるくて ぼろぼろ こぼれそう
書きなおしては あげられなくて

壁を たたいて 訴えた
その 強弱が 真実で
知らないふりをしたわけじゃない

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