赤道切断のコピー

詩 81〜85

  赤道切断

炎暑の海に ハリネズミ
熱にうかされ 船酔いで
洗濯さえもままならず
あせりといらだち どんよりと

雲は黒々 もう残照
挿絵のような この苦痛
無限の未来に複製を
許可した罰で音を立て

崩壊したのは蚊帳の檻
コンパスにぎった羊飼い
蚊とり線香 けむる 中庭

わたしは消しゴム 捨てられる
解剖しても鋭角で
ざまみろ なんて 笑える特権




  双生児

あなたの骨がもろいから
窓辺に しずかに 置いておく
折れてはだめだ がまんして
あざけりなんかに 負けないで

動悸はおさまり ノクターン
担架のぬくもり 手がかりで
いまではきっと すこやかに
沈下していることだろう

けんかの余韻に 耳 ふさぎ
冷静になる ゆさぶられ
やっとその日の 疲れを知って

よそよそしくて まばゆくて
極度の緊張 つれだって
歩いていくには 木陰がたりない




  焦点

輪になる ロンド みだそうと
男の子の服 火をはなつ
はしゃいで ひとり まわっては
マグネシウムに感謝する

屈折率を計算し
手持ちぶさたの そのあいだ
風向き よければ うわの空
油断がおそって すすり泣き

猫をかぶって 早ければ
早いほどいい 自暴自棄
あいかわらずの強がり遊び

ありがとうとも言わないで
目の奥 読んで まだ不信
あなたの勇気はアイロン以下だ




  輪廻

いっしょに芽生えた ジキタリス
アシナガバチの誕生日
わたしの口も死んでいた
クラリネットを吹くまでは

光の分子の正体に
わたしが関係していると
迷信だけど 盲目で
自分を犠牲にしてまでも

遊んで 走って 垢まみれ
わたしのご機嫌とったって
なにも言えない だって 知らない

そんなに急いで 現象化
したい 気持ちも 分かるけど
次の蘇生は 肺炎の日に




  花一輪

よろいをまとった星の群
いいえ 本当は 花一輪
いくじなしとは言わないで
恥ずかしいだけ 眠いだけ

肌が弱くて 空気さえ
濃硫酸の通り雨
目を閉じ わだちを つま先で
ゆっくりなでて 歩く 朝

十一月はもう寒い
ほえる声には歌がない
カバンの底の落とし穴 撃て

どれだけあなたは見くびった
わたしが好きなこの人を
出発したのは 昨日の真夜中

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