雪女のコピー

詩 91〜95

  雪女

寒いところで目を覚まし
さなぎのままに育てられ
結局なんにもなれなくて
ぼんやりしてたらひからびた

連休明けに目を閉じて
おなかの皮を顔にはり
無表情でもいとおしい
めがねのレンズにまつ毛ふれ

なんでもないからなにもせず
それが罪ならしかたない
あきらめるのかもう消えるのを

となりにいればヒロインで
楽器をかまえてきつねの子
冬は寒いし夏は暑いし




  朝顔ヶ丘

テトラポッドが 石の花
三つ組みあげ 玉座では
女の子だけ すずしげに
命令できる 今日だけは

ころげまわって たどりつく
途中で終わった かくれんぼ
青空 走る チャイム 風
立ちふさがった 白昼夢

記憶と 記憶が けんかして
うまく言えない 私 貝
雨水の国 カルキの廊下

朝顔ヶ丘で会いましょう
かわいい服を選んでも
また ぬれるけど それでもいいの




  博士の憂鬱

今朝のベッドは 苔と土
温室 ぬけて 花壇 こえ
まだ夢うつつ カナリアと
噴水オペラ さわがしい

しみが広がる 襟もとを
わざと見つめて 不眠症
張り裂けそうな胸だから
そっとはこんで 置いておく

かつて愛され 植木鉢
もう愛されず アトリエへ
向かう 足音 こんなに重い

めんどくさいから 奇跡 待つ
不公平には アンモニア
ババ抜きしながら いつまで このまま




  ここで踊れば

光の三角 ピラミッド
蒸気 とじこめ 砂の城
神聖甲虫 カメレオン
さざなみ 波紋 光の矢

何度 言われた 不器用と
けっして きらいなわけじゃなく
いつも心は 崖の上
笑わない 顔 笑えない

水の上 立つ 人 四角
ただ あいまいで 不安げで
気づけば くだけて 最後の晩餐

何度も 何度も 窓をあけ
ここで踊れば 「愛される」
そうかもしれない 本当だろうか




  展望台

いま 横切った 大粒の
ひまわりメダル また ひとつ
欠けた土星も もう ひとつ
「白いね」「強いね」「うるさいね」

夏みかん 手に 南へと
戦いつづける 「いま何時」
「もっと もっとだ」 幕 あがる
うなだれていた 「浮かぼうよ」

はじめましての日のように
あくびしながら また 会える
「はじめまして」と あなたに 言える

ともしび 消すな 大輪の
水銀花火 三姉妹
「はずかしがるな」「絶望するな」

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