いばら歌のコピー

詩 101〜105

 いばら歌

待たせているからしかたなく
元気がないけどやってきた
栄養失調 流星雨
シアンとブルーに汚染され

ミシンを踏んで かた かたん
拍子をつけて はげませば
からまる からまる 絹の糸
いい人だから 急ぐんだ

たった五秒の真空に
むくんで つらい もう イナゴ
きみの握手はまるで魚雷だ

タツノオトシゴ 来客を
侮辱するため 生みだされ
満月なんか 見むきもしない




  エピタフ

光の柱 海 照らす
船まで 明るい 冬 シンク
春は十度目 むらさきの
線のかなたに 引き返す

どんな希望も嘘だけど
煙突 そびえている 悪魔
金網 のりこえ 飛びおりる
飛んでいくのも また 自由

四季があるのにまどわされ
なんにも言わずに色を変え
青い夕焼けはしょんぼりしている

Aのかたちの天国は
限界 示す 虚栄心
心にもどれ 子供にあやまれ




  体

かなしい体 やせがまん
能天気まで 再発し
のらりくらりと点滅を
つづけて 笑う 甲殻類

時間と距離があわれんで
わたしをこっそりなぐさめる
注射器 われた 言いつけろ
うさぎの餌にあまんじて

荷台につまれる それなのに
鍵穴に 指 まだ抜けず
よろこびいさんで 書く 日々は 過去

ここは圏外 敵は死ぬ
光 脱ぎ捨て 立っている
祭壇のような きれいな体




  心

心 しずかに 横たわり
身じろぎもせず 横たわり
ブリキのポンプ 上下する
貧血じゃない 仮眠中

心 うばわれ 木の芽雨
菜の花畑 木の芽雨
さからうことはもうやめた
追いつめられて あきらめた

とりとめのない 夢 語り
けだるい やまびこ 水さしが
落ちて さざなみ わたしを廃棄

あやまち 誤解 これからも
加速していくことでしょう
つばめ と とかげ すずめ と かもめ




  気絶

あんず ふくらむ どこまでも
くるみ 牧神 屋上に
くちぶえ 吹いた あの日から
うつろい おぼろ フライパン

もみじ トンネル 虹を織る
つつじ 背中に 根をおろし
白いお皿が くもるから
息を殺して 蜜を吸う

よけいなものなど どこででも
釘にひっかけ つるせれば
得意なことを 一日中する

不規則になる 砂嵐
今夜も私は仮死状態
瞳孔反応 期待しないで

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